すぐに使える営業の心理学

トップセールスマンが必ずもっている「20%の余力」――「パーキンソンの法則」

2018.08.16 公式 すぐに使える営業の心理学 第10回
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20%の余力を持つための6つの方法

1:アポイントを入れすぎない
例えば、企画提案営業の場合は1時間ほど商談に時間を使うので、1日に打ち合わせできる件数は、多くても3件です。20%の余力を残す件数にするためには、1日に4件も5件も入れてはいけません。

ルートセールスや配達を兼務した営業の場合は、商談時間は、10~20分程度でしょう。配達を含め、1件で30分使うとして、移動時間も含めると、1日に訪問できるのは、5~6件でしょうか。顔を出すだけの営業では、10件ほどまわる会社もあるかもしれませんが、どちらにしても、仕事量がギリギリのアポイントは入れないことです。常に20%の余力を残すことを心がけましょう。

私だけではないと思いますが、忙しいときに限って、緊急事態が起こるものです。最悪、次の日でも間に合うクレーム案件であっても、次の日までアポイントでぎっしり埋まっていると、身動きが取れません。私はこれで、お客さまに怒られたことが何度もあります。

2:次の打ち合わせまでに、少し時間を空ける
例えば大手企業に営業に行く場合、1つの打ち合わせに、お客さまが1時間という枠を想定していることが多いです。同じ会社で、次の打ち合わせをちょうど1時間後にしてしまうと、何かあって前の打ち合わせが長引いたときや、緊急の電話が入ったときに対応できなくなります。必ず、打ち合わせと打ち合わせの間には、30分のインターバルをあけましょう。

次のお客さまへ移動が生じる場合には、移動時間+30分の余裕を設けるのがベストです。全くクレームが起こらない業種、もしくは、クレームは営業マンではなく、他部署が直接対応をするという会社ではない限り、多少の余裕を持たなければなりません。

私は、30分くらいの余裕をつくり、空いた時間で、次の打ち合わせの内容を確認したり、社内やお客さまとの連絡を取り合って、仕事の処理をしていました。連絡はこまめに行った方が、お客さまも自分も助かるからです。

3:移動時間は、余裕を持つ
電車で移動する場合でも、たまに電車が止まることもあります。もしくは、乗り換えを間違えて、時間をロスしてしまうこともあります。車で移動する場合などは、渋滞で遅刻する行為は絶対に許されません。土地勘のない場所に行く場合は、場所を間違えたり、迷うこともあります。時間のリスクヘッジは必ずしておきましょう。

こうした理由で、必ず「30分前」に客先に到着できる時間を設定し、早めの到着を心がけることが重要なのです。時間に余裕があるほうが、客先に到着してからも心に余裕が持てます。これが、ギリギリになって、走って息を切らしたり、車を飛ばしてイライラしたりすると、商談にも影響が出てきます。

私は、時間がギリギリになってしまい、車の運転中からイライラしていたおかげで、商談がまとまらなかったケースが何度もあります。せっかくのチャンスを逃さないためにも、営業マンは「20%の余力」をもつことが重要なのです。

4: 先の予定を埋めすぎない
先の予定まで埋まっているのが、できる営業マンだと勘違いしている人もいます。会社の方針によっては「1~2ヶ月先まで予定で埋めなさい!」と指示されたこともありました。しかし私の場合は、1~2ヶ月先までぎっしり予定を入れたことで、困ったケースの方が多かったのが実情でした。

ときには、緊急かつ難易度の高い案件が突如入ってくることがあります。クレームもあれば、お客さまが困っていて助けを求めてくるときもあります。1~2ヶ月先までぎっしり予定が埋まっていると、全く入れ替えができません。予定を空けるためには、お客さまに予定を変えていただくことになり、お互いにいい気持ちはしません。

1~2ヶ月先は、お客さまのいくつかの部署が出席する重要な会議であったり、お客さまと工場見学をするなどの予定にしておき、打ち合わせなどアポイントで埋め始めるのは、1週間~10日くらい前でいいでしょう。

5:午前だけなど空けておく時間を作る
これはウラ技ですが、月に半日でもいいので、どこかで予備日を残しておくことです。できる営業マンは基本的に20%の余力を残していますが、さらにひと月に半日ほど予定を空けておくのです。こうすることで予期しなかった緊急案件にもさらに対応する時間ができますし、急なクレームにも余裕をもって対処できます。

リーダーの人であれば、予定よりも多く部下のフォローアップの時間にあてることもできますし、自分自身の商品知識の勉強時間にもあてることができます。もちろん、この時間を使って顧客の新規開拓を試みることも可能なので、「20%+α」の半日というのは、実はかなり重要な時間になってきます。

このように、人は与えられた時間を目一杯に埋めようとしてしまうため(パーキンソンの法則)、営業マンが、自ら余力が残るようにコントロールすることが大切なのです。営業は、売ることだけではなく、緊急時の対応も問われることを覚えておいて下さい。

次回に続く

 

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プロフィール

大岩俊之
大岩俊之

理系出身で、最新のエレクトロニクスを愛する元営業マン。
大学卒業後、電子部品メーカー、半導体商社など4社で法人営業を経験。いずれの会社でも、必ず前年比150%以上の営業数字を達成。200人中1位の売上実績を持つ。
独立起業を目指すなか、「成功者はみな読書家」というフレーズを見つけ、年間300冊以上の本を読むようになる。独立起業後、読書法やマインドマップ、記憶術などの能力開発セミナー講師をしながら、法人営業、営業同行、コミュニケーション、コーチングなどの研修講師として7,000人以上に指導してきた実績を持つ。年間200日以上登壇する人気講師として活躍している。
主な著書に、『格差社会を生き延びる“読書”という最大の武器』(アルファポリス)、『読書が「知識」と「行動」に変わる本』(明日香出版社)、『年収を上げる読書術』(大和書房)、『1年目からうまくいく! セミナー講師超入門』(実務教育出版)などがある。

著書

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