人事の超プロが教える、リストラ時代を生き抜く戦略

うとまれる老害社員―「言われたことしかやらない」ではもう生き残れない?

DOだけではダメ。50代はHOWもWHATも自分で作る

会社の組織形態が従来のままであっても、私たち50代は「何をやるか」を自分で考えることが必要です。もしもリストラされることになってしまったら、転職か独立をすることになるでしょう。

仮に中堅・中小やベンチャー企業に転職できたとしても、「〇〇をやってください」なんて指示をされることはありません。「こういう状況だからよろしく」と言われるだけです。「何をやるか」「どのようにやるか」は、自分で考えなくてはなりません。

独立するとしたら、「DO」はもちろん、「WHAT」も「HOW」も、さらには「WHY」=「なぜやるのか」もすべて自分で考えることになります。

定年まで会社に残れたとしても、60歳か65歳には会社を辞めます。その後も何らかの仕事を続けるとしたら、「やること」は全部自分で考えることになります。

これはいきなりできるものではありません。日本人の多くは「DO」は素晴らしいです。一部の人は「HOW」もできます。でも「WHAT」をできる人は、なかなかいません。

60歳まであと10年もありません。今から鍛えておくことが必要です。

自分が売れる「商品」=スキル・経験は何か?

まずは、今の仕事で「WHAT」を考えることから始めましょう。自分に課せられたミッションの中で「何」をすべきか、自分で考え、周囲に認めてもらい、ちゃんと成果を出す。このPDCAを回せるようになれば、外に出ても通用します。会社も辞めても怖くないです。

また、会社を辞めた後に「何」をするのか、具体的にシミュレーションしてみましょう。会社を辞めた後は、何を売って生活するのか、何が売れるのか、自分の「商品」について考えます。商品とは、あなたがこれまで身につけてきた「スキル」や「経験」です。

私たちビジネスパーソンは、会社に属していても、それぞれが個人商店です。私の場合は、会社の中で「人事屋」という個人商店をやっていて、独立後は店を出す場所を変えただけ。あなたも会社に所属しながら、「営業屋」「経理屋」「総務屋」といった個人商店を経営しているのです。

経営者の感覚で「経理というスキルは商品になるんだっけ」「他の会社でも買ってくれるのかな」などと確認し、自分の商品は売り物になるかどうか、いろいろな人に話を聞いて検討してみてください。

こうして検証していくと、自分の「商品」=「スキル・経験」をもっと磨かなくてはいけないことに気づきます。磨いていけば、それが「売り物」の形で見えてきます。そのスキルや経験が世の中で必要とされるものであるなら、転職や独立も可能になります。

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実際に転職や独立するかどうかは別としても、「世の中に出たときに自分は何が売れるんだろう?」というシミュレーションはしておいて損はないと思います。経営者の感覚を持てば「WHAT」「WHY」「HOW」も自然に考えられるようになります

50代になったら「やることはやっている」だけでは厳しいです。「DO」だけでなく「WHAT」「WHY」「HOW」も考える習慣を身につけ、実行し、会社を辞めたら「何」を売っていくのかも本気で検証しましょう。それが今後の人生を大きく変えていくはずです。

次回につづく

 

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プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

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