いまだ記憶に新しい2017シーズンの屈辱的な戦績。ドン底まで低迷したチームを立て直すべく舞い戻った小川監督は、宮本慎也ヘッドコーチを要に据えたチーム改革を断行した。ハードワークに見られる「厳しさ」の追求は、選手達の意識をどのように変え、チームにどんな変化をもたらしているのか――。インタビュアーにライター長谷川晶一氏を迎え、小川監督のスワローズ改革に迫っていく。
(インタビュアー:長谷川晶一)
――勝負の8月も一進一退の戦いが続いています。過酷な戦いが続く中で、中継ぎ陣の奮闘が目立ちますね。
小川 クローザーの石山(泰稚)、石山につなぐ中尾(輝)、近藤(一樹)、風張(蓮)など、中継ぎ陣が本当によく頑張ってくれていると思います。石山はどんどん頼もしくなっているし、中尾や風張はシーズンを通じて急激に成長しているのを感じます。
――シーズン中において、「実戦を通じた成長」を可能にするために、監督自身が意識していることはありますか?
小川 人によって、それぞれの成長曲線というのは当然、違います。成長の早い選手、遅い選手は、それぞれいます。でも、人は変われるんですね。それを「成長」というのかもしれないけど、技術的な部分は練習で成長できる。そして、精神的な部分は実際に経験してみないと、なかなか成長できるものではないと思います。
――それが、今シーズンの中尾投手、風張投手なんですね。
小川 今年、中尾と風張は大事な場面で使うケースが増えています。でも、最初から「彼らを大事な場面で使おう」と決めていたわけではありません。けれども、少しずつ彼らが結果を残していくことで、試合の重要なポイントで登板する機会が増えていった。そして、「ピンチを切り抜けた」「相手の主軸を抑えた」「チームが勝った」ということを経験していくことで自信をつけて、今のポジションをつかみ取ったということだと思います。
――指揮官として、「成長を促すための環境作り」を意識しての起用もあるのですか?
小川 一概には言えないけれど、そういう意識もあるのは確かですね。もちろん、選手自身が自分の実力で、チャンスをつかみとるケースもあります。でも、その一方では我々首脳陣がある程度、我慢して使い続けなければいけないケースもあります。中尾や風張の場合は、その両方ですかね。現状の中継ぎ陣を考えたときに、どうしても彼らを使わざるを得なかったのは事実です。でも、彼ら自身のボールに力があるのも事実です。そうして起用しているうちに、自信をつかんでいったんだと思います。
――小さな成功体験を積み重ねることで、さらに飛躍する。これは、野球以外においても通用する考えかもしれません。
小川 そうですね。「小さな成功体験」は絶対に大事だと思いますね。いくらいいピッチングをしていても、負けばかり続いていたら、やっぱり本当の自信は身につかないですから。それは、原樹理を見ていて、特にそんなことを感じますね。