人事の超プロが教える、リストラ時代を生き抜く戦略

「頼られる50代」か「会社の妖精さん」か――
会社での明暗を分ける5つの資質!

我流ではなく、体系化された知識・スキル・ツールを使い、ビジネスに活かす

④コンピテンシー
NG 戦略策定・変革の視点が弱い
OK ビジョン策定・戦略策定・変革を自ら行い、リードする

NG 目標設定・計画立案・進捗管理が甘い
OK 明確な目標設定・チームの計画立案・進捗管理により目標達成に信頼性がある

NG 傾聴力・プレゼンテーション力が我流である
OK 積極的傾聴、チームビルディング力、体系化したスキルとしてプレゼンテーション力を持ち、説得力がある

課長にはなれても、部長にはなれない。それが多くの50代の実情です。その違いは、「ビジョン」や「戦略」の策定ができるか、「変革力」があるかです。

「ビジョン」とは、中長期的な視野を持ち、数年後のあるべき姿を具体的に示すこと。「戦略」とは、ビジョンを実現するための戦術や道筋です。

部長になるには、一定以上の経験・知識、戦略フレームなどの知識による事業戦略、組織戦略、人事戦略、財務戦略のいずれかに長けている必要があります。高度な勉強が必要で、そう簡単にはできない領域です。だからこそ、こうした高度な知識やスキルを身につけている人は希少価値が高く、年収1000万以上を望むことができます。

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「変革」とは、伝統や慣習、成功体験にとらわれないアイデアを出し、組織に提案し、承認を得て、実行に移し、実績に結びつけること。新たな価値を創造するためには、たとえ抵抗にあっても、反対勢力に屈しない強さと覚悟が必要です。

ビジョンや戦略の策定、変革に必要な戦略フレームもチームビルディングも、我流では限界があります。傾聴力もロジカルシンキングもプレゼンテーション能力も体系化されています。こうしたスキルやツールを学び、使い、ビジネスに活かすことが重要です。

脳は56歳からが本番。学び直しはいつでもできる

⑤知識・スキル
NG 全体として汎用的なビジネス知識が不足している
OK 経営者が使うビジネス知識を備えており、それを前提とした会話ができる

NG 用語、その意味、概念を知らない。従って、実際のビジネスで活用できない
OK 必要な場面でビジネス知識・スキル・ツールを活用できる

NG 知識の不足は周りを見渡しても普通であり、公言しても恥ずかしくない
OK 自分の知識・スキルの不足を認識し、獲得しようとする

NG わからないことは、わからないまま諦める
OK わからないことはパフォーマンスを下げていることを知り、すぐに学ぶ

NGは、多くの企業で見られる事例です。例えば「知識の不足は周りを見渡しても普通であり、公言しても恥ずかしくない」は、伝統的な企業ではよくあります。

知識・スキルが不足している人に共通しているのは、新聞や本を読まないこと。若い世代はもちろん、中高年でも新聞を読んでいない人が多いです。どの企業でも活躍しているリーダーは、常にさまざまなニュースや情報を吸収して勉強しています。

40〜50代になると固有名詞が覚えられなくなり、物忘れが多くなります。そのため脳が衰えたと考えがちですが、実はそうではありません。

人工知能研究者の黒川伊保子さんによると、脳の本番は56歳から始まるといいます。脳は成熟期を迎え、不要なものを捨てているだけなのです。

物事を吸収して覚える機能は20代、それを組み立て優先順位づけなどができるのが30代、いらないものを捨て出すのが40代、物事の本質や全体像が見えるようになるのは56歳。50代の脳は、仕事の本質を見極めるには、とても適した状態なのです。

たとえ50代になっても、勉強を始めるのに遅いということはありません。今からでも学び直し、吸収し、ビジネスに活かしていきましょう。

次回につづく

 

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プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

著書

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