人事の超プロが教える、リストラ時代を生き抜く戦略

人事のプロが提言! 早期退職・希望退職は「お金」で決めろ!

次のチャンスがあるかどうかはわからない

早期退職・希望退職は、お金の条件が良いのなら、すぐに飛びつけばいいと思います。たとえば、退職後は地方で蕎麦屋やカフェをやりたい、農業を始めたい、そんな第二の人生を思い描いている人にとっては、またとないチャンスです。

住宅ローンを一掃して生活費がそんなにかからない状態にすることできれば、新しい商売がすぐに軌道に乗らなくても1〜2年は持つかもしれません。

もしくは、すぐに転職しなくても数年間は食べられるだけの退職金が出る。そういう条件なら、早期退職・希望退職という制度を活かすのはアリでしょう。

とはいえ、1〜2年はすぐに経ってしまいます。お金の計算は慎重にする必要があるでしょう。起業をしても1〜2年で結果を出すのは厳しい、あるいは転職先を見つけるのは難しい。そう判断した場合は、ちょっと待ったほうがいいかもしれません。

早期退職は恒常的に運用されている制度です。希望退職は再度実施されたりもします。いちど声をかけられた人は、次の機会も声をかけられる可能性が高いです。慌てて決断するより、適切な時期を待った方がいい場合もあるでしょう。

ただし、希望退職は再び実施されても、条件が同じとは限りません。退職金が少なくなることもあり得ます。あるいは、会社側が想定していた退職者の人数より多くの人が応募したら、次の募集はないかもしれません。

いざ声をかけられたとき、希望退職が実施されたときに、すぐに決断できるように準備を整えておくことが重要です。

いつ来てもいいように準備しておく

早期退職・希望退職をしなければ、定年まで安定的な収入を得られるかもしれません。ただし、会社は中高年を減らして若返りを図っているわけですから、肩身は狭くなるでしょう。また、いつリストラされるかわからない不安とも戦うことにもなります。

逆に、早期退職・希望退職をすれば、退職金が割増されます。再就職の支援も受けられます。ただし、転職や起業をしても、うまくいく保証はありません。

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会社に残ることのメリット・デメリット、会社を辞めることのメリット・デメリット、両方あります。どちらを選ぶかは、本人次第。だからこそ大切なのは、人生の選択権は会社ではなく、自分自身で持っておくことではないでしょうか?

50代になると「お辞めになりませんか」と、いつ会社から退職勧奨をされるかわかりません。社会情勢も今後どうなるかわかりません。ですが、来たるべき日に備えて、転職や独立の準備を進めておけば、条件次第ですぐに行動することができます。

声をかけられなければ、それでもいいし、声をかけられても、プレミアムな退職条件を出されたら「よっしゃ!」と会社を辞めて、新しい人生をスタートさせてもいい。

決めるのは、あくまでも自分。
今後のキャリアは自分で決める。会社には委ねない。

そういう意識を持ち、退職した場合に備えて準備を進めておけば、会社の意向に左右されてビクビクする必要はなくなります。

選択権を自分で持っておけば、早期退職も希望退職も怖くありません。
50代の皆さん、人生のオーナーシップを自分に取り戻しましょう!

次回につづく

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プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

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