中高年の問題は、20〜30代の社員にとっても決して無関係ではありません。業績が悪化すれば、会社は人員削減に踏み切ります。さらにキリンやサッポロ、東芝機械、オンワード、ファミリーマートなど、業績がよくても45歳以上の希望退職・早期退職を募る企業も増えてきました。
評価の低い社員に対しては、年齢に関係なく、退職勧奨を行う場合もあります。1つ前の記事でもお伝えしたように、会社が求めているのは、どんな企業でも通用する人材です。
中高年の会社員は、今の会社で必要とされ続けるためにも、また転職という可能性のためにも、そして将来「老害」と呼ばれないためにも、「外に出ても通用する力」を身につけるしかないのです。
そして、そのために大事なことが2つあります。
ひとつは、普遍的なコンピテンシー(成果につながる行動)を獲得すること。30代であれば、目標が設定できて、計画立案ができて、進捗管理ができるようになること。そういう汎用的な力があれば、仕事が変わっても会社が変わっても、生きていけます。もっといえば、会社に頼らなくても生きていけるようになります。
私が2015年に上梓した、あらゆる企業に共通する45種類のコンピテンシーを紹介した『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)という書籍は、発売から5年以上が経った現在でも重版され続けており、人事の本としては異例のロングセラーになっています。
これは、こうした危機感を持ち、自身を成長させたいと願うビジネスパーソンがたくさんいることの証なのでしょう。会社が求めることは、年齢とともに変化していきます。現在の自分が求められていること、これから求められることを認識するのは非常に大切なのです。
もうひとつは、自分は「何屋」なのかを見極めていくこと。自身の強みや専門性を明確にすることは、30代以降の会社員には特に重要になります。
営業なのか、経理なのか、もしくはマネジメントという汎用性の高いスキルに特化するのか……。自分は「何屋」なのか、自身の仕事を要素分解して考えてみましょう。
その際に重要なのは、「他社でも通用するのか」を基準にして自身を客観的に顧みることです。社外の人と交流を深めて他社の話を参考にする、副業を試してみる、他社の面接に応募してみるなど、自身の力を客観的に判断する方法はいくらでもあります。そういった行動をすることが大切なのです。
他社でも通用する力があるなら、そのスキルをさらに磨いていく。通用しないと思ったら、不足しているスキルを身につける。そうして今後の選択肢を増やしていくのです。
今の会社で上を目指す、転職する、起業する。どのような道を選ぶにせよ「今」をどう生きるかが、あなたの今後の人生を大きく左右します。
もちろん何かを始めるのに、遅すぎるということはありません。40代、50代でも、決して遅くはないのです。私たちは70代まで働くことになるのかもしれません。この年代に学んだことは、たとえ50代になってゼロから何かを始めたとしても、その後の20年間を生きる術になります。
「老害」と呼ばれている人たちは誤解しています。私たちは働くことから逃げ切るなんてできないのです。自分の将来について改めて考え、生きる力を身につけていきましょう。
中高年の会社員は、このような会社の外に向けた「行動」がとても大切です。行動を起こすか起こさないか、それがあなたの将来を大きく左右します。そして未来の選択肢も、自ずと変化してくるのです。
次回に続く