人事の超プロが教える、リストラ時代を生き抜く戦略

人事の超プロが警鐘! かつてない大リストラ時代に備え今何をすべきか

リーマンショック、東日本大震災を超える、最大の危機感

ウクライナ危機とともに円安、物価高騰、電力不足など、様々な問題が噴出しています。私はリーマンショックのときも、東日本大震災のときも「大丈夫、何とかなる」と考えていましたが、今回ばかりは漠然とした不安が強くなっています。

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というのも、どの問題を考えてみても、ずっと先送りにしてきたことが顕在化しているだけだからです。物価高騰は、エネルギー政策をちゃんとやってこなかったから。電力問題も、原発問題を先送りにしてきたから。食料自給の問題も、ほぼ何もやってこなかったから。ロシアのウクライナ侵攻によって、これらの引き金が引かれただけ。

特に円安と物価高騰は、ビジネスパーソンにとって非常に重要な問題です。これによって大リストラ時代に突入してしまうかもしれません。

大企業は今後もそれなりに生き残っていくでしょうが、中小企業はますます経営が厳しくなっていくはずです。となれば当然、従業員も淘汰されます。

ただ私は、中小企業に関しては、政府の施策によって、死ぬべき会社を生かしてきたことも問題だと考えています。稼ぐ力がすでにない会社を助成金や補助金で救ってきたことが、日本がここまで国力を落としてしまった大きな要因ではないでしょうか。

日本の労働生産性は、主要先進国で最下位です。これもずっと先送りにしてきた課題のひとつ。この国が現在、早急に取り組まなくてならないのは、生産性を高めること。そして、最低賃金を大幅に引き上げることです。

現状を変えるには、最低賃金を引き上げるしかない

日本の最低賃金は、諸外国と比べても圧倒的に低いです。今では韓国にも抜かれ、OECD30か国の28位でほぼ最下位。韓国は最低賃金を10年前の約2倍に増やしていますが、日本は平均賃金すらこの30年間ほとんど上がっていません。

全国労働組合連合は、全国一律に1500円までの最低賃金の引き上げを訴えていますが、中小企業の利益を代表する日本商工会議所は据え置きを主張しています。

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最低賃金を引き上げなければ、諸外国との差はどんどん開き、日本はますます国力を落としていくでしょう。多くの経営者が「最低賃金を引き上げたら、うちは成り立たない」と反対しているようですが、そもそも成り立たないこと自体が問題なのです。

最低賃金を大幅に引き上げれば、その賃金で人を雇えない会社は淘汰されます。そこで人材の流動化が起こり、生産性を高めるために経営者も従業員も努力します。こうした循環をしていけるのであれば、日本もまだ何とか変われるはずです。

物価上昇は続いています。賃金を上げないと人々が消費に向かわないので、景気はさらに停滞します。金利を上げることが政策的に難しい状況からすると、無理やりにでも最低賃金を上げて、物価高騰と対応していくしかないでしょう。

日本がどこまで本気でやるかはわかりませんが、最低賃金は上がるはずです。おそらく1500円くらいまで上がるでしょう。しかし最低賃金が上がったとしても「やった、僕らの給料も上がるぞ!」と喜んでいる場合ではありません。

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プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

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