「成功はみんなのおかげ、失敗は私の責任」というのが、支持されるリーダーの基本的なスタンスです。これが、逆になってしまう人が少なくありません。
「成功はオレのおかげ、失敗はお前らのせい」
成功したときは、うれしさがこみ上げてくるかと思いますが、チームづくりで考えると、その気持ちは抑えたほうが賢明です。
うれしさが自分に向いていないか? そう問いかけてみましょう。
成果が出たとき、うれしさがこみ上げること自体は素晴らしいことです。これまでの苦労や努力を思い出して、「よく頑張ったな、オレ」と自分で自分を褒めてあげたい気持ち、よくわかります。
「オレはみんなのことを褒めるけど、オレは誰からも褒められない」と言ったこと、ありませんか?
私にはあります。だから気持ちはよくわかるのですが、そういうことを言うのは、リーダーとして恥ずかしいことなのでやめましょう。
「頑張ったな、オレ」
ではなく、「みんな、ありがとう」です。
頑張った自分へのご褒美は、あとでいろいろやってあげてください。みんなの前で発言するのは、やはり「感謝」であるべきです。
「ありがとうの反対は何か」というのは、リーダーにとって大事な問いだと私は考えています。
ありがとうの反対は、ごめんなさいでも、憎たらしいでもありません。
「当たり前」です。
組織のリーダーが、メンバーの頑張りを「当たり前だ」と思った瞬間が、チームの崩壊の始まりです。
感謝できないのは、期待が高すぎるからです。
どうしても感謝できない人は、次の⑤を読みましょう。
他者への期待は人間関係を壊す元凶です。
あなたの部下の働きぶりはどうですか? いつもあなたの期待を上回ってきますか? それとも下回ってきますか?
ここで、下回っている、と答えた人は要注意です。部下を追いこむのは、上司の「高すぎる期待値」です。
求める基準が高く、「これくらいできるでしょ」と部下に期待しているからこそ、いつもその基準を下回ってくる部下の仕事に対して腹が立ってきます。なんでこんなこともできないのだろうと呆れ、ひどいときには関わるのをやめてしまいます。
部下からすれば一生懸命頑張ったのに、褒めてもらえないどころかガッカリされ、何をやってもダメ出ししかされない状況は、まったく面白くありません。
そうすると、仕事に意義を見出せず手を抜き、上司はさらに失望するといった悪循環が発生します。
この状況を作り出してしまう上司には、仕事ができる人が多いのも特徴です。自分自身の当たり前の基準が高いからこそ、部下にもそれと同じものを求めようとする傾向があります。
「なんでこんなこともできないの?」
「どうしてわからないの?」
「前にも言ったよね……」
こうした発言は、上司にとっては期待の裏返しであると同時に、部下の心をえぐる言葉でもあります。
もし、いまあなたが部下に期待しているのであれば、ただちにやめる必要があるのです。
部下に期待するのはよいことだ、と思っていませんでしたか?
いいえ、その限りではありません。期待していいのは、部下の「未来」に対してだけです。
優れたリーダーは、自分の中で部下に対する期待値のコントロールをしています。そもそも、部下の「現在」に対してほとんど期待をしていません。
期待値をぐっと下げれば、必ず褒めるポイントが見つかります。
たとえば3歳の子どもが元気な声で「おはようございます!」と挨拶をしていると、「(こんなに小さいのに)立派な挨拶ができたね」と褒めることは誰でもできます。
これが23歳の青年だとどうでしょうか。
大人になって挨拶くらいできて当たり前ですから、そもそも気にもとめないでしょう。しかし、期待値コントロールがうまい人は「元気に挨拶をしてくれてありがとう!」と褒めたり、感謝を述べたりすることができます。
同じように、部下の仕事に対する期待値を下げることで、「納期を守れた」「事前に相談できた」「読みやすいように文章を工夫した」など、当たり前と思えるところにも、部下の良い点を見出すのです。
完璧な人なんていませんから、そもそもできないのが普通です。そのスタンスでいるだけで、改善点をネチネチと指摘する必要がなくなり、次により良くするための穏やかな指導ができるようになります。
部下に対する期待値が異様に高く、それを超えられない部下の姿を見て「こいつはだめだ」とその未来に対して失望している上司は珍しくありません。
でも本当は、部下の現在に対しては期待せず、未来に対しては大いに期待するのが上司のあるべき姿です。
「あなたには期待しているよ」というのは、部下の未来に対してだけかける言葉なのです。