社員成長の決め手は、人事が9割

「管理職」に相応しい人材に共通するたった2つのポイント

2023.12.27 公式 社員成長の決め手は、人事が9割 第15回

管理職に必要な条件②「自分を客観的に見られる」

管理職の条件として、もう1つ大事なポイントは「自分を客観的に見られること」。組織のリーダーも、1人の人間です。すべて完璧である必要はないですし、そもそもそんな人はいないでしょう。とはいえ、何が得意で、何が苦手なのか、何ができて、何ができないのかは、自分自身で把握しておくことが必要になります。

「俺、細かいチェックは苦手だから、もう一度、確認しておいてもらえるかな」「〇〇は、お前のほうが得意だからよろしく頼む」と、自分の不得意を自覚し、得意なメンバーに仕事を振ることができる人は、チームマネジメントに向いています。

逆に完璧にやろうとして完璧にできる自分を演出しているような上司は、部下も寄ってきません。部下の失敗に厳しい、セクハラ・パワハラがひどい、上からの命令をそのまま部下に伝える、過去の体験だけで物事を判断する、根性論・精神論で仕事を進めようとする、仕事の裁量を与えてくれない…。部下からこのように思われている上司は、自分を客観視できていないことに原因があると考えられます。

自分のマネジメント能力が不足していることを理解できていないから、部下に対して理不尽に厳しくしたり、根性論・精神論で仕事を進めようとしたりするのです。セクハラ・パワハラの多くも「自分は好かれている」「尊敬されている」といった勘違いから起こります。自分を客観視できることは、管理職の場合は特に重要です。

ダメな面があっても、良い面をちゃんと示せている管理職は「「あの人、仕事は丸投げする時があるけど、最終的には責任を取ってくれるよね」「きめ細かいフォローは足りないけど、いざというときは一緒に謝ってくれるよね」と部下からも一定の信頼を得られます。

すべて理想の上司像みたいなものになる必要はないのです。「あの人、ここはダメだけど、ここはいいよね」という両面性をしっかり示すことができる。これが組織のリーダーの大事な条件ではないでしょうか。

自分のイケてるであろう面と、イケてないであろう面をちゃんとわかっているかどうか。本人の自己評価に注目すると、管理職に適した人材を見極めやすくなります。これは、人事評価における自己評価を見れば判断できます。自分を過大評価している人や過小評価をしている人は、自己客観視ができていない可能性が高いです。

笑顔・雑談があふれる職場で本当に良いのか?

最近、よくこのような相談をいただきます。「パワハラに怯えるあまり、とにかく優しく、部下のモチベーションばかり気にする上司が増えています。雑談をしたり、笑顔が絶えない職場にすることは、本当に良いのでしょうか」。

私は、やはり職場の人間関係を形成するうえで雑談は必要だと思います。始業前や昼食、おやつタイムなど、時間を決めて雑談をすればいいのです。テレワークでは雑談が難しい面もありますが、リアル、オンラインを問わず、お互いの近況を報告したりしてチームワークを高めることは、モチベーションの向上にも繋がるはずです。

とはいえ、単なる仲良しグループにする必要はないでしょう。さまざまな企業の人事評価に立ち会っていると、公正・公平な評価を求める人が多くいます。これは「いい評価をしてほしい」ということではなく、「厳しいこともちゃんと言ってほしい」と望んでいる人も少なくないことを意味しています。若い社員は、特に成長を望んでいます。大切なのは、雑談を禁ずることではなく、しっかりとメリハリをつけること。

嫌われたらどうしようと不安になる管理職の気持ちもわかりますが、完璧を目指さなくていいのです。開き直るのもダメですが、自分の得意な面と苦手な面を客観的に振り返ることができる。あるいは、周囲に「自分はどういうところが良くて、どういうところがダメ?」と聞くことができる。そのようにして自分をさらけ出せる人は、むしろリーダーの資質があると考えられます。

Getty Images

人によって態度を変える、いざというときに部下を守ってくれない、指示・指導が曖昧…。このような「困った上司」の代表例のような言動も、自己客観視ができる人であれば改善していけるはずです。自分の長所・短所を客観的に捉え、批判を受け入れる強さも持っている。管理職に適しているのは、そういう人材です。

もう1つ付け加えるなら、「ごめん」と素直に謝れる人。人間ですから間違ったこともするでしょう。それを素直に認めて自分を変えていける人なら、管理職になってからの成長が期待できます。

中長期的な目線を持っている、自分を客観的に見られる、勉強を欠かさない、そして素直に謝れる。これらの資質は、普段の仕事からある程度の判断ができるはずです。管理職を選ぶ際は、こうしたポイントに注目してみてはいかがでしょうか。

次回につづく

ご感想はこちら

プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

著書

人事はあなたのココを見ている!

人事はあなたのココを見ている!

西尾 太 /
空前のリストラ時代、ビジネスマン人生の明暗を分けるのは、人事の評価である。...
人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準

人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準

西尾 太 /
「頑張っている」はもはや無意味。「成果」こそが揺るぎない価値になるこの時代...
出版をご希望の方へ

公式連載