入社1年目の営業スキル

自己開示こそ信頼関係構築の第一歩

2017.08.03 公式 入社1年目の営業スキル 第11回
Getty Images

表面的な会話しかできず、リピートオーダーに繋がらなかった日々

こんにちは、ロールジョブの大岩俊之です。営業マンは、商品を売るのではなく、お客さまの話をよく聞き、相手のニーズに合った提案をすることが大切だとお伝えしてきました。そして、そこからもう一歩先に進むために必要なことを、今回はお話したいと思います。

この段階で一番大切になってくるのが、お客さまと営業マンが「どこまで深い信頼関係が作れているか」という部分になります。この信頼関係の構築こそ、営業マンとしての重要な価値なので、ぜひとも私の体験を参考にしていただければと思います。

私が営業のコツをつかみ、営業成績がよくなってきたころ、あるAV機器メーカーの購買担当者からこんなことを言われました。それはこんな言葉でした。「大岩さんて、私たちのことをよく考えてくれていることは分かるんだけど、どんな人なのかいまひとつ分からないよね」「そんな話が社内で話題になっているよ」、とのことでした。

よく考えてみると、お客さまのニーズを聞き出すため「話を聞くこと」に専念していたこともあり、自分の家族の話、趣味やスポーツの話、将来の夢など、仕事以外の私自身の話を、ほとんどしていないことに気がつきました。お客さまのニーズを満たすことで売上は上がりましたが、それ以上の信頼関係をつかむには、仕事以外の部分でも、お客さまに「大岩という人間性」を知ってもらう必要があることに気がついたのです。

あるところまでは「営業マンの対応が早い」「対応の質がいい」「融通が利く」など、仕事上の信頼関係だけでも成立します。ですが、リピートオーダーをいただくため、またはお客さまが何か困った時に最初に声をかけてもらうようになるためには、「人と人との信頼関係の深さ」が大きく関係してくるのです。

それには「自己開示する」ことが次のステップとなります。本当の意味で営業マンとしての信頼を勝ち取るには、自分という人間を相手に知ってもらうことが最も重要なのです。そのためには、相手の話を聞くだけでなく、自分の情報もシチュエーションに合わせて開示していくのがベストです。聞かれてもいない自分の情報をお客さまに話すのはおかしいので、話題やタイミングを見計らって「実は私も○○なんです」など、自分のパーソナルな情報を相手に少しずつ開示していくことで、さらに深い信頼関係を構築していくことを心掛けましょう。

「ジョハリの窓」から見る、自己開示の重要性

ジョハリの窓とは、サンフランシスコ州立大学の心理学者でもあるジョセフ・ルフトとハリー・インガムが共同で研究した、心理学でよく使われているモデルのことです。自分をどのように公開し、どのように隠すか。コミュニケーションにおける自己情報の公開と、それによる円滑なコミュニケーションを考えるために提案されたモデルです。

ジョハリの窓には、4つの窓があります。
 ①開放の窓(自分にも、他人にも分かっている姿)
自分が考えている姿と、他人に見えている姿が一致している状態をさします。この窓の領域が大きければ大きいほど、相手が私のことを知っている状態なので、信頼関係がつかめ、円滑なコミュニケーションができるようになります。

例えば、私が会社員だった時には、私が営業マンであり、AV機器メーカー担当だということは、お客さまも分かります。このように、お互いが分かりあっている部分のことを「開放の窓」といいます。

②盲点の窓(他人は分かっているが、自分には分かっていない姿)
これは、自分では分かっていない領域ですが、他人には分かっている姿です。「あの人、ときどきムッとした顔するよね」などという、自分では気づいていない部分のことです。

「開放の窓」を大きくするためには、この「盲点の窓」、すなわち「他人から自分のことがどう見えているか」を、直接教えてもらうしかありません。自分では分かっていないけれども、お客さまは知っていることです。私の場合は「大岩さんのプライベートの部分が見えないよね」とお客さまに言われたことで、自分が自己開示していないことに気がつきました。

③秘密の窓(自分では分かっているが、他人には見せていない姿)
言葉の通り、自分が他人に隠している姿です。この領域が大きいと、他人とのコミュニケーションがうまくいかないことも出てきます。

「私は結婚していて双子の子供がいます」「愛知県名古屋市の○○に住んでいます」「趣味は、ゴルフとスキーです」などということは、私だけが知っている情報であり、お客さまには私から伝えないと、知ってもらうことはできません。こうした情報を自己開示することで、相手は私の情報を知ることとなり、お互いが共通の情報を持つこととなります。これで開放の窓が大きくなるのです。

④未知の窓(自分にも他人にも分かっていない姿)
これは、自分自身も周囲の人も気づいていない自分です。この部分は、誰にも分かりません。別の言い方をすれば、自分自身の未知なる可能性ともいえます。

私たちは日々、お客さまとの良好な信頼関係を築くために、①の「開放の窓」を広げることを意識しなければなりません。そのためには、自分が知っていて相手が知らないこと、すなわち、自己開示をする必要があるのです。

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プロフィール

大岩俊之
大岩俊之

理系出身で、最新のエレクトロニクスを愛する元営業マン。
大学卒業後、電子部品メーカー、半導体商社など4社で法人営業を経験。いずれの会社でも、必ず前年比150%以上の営業数字を達成。200人中1位の売上実績を持つ。
独立起業を目指すなか、「成功者はみな読書家」というフレーズを見つけ、年間300冊以上の本を読むようになる。独立起業後、読書法やマインドマップ、記憶術などの能力開発セミナー講師をしながら、法人営業、営業同行、コミュニケーション、コーチングなどの研修講師として7,000人以上に指導してきた実績を持つ。年間200日以上登壇する人気講師として活躍している。
主な著書に、『格差社会を生き延びる“読書”という最大の武器』(アルファポリス)、『読書が「知識」と「行動」に変わる本』(明日香出版社)、『年収を上げる読書術』(大和書房)、『1年目からうまくいく! セミナー講師超入門』(実務教育出版)などがある。

著書

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