管理職の条件として、もう1つ大事なポイントは「自分を客観的に見られること」。組織のリーダーも、1人の人間です。すべて完璧である必要はないですし、そもそもそんな人はいないでしょう。とはいえ、何が得意で、何が苦手なのか、何ができて、何ができないのかは、自分自身で把握しておくことが必要になります。
「俺、細かいチェックは苦手だから、もう一度、確認しておいてもらえるかな」「〇〇は、お前のほうが得意だからよろしく頼む」と、自分の不得意を自覚し、得意なメンバーに仕事を振ることができる人は、チームマネジメントに向いています。
逆に完璧にやろうとして完璧にできる自分を演出しているような上司は、部下も寄ってきません。部下の失敗に厳しい、セクハラ・パワハラがひどい、上からの命令をそのまま部下に伝える、過去の体験だけで物事を判断する、根性論・精神論で仕事を進めようとする、仕事の裁量を与えてくれない…。部下からこのように思われている上司は、自分を客観視できていないことに原因があると考えられます。
自分のマネジメント能力が不足していることを理解できていないから、部下に対して理不尽に厳しくしたり、根性論・精神論で仕事を進めようとしたりするのです。セクハラ・パワハラの多くも「自分は好かれている」「尊敬されている」といった勘違いから起こります。自分を客観視できることは、管理職の場合は特に重要です。
ダメな面があっても、良い面をちゃんと示せている管理職は「「あの人、仕事は丸投げする時があるけど、最終的には責任を取ってくれるよね」「きめ細かいフォローは足りないけど、いざというときは一緒に謝ってくれるよね」と部下からも一定の信頼を得られます。
すべて理想の上司像みたいなものになる必要はないのです。「あの人、ここはダメだけど、ここはいいよね」という両面性をしっかり示すことができる。これが組織のリーダーの大事な条件ではないでしょうか。
自分のイケてるであろう面と、イケてないであろう面をちゃんとわかっているかどうか。本人の自己評価に注目すると、管理職に適した人材を見極めやすくなります。これは、人事評価における自己評価を見れば判断できます。自分を過大評価している人や過小評価をしている人は、自己客観視ができていない可能性が高いです。
最近、よくこのような相談をいただきます。「パワハラに怯えるあまり、とにかく優しく、部下のモチベーションばかり気にする上司が増えています。雑談をしたり、笑顔が絶えない職場にすることは、本当に良いのでしょうか」。
私は、やはり職場の人間関係を形成するうえで雑談は必要だと思います。始業前や昼食、おやつタイムなど、時間を決めて雑談をすればいいのです。テレワークでは雑談が難しい面もありますが、リアル、オンラインを問わず、お互いの近況を報告したりしてチームワークを高めることは、モチベーションの向上にも繋がるはずです。
とはいえ、単なる仲良しグループにする必要はないでしょう。さまざまな企業の人事評価に立ち会っていると、公正・公平な評価を求める人が多くいます。これは「いい評価をしてほしい」ということではなく、「厳しいこともちゃんと言ってほしい」と望んでいる人も少なくないことを意味しています。若い社員は、特に成長を望んでいます。大切なのは、雑談を禁ずることではなく、しっかりとメリハリをつけること。
嫌われたらどうしようと不安になる管理職の気持ちもわかりますが、完璧を目指さなくていいのです。開き直るのもダメですが、自分の得意な面と苦手な面を客観的に振り返ることができる。あるいは、周囲に「自分はどういうところが良くて、どういうところがダメ?」と聞くことができる。そのようにして自分をさらけ出せる人は、むしろリーダーの資質があると考えられます。
人によって態度を変える、いざというときに部下を守ってくれない、指示・指導が曖昧…。このような「困った上司」の代表例のような言動も、自己客観視ができる人であれば改善していけるはずです。自分の長所・短所を客観的に捉え、批判を受け入れる強さも持っている。管理職に適しているのは、そういう人材です。
もう1つ付け加えるなら、「ごめん」と素直に謝れる人。人間ですから間違ったこともするでしょう。それを素直に認めて自分を変えていける人なら、管理職になってからの成長が期待できます。
中長期的な目線を持っている、自分を客観的に見られる、勉強を欠かさない、そして素直に謝れる。これらの資質は、普段の仕事からある程度の判断ができるはずです。管理職を選ぶ際は、こうしたポイントに注目してみてはいかがでしょうか。
次回につづく