こんな仕事絶対イヤだ!

ファッションはゼニになる商売なんや~!――モード商人

2017.11.22 公式 こんな仕事絶対イヤだ! 第78回

巷では相も変わらず企業の労働環境に関するニュースが絶えませんが、歴史を紐解いてみれば、ブラックな職業は大昔から存在していました。そこで本連載では、古代・中世ヨーロッパや日本の江戸時代にまで遡り、洋の東西を問わず実在した超ブラックな驚くべき職業の数々を紹介していきます。あなた達は、本当のブラック職業を知らない……

貴族のファッションを徹底指導

生き馬の目を抜くと言われるファッション業界の歴史は、18世紀後半のパリで始まったと言える。その旗手は、服飾コーディネートを生業とする『モード商人』だ。この職業は、婦人用ドレスの着こなしや、装飾品によるアレンジを提案することで対価を得るものだった。もし貴族のご婦人と専属契約を結ぶことができれば、莫大な報酬を手にすることだってできた。センスと才覚によってのし上がれる時代が、いよいよ到来したわけである。婦人用ドレスの装飾が職業上の領分だったことから、就業者は女性がほとんどだった。「あら~ン、このフリルとっても素敵よ!」みたいな口調の男モード商人がいてくれたらイメージ的にハマるのだが、残念ながらそのような記録は無い。

モード商人の仕事には、奇妙な制限が設けられていた。自分で一から服をデザインしてはならなかったのだ。あくまで、出来合いの服の細工、装飾、販売しか許されなかった。恐らくは、すでにジャンルとして確立している仕立て屋系の職業と、業務内容がバッティングすることを避ける措置だと思われる。すなわち、彼女たちは作曲家ではなく編曲家だったということだ。それでも、ドレスを飾るだけで150種以上の方法を考案したり、マリー・アントワネットのファッションアドバイザーを務めたりと、活躍の場は多かった。

我々の身の回りを鑑みれば、モード商人の系譜が現代にも途切れることなく受け継がれていることが分かる。服飾評論家などはその代表例だろうし、セレクトショップのバイヤーだってその一部だろう。モード商人が、ファッションセンスそれ自体を商売にまで昇華させた功績は、これからも消え去ることは無い。

(illustration:斉藤剛史)


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プロフィール

清水謙太郎
清水謙太郎

1981年3月、東京都生まれ。成蹊大学卒業後にパソコン雑誌の編集を手がける。また、フリーライターとして文房具、自転車などの書籍のライティングや秋葉原のショップ取材等もこなし、多岐に渡る分野でマルチな才能を発揮している。

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金持ちの道楽として庭で飼われた「隠遁者」、貴族の吐いたゲロを素早く回収する...
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