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ミドル世代転職は、「年収維持」が本当に幸せか

50代の転職で忘れてはいけないこと。何を軸にするか改めて考える

リストラに怯えながら働くより、転職や独立などの準備を進めよう。希望退職などでプレミアムな条件を出されたら、退職して新しい人生をスタートさせましょう。
この連載では、そんな提案をしてきました。

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今回は、転職先を選ぶときの重要なポイントについてお伝えしたいと思います。

50代の転職で忘れてはいけないのは、何を「軸」にするのかを改めて考えることです。職種なのか、待遇なのか、会社なのか、忙しいのか、忙しくないのか。何を基準とするかによって、転職先も今後の人生も変わってきます。

希望する仕事で、年収アップもして、プライベートも充実させる。もちろんそんな転職ができれば理想的ですが、50代に限らず、すべてを満たすような転職はそうそうできるものではありません。

なぜなら、転職側と企業側のニーズが100%マッチすることはまずないからです。転職したら、年収は下がるのが一般的。年収を維持できたら幸せですが、おそらく今より高度な仕事を求められます。となれば当然、仕事は忙しくなり、プライベートを充実させるのは難しくなるでしょう。

逆にプライベートの充実を求めるとしたら、年収維持どころか、お給料が大幅に下がるかもしれません。ポジションも低くなるかもしれません。

高年収を得るためには、永続的に新たな知識を吸収し、幅広い人脈を作り、常に時代の動向に敏感でいることが当然とされます。極端にいえば、オンオフの区別もなく、24時間、プライベートの時間でも仕事について考え続けることも想定しておかないと、過酷なサバイバルを勝ち残ることはできません。

何かを得るためには、何かを失う覚悟が必要です。仕事か、お金か、プライベートか。自分にとって大切なのは何か、改めて考えてみてください。

仕事か、お金か、あるいは会社か

仕事を軸にする場合は、自分の売りを改めて考えることが重要です。営業力があるのか、企画力があるのか、マーケティング力があるのか、経理が強いのか、人事総務が強いのか、技術力があるのか。自分の強みの延長線上で転職できれば、年収もこれまでと近いものが見込めるかもしれません。

そのためには、自分のスキルが他社でも通用するのかを知っておくことが大事です。人材紹介会社や顧問のマッチングサービスに登録したり、副業可能ならタダでもいいので他社の仕事を手伝って自分の市場価値を確かめておくことをおすすめします。

お金を軸にするのは、私はあまりおすすめできません。役員クラスでも部長クラスでも、年収アップを目的に転職すると失敗する確率が高いです。1割5分から2割くらいの年収ダウンを想定して、「今は1200万もらっていますけど、900万ぐらいもらえれば大丈夫です」などと言って、自分のやりたいことをアピールすべきです。

年収は一時的に下がっても、転職先で評価されれば、あとで上げることもできます。転職するときは、目先のお金にとらわれないことが重要です。

「風通しの良さ」や「意見が何でも言える」といった、会社の雰囲気や社風を軸にしたい人もいるでしょう。この場合も年収維持は難しいかもしれません。

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ただし、経営の意思決定に近いところを担う人であれば、会社の魅力や意思決定のプロセス、社長がどのような人物なのかを軸にして、転職先を選ぶのもありでしょう。業績アップに貢献できれば、年収アップの可能性もあります。

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プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

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