小川ヤクルト 躍進へのマネジメント

どん底の状況を抜け出すために、
今できることは、何なのか?

「2017年と雰囲気は違う」と、
石川と山田が言ってくれた

――もちろん、指揮官として選手への気遣いは必要だとは思いますが、小川監督の場合は監督権限として、強権を発動することはないのですか?

小川 僕の場合はまったくないです。たとえば、野村(克也)さんのような偉大な監督であれば、「お前、今日は一番な」って言えるかもしれないですけど、僕の場合は、そうすることによって、選手が不信感を抱いたり、不満を抱いたりするようなマイナス要素を少しでも排除して試合に臨んでもらいたいと考えるタイプですから。不満を抱えながらプレーしても、決して結果は出ないと考えています。

――それは、山田選手のような一流スターだからこその気遣いですか? それとも、若手選手であろうと、誰に対しても行うものですか?

小川 もちろん、誰に対しても気は遣いますけど、山田のような選手とルーキーを同じようには扱いません。雄平や坂口をスタメンから外すときには、きちんと理由を伝えて、「今日はピンチヒッターで頑張ってくれ」と言いますけど、若手に対して、そういう言葉をかけることはありません。気の遣い方は、選手によって当然変えています。

――改めて「16連敗」の総括となりますが、チームが泥沼の状態にあるとき、「あえて動かず、泰然自若としている」のがいいのか、それとも、「積極的に手を打たなければ、そのままズルズル沈みゆくだけ」なのか、小川監督はどう考えていますか?

小川 僕の場合は両方考えますね。ただ、選手たちに対してはあまりジタバタしないでほしいと思っています。今回の連敗中では、10連敗を過ぎた辺りで一度だけ選手たちを集めて、僕から話をしました。それはもう、ありきたりのことですが、「勝敗の責任はすべてオレにあるのだから、みんなは窮屈にならずに本来の力を発揮してほしい。ただ、ミスには原因があるのだから、そこはしっかりと突き詰めて、次に臨んでほしい」というようなことです。

――選手たちはどんなリアクションだったのですか?

小川 もちろん、みんな真剣に聞いてくれていましたよ。ただ、僕が印象に残っているのは、連敗中、風呂に入っているときに、石川(雅規)と山田がいたんです。そのとき、「お前ら、結果を気にせずに頑張ってくれよ」と話したら、石川が「2017年の連敗のときと雰囲気が全然違うから大丈夫ですよ」って言って、山田も「あのときとは全然違います」と言ってくれたんです。

――シーズンワーストとなる年間96敗を喫した2017年よりも、雰囲気はいい、と?

小川 あのときは、みんな淡々とプレーしていたけれど、今年はみんなが、「何とかしなければ」と必死になっている。そんなことを言ってくれました。その言葉は、すごく印象に残っています。交流戦は負け越しで終わってしまったけれど、故障者も戻りつつあって、チーム状態は少しずつ上向きになっています。彼らの言葉にあるように、まだまだあきらめずに夏場を迎えたいと思っています。


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プロフィール

小川淳司
小川淳司

千葉県習志野市出身。習志野高校卒業後、中央大学に入学。1981年ドラフト4位でヤクルトに入団。1992年現役を引退すると、球団スカウトやコーチなどを経て、2010年シーズン途中に監督に就任。2014年シーズンまでチームを率いる。退任後は、2017年シーズンまでシニアディレクターを務め、2018年から再び監督となる。

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