成績が振るわない、メンバーが互いに無関心でいっさい協力し合わない、仕事を作業と思っており楽しそうに働いていない、離職者が多く人の入れ替わりが激しい……。これらは日本の多くの職場で見られる光景です。こうした環境に疲弊し、働くことに希望を見出だせない人が増えています。
この絶望的な状況を変えられる唯一の方法が「チームづくり」です。チームづくりがうまくいけば、すべてが劇的に変わります。部下も会社もあなた自身もラクにする、チームづくりのノウハウを指南します。
この連載をまとめ、大幅に加筆・改稿した、ビジネス書『チームづくりの教科書』(高野俊一)が、アルファポリスより好評発売中です。
「社畜」という言葉があります。会社の言いなりになって、自分の考えを放棄し、奴隷のように働く会社員を揶揄する言葉です。もとは「会社+家畜」を組み合わせた造語ですが、今ではすっかり市民権を獲得しています。
こうして文字にするだけでもひどい言葉だなと私は思うのですが、「俺って社畜だから……」と自虐的に、自分に向けて使う人も珍しくありません。社畜というほど、ネガティブに捉えていなくても、「自分は会社に使われている」という感覚は、多くの会社員が持っているようです。皆さん自身、あるいは皆さんの部下はどのように感じているでしょうか?
会社に使われているという自意識を持つ人に、共通することがあります。それは、目標に対してアレルギーがあることです。
個人でも組織でも、目標を掲げるからこそ成長することができます。理想の未来像があるからこそ、そこに到達するために辛いことや苦しいことも乗り越えようと努力することができます。つまりチームづくりを行っていくために、「目標」は欠かせないものです。しかし、その目標を拒否されたら?目標を掲げたことによって反発心を抱かれてしまったら?
成長は難しい、どころか、チームは後退してしまう可能性すらあります。
私は、上司としてチームを運営していくにあたり「目標」をとても重視しています。チームの強さは、目標との関わりによって決まると断言できます。
目標の大切さは、どんな時代でもどんなチームでも同じですが、組織の形や一人ひとりの価値観も多様する今、目標のあり方はアップデートしていく必要があります。
●目標1.0 … 他人目標
他者目標とは、その名の通り、他者から与えられた目標です。会社から、あるいは上司から押し付けられ、「やれ」と言われるからしぶしぶ受け入れるものです。見返りとして「給料」が得られますが、他者目標ではどうしても「やらされ感」が拭えません。
「とにかく、やれ」とトップダウン型の組織に根付くよく残っており、まさに社畜マインドの人の目標アレルギーを生んでいる原因です。
●目標2.0 … 利己目標
次の段階は、自分のための目標です。部下を動かすために、部下自身の欲求を利用し「良い生活ができる」「良い車が買える」「注目を浴びられる」など、利己的な目標を提示してたきつけるやり方です。
本人のやる気は上がりますが、自分を中心に考える人が集まる集団は一体感に欠けます。同じチームのメンバーを仲間どころか、敵とみなす人も現れ、チームとしては弱体化する危険性をはらんでいます。利己目標の追求は、「勝ち組と負け組」「成り上がり」などを生む原因にもなります。
●目標3.0 … 共感目標
今の時代に求められているのが、チームメンバーみんなで目指す共感目標です。会社から押し付けられたものでも、個々人の欲求でもなく、全員が心から目指したい、と思えるような目標です。
共感目標をチームに浸透させるためには、今自分たちがどこに向かっているかを示して、それがどのように社会やお客様のためになっているかを考え、自分自身にとっても嬉しいことだと確かめながら共有していきます。
ところが多くの組織では、目標1.0の他者目標や、目標2.0の利己目標を使ったアプローチしか取られておらず、大切な共感目標が欠けています。
部下が目標を「達成したいもの」ではなく「達成しなければいけないもの」と捉えてしまい、目標アレルギーを起こしていると、チームづくりの難易度も上がります。