小さな幸せの見つけ方

素直に謝ることの大切さ

2018.05.07 公式 小さな幸せの見つけ方 第19回
Getty Images

自分だけに好都合な「ものさし」の解体

よく考えてみると、私は幼い頃は友達とけんかをしても、あの兄弟のように何の戸惑いもなく素直に謝り、すぐに仲直りや物事の修復ができていたはずなのです。しかし歳を重ねるにつれて、素直に「ごめんなさい」というひと言を口にするのが難しくなったような気がします。これは、ひょっとしたら私だけではなく、多くの方にも共通することではないでしょうか。

しかし、どうして昔は素直に謝ることができたのに、今はできないのでしょうか。素直に「ごめん」と謝ることができたら、どんなに日々の生活が楽になることでしょうか。

その理由の一つは、「自分だけに好都合なものさし」で物事を見てしまうからだと思います。私たちは、これまで生活してきた中で、楽しいこと、嫌なこと、嬉しいこと、悲しいことなど、さまざまな経験をしてきたはずです。その中で自分にとって好都合となる判断の仕方を試行錯誤して学んできたはずです。これは、素晴らしい能力です。

しかし、別の言い方をすれば、自分をどこまでも中心として考える「ものさし」の構築でもあるのです。つまり、「我執(がしゅう)の増大」です。

だからこそ、何か問題が生じたとき、多くの人はまず自分を守る選択をし、自分に非があったとしても、相手に非があると思い込み、それを貫き通そうとするのです。そこには、きっと薄っぺらなプライド、意地などが入り交じっていることでしょう。これが素直に謝るということを妨害しているのです。結局、私たちは自分で自分の首を絞める癖を身に付けてしまったのかもしれません。

しかし、けんかをしたとき、素直に謝ると気持ちが晴れ、とても気持ちよくなる感覚は誰もが知っているはずです。実は、これが本来私たちのあるべき姿なのです。私たちは本来いつでも晴れやかな気持ちで生活できるのです。もちろんときとして、けんかをしてしまい、穏やかではいれなくなることもあるでしょう。しかし、そのときは素直に謝ればいいのです。

世の中に完璧な人などいません。それは、私も皆さんも同じです。もし今後、誰かとけんかをするようなことがあったとき、相手に絶対的に非があるのではなく、自分にも原因があるという考え方をしてみましょう。実際は気がつかなかっただけで、自分にも必ず非があるものなのです。

ぜひ「自分だけに好都合なものさし」を解体することを意識してみてください。すると、あの兄弟のように、晴れやかですっきりした気持ちになれるはずです。

 

ご感想はこちら

プロフィール

大來尚順
大來尚順

浄土真宗本願寺派 大見山 超勝寺 住職
著述家/翻訳家

1982年、山口市(徳地)生まれ。龍谷大学卒業後に渡米。米国仏教大学院に進学し修士課程を修了。その後、同国ハーバード大学神学部研究員を経て帰国。僧侶として以外にも通訳や仏教関係の書物の翻訳なども手掛け、執筆・講演・メディアなどの活動の場を幅広く持つ。2019年、龍谷大学 龍谷奨励賞を受賞。著書に『あなたは、あなた。』(アルファポリス)『超カンタン英語で仏教がよくわかる』(扶桑社) 『小さな幸せの見つけ方』(アルファポリス)など多数。

著書

楽に生きる

楽に生きる

大來尚順 /
アルファポリスビジネスの人気連載「人生100年時代を幸せに生きる明日への一歩」...
訳せない日本語

訳せない日本語

大來尚順 /
大好評書籍、待望の文庫化! 正確に英語で訳せない日本語にこそ、実は日本古来...
あなたは、あなた。

あなたは、あなた。

大來尚順 /
アルファポリス・ビジネスの人気Web連載の書籍化! 仕事、同僚、友人、家族との...
小さな幸せの見つけ方

小さな幸せの見つけ方

大來尚順 /
「日常の中にある、普段は気づきにくい“幸せ”を再発見すること」をテーマとした...
訳せない日本語

訳せない日本語

大來尚順 /
アルファポリスのビジネスサイトで大人気の連載がついに書籍化!! 正確に英語で...
端楽

端楽

大來尚順 /
浄土真宗本願寺派の僧侶であり、ハーバード大学研究員の経歴を持つお坊さんが、...
出版をご希望の方へ

公式連載