小川ヤクルト 躍進へのマネジメント

稀代の大物・村上宗隆とクローザー梅野雄吾、
次代を支える2選手を指揮官はどう見ているか

2017シーズンまさかの「96敗」から、昨シーズンセリーグ2位という快進撃を見せたヤクルトスワローズ。ドン底のチームを見事立て直した小川監督は今年、「KEEP ON RISING~躍進~」をスローガンに掲げ、さらなる飛躍を目指す。本連載では2018年シーズンに続き、インタビュアーにスポーツライター長谷川晶一氏を迎え、「躍進」を成せる強いチームをつくるにはどのような采配と決断が必要なのか――小川監督へのタイムリーなインタビューを通じて組織づくりの裏側に迫っていく。

(インタビュアー:長谷川晶一)

「プロの世界をなめるな」と、
梅野を一喝したこともあった

――開幕早々、骨折のためにリタイアを余儀なくされた坂口智隆選手。さらに、5月に入ると、二番・青木宣親選手、三番・山田哲人選手、四番・バレンティン選手が相次いで、故障、体調不良でスタメンから外れる非常事態を迎えました。また、先発ローテーションの一角であるスアレス投手、クローザーの石山泰稚投手まで離脱しました。この間の心境はいかがでしたか?

小川 故障者が相次いだのはかなりの痛手となり、大きな影響が出るかと思いましたが、打線に関しては、太田賢吾の頑張りもあったし、欠場した選手たちも短期間で戻ってきてくれたので、あまり大きなマイナスにはならなかったですね。投手陣に関して言えば、中継ぎ陣が必死に頑張ってくれたのが本当に大きかったですね。その分、中継ぎ陣の登板する機会が増えてきているのは気がかりですが……。

――長いペナントレースを考えると、勝ちパターンで登板するハフ投手、マクガフ投手、五十嵐亮太投手、近藤一樹投手らの登板機会が増えているのが気がかりです。

小川 長いペナントレース、先を見据えて戦うことはとても大事だと思います。でも、うちの場合は目の前の試合で勝利のチャンスがあるのならば、全力で取りに行くつもりでいます。シーズン開幕前、選手たちにもそう伝えていますし、開幕から2カ月が経過した今でも、その思いは変わっていません。

――5月に石山投手が離脱すると、クローザーの代役として梅野選手を新たな守護神に指名しました。その理由を教えてください。

小川 現有勢力の顔ぶれを見たときに、ボールの強さや速さ、精神面を考慮した結果、彼がふさわしいと考えました。

――昨年、監督にインタビューした際にも、別件で宮本慎也ヘッドコーチにお話を聞いた際にも、「プロの世界をなめている部分があったので、梅野には厳しく指導をした」と話していました。詳細を教えていただけますか?

小川 僕はSD(シニア・ディレクター)だった頃、(九産大九州産業)高校時代の梅野を見ているんです。高校3年夏の最後の大会だったんですけど、ちょうど僕が見に行ったときに、ライトを守っていたんです。そのときに、外野を守りながら、「何でオレに投げさせないんだよ」っていう感じがすごく出ていたんです。それぐらい気が強いのはプロ向きなのかもしれないけど。

――昨年、「プロをなめている」と言われたのはどういう理由からだったのですか?

小川 二軍では試合に出ない投手が、試合中に投球チャートをつけることがあるんです。そういうときに、梅野の場合はその役目を軽く考えているのが見られたりしました。練習に関しても、そういう態度が目につくこともありました。これではやっぱり、プロでの成長が遅くなると思うんです。そういうこともあって、去年、一軍でなかなか結果が出なくて、二軍に落とすときに「お前、プロの世界をなめるんじゃないよ」と言いました。

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プロフィール

小川淳司
小川淳司

千葉県習志野市出身。習志野高校卒業後、中央大学に入学。1981年ドラフト4位でヤクルトに入団。1992年現役を引退すると、球団スカウトやコーチなどを経て、2010年シーズン途中に監督に就任。2014年シーズンまでチームを率いる。退任後は、2017年シーズンまでシニアディレクターを務め、2018年から再び監督となる。

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