小川ヤクルト 躍進へのマネジメント

チームの世代交代と新陳代謝、
指揮官が村上選手に願うこと

自ら問題意識を見つけること
そういう若手選手は伸びる

――抽象的な質問になってしまいますが、「伸びる若手」の見極め方、判断基準のようなものはありますか?

小川 今まで話してきた村上や廣岡など、打者のことで言えば、「三振の質」は見極める際の大きなポイントとなると思います。具体的に言えば、何でもかんでも手を出して三振するよりも、ある程度はボール球を見極めた上での三振とでは、その意味はまったく違いますからね。あとは、抽象的な言い方になるかもしれないけれど、「きちんと問題意識を持っているかどうか」というのは大きなポイントになると思いますね。

――詳しく、教えてください。

小川 常に問題意識を持っていれば、たとえ失敗したとしても、「何がいけなかったのか?」とか、「次はこうしてみよう」と自分で試行錯誤ができます。けれども、問題意識がなければ、何度も何度も同じ失敗を繰り返すことになりかねません。コーチに指摘されるのではなく、自分からそういう姿勢を持っている選手は伸びる気がします。その点、村上はそういうことができるタイプですね。毎回、相手投手に対して、「どのようにアプローチしようか?」ということを考えているのが伝わってくるし、技術的にも自分なりに考えているのが伝わってきますから。来た球に何でも手を出してしまいがちな廣岡には、まだ物足りないところがあるけど(苦笑)。

――開幕当初はなかなかヒットが出ずに苦しんでいた廣岡選手も、夏場を迎えてようやく調子が上向き、結果も出始めています。ファンとしてはこうした経験を糧にして、さらなる飛躍を期待したいところです。

小川 おっしゃる通り、開幕以来、なかなかヒットが出ずに廣岡はかなり苦しんできました。こうした苦しい経験を生かすことができるのかどうかは、まさに廣岡の今後の野球人生にも大きく影響してくると思います。7月後半からは奥村も、太田(賢吾)も、自分に与えられたチャンスを生かすべく頑張っています。最初に言ったように、故障や不振によって、当初考えていたオーダーとは異なってしまったけれど、「若手を使わざるを得ない」という、せっかくのチャンスが彼らには与えられているのだから、ぜひそれを生かして、さらなる成長を期待しています。


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プロフィール

小川淳司
小川淳司

千葉県習志野市出身。習志野高校卒業後、中央大学に入学。1981年ドラフト4位でヤクルトに入団。1992年現役を引退すると、球団スカウトやコーチなどを経て、2010年シーズン途中に監督に就任。2014年シーズンまでチームを率いる。退任後は、2017年シーズンまでシニアディレクターを務め、2018年から再び監督となる。

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