人事の超プロが教える、リストラ時代を生き抜く戦略

「小さな会社を買う」「趣味を極める」今の職場にしがみつかないリストラ時代の生き方

ただし、失敗したときのセーフティネットは持っておく

起業するにしても、独立するにしても、転職をするにしても、もうひとつ大事なポイントは、失敗した場合の逃げ道をしっかり持っておくことです。

会社を辞めるのは、当然リスクは高いです。自分だけならまだしも、家族がいる場合は、失敗しても食べていける方法を考えておかなくてはいけません。

私が会社を辞めて独立するときも、ダメだった場合は、どこかの会社の人事として働こうと考えていました。年収さえ気にしなければ、拾ってくれる会社もあるはずだ、と。

それが無理だった場合は、タクシー運転手になろうと考えていました。車を運転するのは好きだったので、一度やってみたいと思っていたのです。体力勝負にはなりますが、運転ができるのなら運送業もできなくはないだろう、とも考えていました。

起業や独立、転職など、思い切って人生を賭けた勝負をするのは決して間違った選択ではないと思います。ただ、失敗した場合は、その責任を自分で取らなくてはいけません。

いざとなったら何ができるのか。どうやったら暮らしていけるのか。失敗したときのことも想定して行動し、働く手段や貯金など、家族に肩身の狭い思いをさせないように、自分自身でセーフティネットを持っておくことは重要だと思います。

自分で考え、自分で決めて、人生を切り開く

セーフティネットとなるのは、働く手段やお金だけではありません。起業や独立、転職をするのであれば、事前にしっかりと準備をしておきましょう。

300万で会社を買うとしたら、経営者としての才覚を磨いておく必要があります。趣味の領域で起業するとしたら、顧客になってくれる人はいるのか、ビジネスとして成立するのか、事前にリサーチしておかなくていけません。

そのための手段として最適なのは、副業でしょう。今の会社に在籍したまま今後やろうとしているビジネスを副業として試してみるのです。お給料をもらいながら副業ができれば、たとえ失敗しても、生活に困ることはありません。

フルタイムで働きながら副業をするのが難しかったら、週3勤務や週4勤務を希望して、副業ができる時間を作りましょう。政府も国をあげて副業や多様な働き方を推進しています。50代になれば、そういうお願いをしてもいい年代だと思います。

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「年収は4/5でいいですから、週4勤務にしてください」。そう会社に相談すれば、「年収4/5でいいの?じゃあ問題ないですよ」と受け入れてもらえるかもしれません。

やりたいことを副業として試してみれば、自分のスキルが売れるのか売れないのかがわかります。誰かに弟子入りしてスキルを磨いたり、経験を増やしたりすることもできます。

結果的に独立や転職をするのはあきらめたとしても、アンテナを大きく広げて、多方面から今後のライフプランを考えることは、無駄にはなりません。ビジネスパーソンとしての視野が広がれば、リストラされる可能性も低くなります。

会社に長く勤めていると、誰かが決めたことで動くことに慣れてしまい、自分で物事を決めるのが苦手になります。自分の人生も、自分で決めることができなくなったりします。

しかし今後の人生を考えたら、自分で決めることに慣れていく必要があると思います。

現在50代の人も、この先、20年、25年、30年と働き続けていくかもしれないのです。定年後は、会社に自分の人生を決めてもらうことはできなくなります。何をするのか、どう生きていくのか、自分自身で決めていかなければなりません、

今後のライフプランを考え、行動することは、将来に向けたトレーニングにもなります。
いろいろな選択肢を考え、自分で決めて、新たな人生を切り開いていきましょう。

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プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

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