――前回は、「選手の起用は思い通りにいかないものと、事前に想定している」とお話しされていました。監督の考える危機管理、リスクヘッジ術を教えてください。
小川 僕は試合中も、いつも最悪のことばかり考えています。例を挙げれば、同点で進んだ延長戦。ベンチ総動員で戦いたいのだけれど、「もしもキャッチャーがケガをしたら……」と考えて、ベンチ入りの選手全員を使うことにはためらいがあります。人によっては、「この場面ではそんなことは言っていられない」と躊躇なく起用できる監督もいます。でも、僕にはそんな思い切ったことはできません。
――それは生まれ持った性格なのでしょうか?
小川 そうだと思いますね。本当ならば、展開によっては「最悪の事態」を自分の頭から外して積極的に行かなければならないこともあると思うんです。でも、僕は昔からそういうことができなかった。現在、キャッチャーは中村悠平、井野卓を併用していますけど、僕はいつも「二人のどちらかはベンチに残しておきたい」と考えるタイプだし、もし二人とも使うとしたら、(元キャッチャーの)藤井(亮太)がベンチに残っていたり、試合に出ていたりしない限りは、基本的にはベンチに一人キャッチャーを残す性格です。最近では、総動員をする試合もありますけど、まだ不安は常にあります。自分としては、すごくイヤですね。
――自分の性格がイヤになることがある?
小川 イヤになりますね。そういう自分がすごくイヤです。でも、昔からずっとそうだったので、もう変えられないと思いますけど(笑)。
――とはいえ、5月6日の対広島戦では風張蓮投手を代打に起用するなど、ベンチ総動員の総力戦で、延長11回、サヨナラ勝利した試合もありましたよね。
小川 それでも、選手を全部使い切るということは、僕はできないですね。風張を代打に送ったのは、あの場面は「バントしかない」ということでしたし、あの日も死球明けではあったけれど、一応、青木(宣親)をベンチには残していましたからね。
――「常に最悪の事態を想定する」ということは、大胆さに欠ける可能性がある一方、慎重で大きな失敗を回避できるというメリットもあると思います。監督ご自身は、どのように考えていますか?
小川 それは、自分ではよくわかりません。でも、僕は前回監督を務めたときもそうだったし、今回もやはりそうです。もう、「自分の性格はそういうものなのだ」と理解して、やっていくしかないのだと思っていますね。
――以前から、小川監督は先を見据えた発言をされていました。連戦が続き、過酷なCS争いが繰り広げられている現状も、すでに想定されていたように思います。
小川 もちろん、「最悪の事態を想定する」という意味では、9月末の9連戦(結果的に11連戦に)には、「投手が足りなくなったらどうしよう?」という不安はありました。だから、この時期を見据えて星知弥をファームで調整させました。本当ならば一軍に帯同して中継ぎとして起用してもよかったんですけど、連戦が続く9月末を考えて、彼にはファームで長いイニングを投げる調整をしてもらって、満を持して一軍で先発させました。
――9月13日の巨人戦で、星投手は今季初先発。見事に勝利投手となりました。
小川 星がいい結果を残してくれて、本当によかったですし、嬉しかったですね。