人事の超プロが教える、リストラ時代を生き抜く戦略

今からでも十分学べるリストラ回避のためのスキル

「ロジカルシンキング」を学び、物事を俯瞰して全体像を捉える

40代・50代になっても、ビジネスパーソンは学び続けることが重要です。今回は、40~50代からでも十分学べる「リストラ回避」のためのスキルをお伝えします。

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まずひとつは、「ロジカルシンキング」です。ロジカルシンキングとは、物事を体系的に整理し筋道を立て、論理的に分析する思考法のこと。

管理職研修でもよくお伝えしているのですが、管理職の役割は全体像を見ること。全体を見たうえで、何が大事で何は捨てても良いのかを考える、物事を俯瞰的に捉えるスキルが必要となります。

これは20代・30代よりも、40代・50代のほうが優れている能力です。人工知能研究者・黒川伊保子さんの著書『成熟脳 ―脳の本番は56歳から始まる』(新潮社)によると、本のタイトルにもあるように、脳の本番は56歳から始まるといいます。

脳は人生最初の28年間であらゆる知識や感覚を得てピークを迎え、40代頃までは試行錯誤を繰り返します。40代・50代になると物忘れが多くなってきますよね。これは脳の衰えだと思いがちですが、実は必要なものを見極め、不要なものを捨てている「進化」なのだそうです。

加齢によって固有名詞を覚える力が衰えただけで、物事の構造や概念などを考える「コンセプチュアルスキル」に関しては、むしろ高まっているそうです。コンセプチュアルスキルとは、知識や情報などを体系的に組み合わせ、複雑な事象を概念化すること。物事の本質を把握する力です。

ロジカルシンキングを学び、コンセプチュアルスキルを磨く。物事を俯瞰して捉えて構造化したり、分析したりする力を高める。これは若い世代にはできない、40代・50代ならではのスキルです。

若い世代に伝えるときは、論理的に考え、答えを導き出す

刑事ドラマを見ていると、ベテラン刑事がよく「刑事の勘だ」と言っていますよね。残念ながらビジネスの現場では「長年の勘だ」というだけでは、若い子はピンときませんし、信じてもらえません。

若い世代に何かを伝えるときは、「このように分析したら、〇〇という答えになるよ」とロジカルに分析し、答えを導き出す必要があります。

そのための方法が、ロジカルシンキング(論理的思考)です。ロジカルシンキングを学ぶことによって、問題分析のスキルが磨かれます。問題分析とは。多くの情報の中から必要な情報とそうでない情報を選り分け、問題を客観的かつ構造的に捉えること。

ロジカルシンキングの基本ツール(プロセス図、マトリクス、ロジックツリー、ピラミッドストラクチャーなど)を活用して、情報整理や問題分析をする力を高めましょう。

ロジカルシンキングの基本といわれる概念の1つに、「MECE(ミーシー)」があります。MECEとは、抜け漏れなく、物事の全体を網羅して考えること。

直感も大事ですが、40〜50代にはそれを裏付ける論理的思考が必要です。ロジカルシンキングを身につけることで、抜け漏れを発見しやすくなり、周りがやろうとしていることに対して「この部分を見落としているんじゃないか」といった指摘をしやすくなります。

若い人たちの小論文を読んでいると、やはりそこができていない人が多いです。「人が辞めるから採用します」「長時間労働だから残業を減らします」と短絡的な思考に陥っていることが多く、「そもそもなんで人が辞めるんだっけ」「なんで長時間労働になってるんだっけ」「なぜこれまでそれができなかったんだっけ?」といった視点が抜け落ちています。

物事は、対処療法だけやっていても、うまくいきません。重要なのは、俯瞰的に捉えて本当の原因に行きつくこと。それが得意なのが40代、50代です。

若い世代から相談されたら「全体像を見ると、こうなっているだろう。ここが見えていないよ」と指摘できたら素晴らしいです。全体像を見て、物事を構造化する。構造化した中で、関連性を繋げて考える。こうしたことを改めて学ぶとしたら、ロジカルシンキングがいちばん役に立ちます。

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プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

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