人事はあなたのココを見ている!

ナメた態度で「会社の社員研修」に臨んだ社員が、人事に最低のレッテルを貼られてしまう理由

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研修自体のあり方も見直す必要はあるものの……

もちろん、企業の側も、社員研修のあり方を見直す必要はあるでしょう。
ある会社では、社長と人事部長でこんなやりとりがありました。

「おい、今期から社員の教育に力を入れるぞ。研修だ、研修をしよう」
「わかりました。社長、何の教育をするんですか?」
「ん? とにかく教育だ」
「いや、ですから何の教育をするんですか?」
「だから、教育だって言っているだろう!」
「……わかりました。では何の教育が必要なのか考える研修をしましょう」

社員の成長を促すために社員研修を行う。それ自体はたいへん素晴らしいことです。
世の中には、研修や教育の会社が多数あり、いい研修もたくさんあります。

ところが、多くの会社では、いい研修を行っても効果が持続しません。
なぜなら、上記の社長のように目的が曖昧だからです。

研修を行う際には、まず評価基準やキャリアステップを明確にすることが重要です。
社員に会社が求めていることが明らかになっていない状態で研修を行っても、
目的がわからなければ、社員のモチベーションは上がりません。
若い世代が「時間の無駄」と考えてしまうのも、やむを得ない面があるのです。

人事評価の重要な指標となる、ビジネスで求められる必要不可欠な行動や考え方は「コンピテンシー」と呼ばれています。これは階層や等級によって異なります。

たとえば、新人クラスのコンピテンシーは、ルール遵守、マナー意識、チームワーク、共感力など、ビジネスパーソンとして最低限必要となるヒューマンスキルが中心。

チーフクラスに昇進すると、プレゼンを効果的に行うスキルや、メンバーのモチベーションを上げるための動機づけや目標達成力など、より実践的なスキルがコンピテンシーとなります。

社員研修を行うのなら、このように階層ごとに必要とされるスキルを特定してから、その獲得のための学習内容を検討すべきでしょう。

そうすれば、社員にとってのメリットが明らかになり、評価や給与を上げ、昇進するための道しるべにもなるはずです。

ちなみに、前述の「何の教育が必要なのかを考える研修」は笑えない話ですが、実は成功したそうです。
というのも、社員自ら必要な教育を考える機会になり、この“階層ごとに必要なスキル”を特定することにつながったため、その後の評価体系や教育体系の策定に役立ったということです。

斜に構えた態度は損をする

とはいえ、社員の側も、研修に対する態度は考えたほうがいいでしょう。
どんな内容の研修であっても、学ぶべきことは必ずあります。

会社の研修に対して斜に構えた態度をとっていると、自分自身が損をします。

社員研修における態度を見ているのは、人事や管理職だけではありません。企業の研修には、オブザーバーが出席する場合が多くあります。

オブザーバーとは、人事領域では、研修の開催責任者や事務局など、おもに研修の観察を目的として参加する人を指します。

外部企業に研修を依頼した場合は、提供会社の営業担当や開発スタッフも見ています。
講師も当然、受講者の反応を気にしています。

「あの受講態度はひどかったよね」

社内外の人々からそんな発言をされてしまったら、当然、人事評価にマイナスの影響を与えます。

研修における態度を上司がわざわざ注意することはないかもしれませんが、人事は見ています。社員情報にも記載されます。
上司が変わっても、人事担当者が変わっても、その情報は残り続けます。

そうしたマイナスの情報が、今後あなたの昇進のチャンスを妨げてしまう可能性があるのです。

「そんなことはわかっている」といった研修内容であっても、斜に構えず、わかっていない人に教える動きをしましょう。
教えようとしてみたら、意外と理解できていない、なんてこともわかったりします。

会社の研修に意味がないと思うのなら、自ら意味のある研修を提案しましょう。
学びたい知識や身につけたいスキルを人事に伝えましょう。

あなたが管理職だったら、人材育成やメンバーの能力開発を支援する具体的なプランを提示して、あるべき研修の姿を社内で検討しましょう。

そうした「行動」は、当然「評価」にプラスに働きます。
些細なことに思われるかもしれませんが、社員研修は意外と重要です。
評価や給与を上げ、昇進するためには、さまざまな方法があるのです。

次回に続く

 

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プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

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