最近、日本の賃金が上がっていないことが話題になっています。日本の平均賃金は1990年代の半ばまで世界でもトップクラスでしたが、他国にどんどん抜かれ、現在はアメリカの半分程度。ドイツやフランスなどの欧米諸国はもちろん、韓国よりも低く、OECDの最下位グループになっています。
1990年と2020年の実質賃金を比べてみると、アメリカは48%、韓国は92%も上昇しているのに、日本はわずか4%。この30年間、ほとんど賃金が上がっていません。
やることはやっているのに、給与が上がらない。評価してもらえない。そんな不満を持っている人も多いのではないでしょうか。
しかし、日本の賃金が上がらないのは、国や経営者だけの責任ではないと思います。
日本の賃金が上がらない理由については様々な指摘がされていますが、日本型の雇用形態に限界が来ていることも大きな要因のひとつでしょう。日本は年功序列のトップダウン型の組織が当たり前になってきました。いわゆるピラミッド型の組織形態です。
ピラミッド型組織は「なぜやるか(WHY)」「何をやるか(WHAT)」はトップが決めます。「どのようにやるか(HOW)」はミドルマネージャーが考え、現場は上に決められたことを「やる(DO)」。そのため「やることはやっている」という意識になりがちですが、言われたことを言われた通りにやっているだけでは、新たな価値は創出できません。出している価値が変わらなければ、給与が上がるわけがないのです。
だから日本はどんどん他国に追い抜かれ、賃金の上がらない、かわいそうな国になってしまったのではないでしょうか。
私たちに必要なのは、「何をやるか(WHAT)」を自分自身で考えること。特に中高年は「やることはやっている」だけでは、今後生き残っていくことは難しくなっていくでしょう。
日本の組織も少しずつ変わり始めています。トップダウンのピラミッド型組織は、やるべきことが明確なときには効率よく機能します。だからこそ「大量生産・大量消費」の高度成長期には驚異的な経済成長を遂げ、言われたことを言われた通りにやっていれば、一億総中流でみんなが幸せになれました。
しかし価値観が多様化した現在は、誰もがやるべきことがわからない時代です。言われたことを言われた通りにやっているだけでは、新たな価値は提供できず、企業も個人も成長できません。
そのため近年、注目されているのは、ボトムアップ型の組織形態です。
お客様の要望は、どんどん多様化しています。トップが「何をやるか」を考えていたら、市場の変化についていけないため、何をやるか(WHAT)、どのようにやるか(HOW)、そして実際にやること(DO)も、すべて現場で行うのが理想的な組織形態じゃないかと言われ始めています。
年功序列による典型的なピラミッド型だった業界でも「言われたことをやっているだけではダメだろう」「やることは自ら考えよう」という意識が広がり、近年は変わりつつあります。
最近は神社からも人事制度の見直しの相談もいただき、最も伝統的な業界でさえも変わろうとしています。「DO」だけやっていたら、組織も個人も先細りするばかりです。これからは一人ひとりが「WHAT」「HOW」「WHY」に取り組む必要があるのではないでしょうか。