人事の超プロが教える、リストラ時代を生き抜く戦略

今からでも十分学べるリストラ回避のためのスキル

将来のことを見通せる、「戦略」のスキルを高める

さらに価値があるのは、将来どうなるかを見通す「戦略」のスキルを高めることです。過去と現在を見て、将来はこうなると考える。100%予見はできなくても、ロジカルシンキングのフレームワークを使えば、ある程度は見通すことができるようになります。

Getty Images

例えば、課長から部長に昇進するために最も必要となるスキルは「戦略策定」です。戦略とは、道筋を示すこと。会社のあるべき姿に向かう戦略を策定し、具体的な方針を示す。ある選択肢を示すということは、他の可能性を捨てることを意味し、その責任を取る覚悟が求められます。

戦略策定ができるかどうか。これが課長から部長になるための最大のハードルですが、ロジカルシンキングを学べば、戦略策定のスキルも身につけることができます。

ロジカルシンキングのフレームワークには、SWOTや3C、4Cなど様々な種類がありますが、どれもそれほど難しくありません。ロジカルシンキングの本もたくさん出ていますから、そんなに難しくなさそうな薄い本を1冊読むだけでもいいと思います。

そこから提案できることも生まれてくるでしょうし、現状を変えていく知恵も出てくるかもしれません。そもそも、なぜそんなにロジカルシンキングの本が出ているかというと、ビジネスに有用だからです。

フレームワークというのは、過去の立派な人たち、学者やコンサルが「こう考えたら全体が見えるよ」「先のことがわかるよ」と親切に考えて作ってくれたものです。それらを学び活用すれば、「あの人に相談すれば、ロジカルに答えを出してくれるよね」「3年先のことまで考えてくれるよね」などと信頼を得ることでき、さらにそこに自分の経験値を加えれば、より高い評価を得られるでしょう。

私が読んで面白かった本は、『ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件』(楠木建/東洋経済新報社)です。これはロジカルシンキングのマニュアル本ではありませんが、「大きな成功を収めた企業の戦略には共通点がある」という競争戦略の新しい視点を獲得できる本でした。

戦略とは、先のことを考え、「やること」と「やらないこと」を決めるスキルですから、50代は絶対に持っておかなくてはいけません。戦略を立てるには、やはりロジカルシンキングが必要です。

対人関係で求められるのは「コーチング」のスキル

対人関係で学んでおきたいスキルは、「コーチング」です。コーチングとは、対話を通じて相手の内面にある答えを引き出し、自ら考えて行動する人を育てるためのコミュニケーションスキルです。

ティーチングは指導をすることですから、これまで自分が経験してきたことを教えればいいわけですが、それだけでは自分の経験から伝えることしかできません。そのため相手が学べる範囲が狭くなってします。学べる範囲を広げるためには、相手から答えを引き出すコーチングのスキルが必要です。

Getty Images

コーチングは、会社の中だけでなく、世の中全体に一定の需要があるので、定年後のビジネスにするために学んでいる人もいます。コーチングのプロとして活躍するのは難しいかもしれませんが、学んでおいて損のないスキルだと思います。

40〜50代の方々は、これまで培ってきた20年、30年ものビジネスの経験があります。その経験を背景にしながら、悩める部下や後輩の力を引き出していく。コーチングに関する本もたくさん出ていますし、社外のセミナーもあります。今からでも学びやすいという点でも、おすすめです。

ロジカルに物事を考えられる。部下や後輩の考える力を伸ばせる。企業もこのような人材をリストラしようとは思いません。ロジカルシンキングとコーチング、今からでも学んでみてはいかがでしょうか。

次回につづく

 

ご感想はこちら

プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

著書

人事はあなたのココを見ている!

人事はあなたのココを見ている!

西尾 太 /
空前のリストラ時代、ビジネスマン人生の明暗を分けるのは、人事の評価である。...
人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準

人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準

西尾 太 /
「頑張っている」はもはや無意味。「成果」こそが揺るぎない価値になるこの時代...
出版をご希望の方へ

公式連載