第6回『ひとつぼ展』のグラフィックアート部門でグランプリを受賞すれば、ご褒美として翌年にガーディアン・ガーデンで自分の展覧会を開くことができる――そのチャンスをめぐる、僕を含む出展作家13人のプレゼンテーションがいよいよ始まりました。
熱気に包まれた満員御礼の会場。そこには、審査員はもちろん、たくさんのオーディエンスが「誰がグランプリをGETするのか?」と興味津々な顔で集まっています。僕の友人も、大勢応援に駆けつけてくれました。
出展者は皆ほぼ同年代で、僕の大学の友人や、他のコンペティションで知り合った人も参加しています。それぞれ独自の作風を持っており、今回展示している作品も、ペインティングや立体作品などスタイルはさまざまで、誰ひとり似たものはありません。さすが、展覧会前の一次審査をクリアした面々です。
僕のプレゼンテーションの順番は、13人中のちょうど真ん中あたり。大学である程度学んでいたとはいえ、自作を人前でプレゼンする機会はあまりなかったため、かなり緊張していました。さらに今回はグランプリの懸かったクリエイターとしてのビッグチャンス★です。審査員の方々、それも一流のクリエイターである皆さんに良いところを見せようと思うと、おのずと緊張は高まり、もう全身ブルブルです。
あ~、僕の出番が近づいてくる。そしてついに……来た。やるしかない! いざ! 出陣!!
「僕が今回出展している作品は、連作の2点です。この2つは、さまざまな人を“半抽象”で表現し、ビジュアルインスタレーションをした作品群の中の2作になっています。サイズフレームは90㎝×180㎝、人のフォルムを感じさせる形で、いろいろな職種の人物をモチーフにしました。僕がグランプリを受賞しましたら、この『人物シリーズ』をもっと壮大な連作として描き、会場空間をぐるっと囲むようなインスタレーションにしたいと思います」
作品の質については、確固たる自信がありました。ただ前回も触れましたが、僕は審査員から「出展作が3点では少ない」と事前に指摘を受けています。にもかかわらず、3点でも「一坪」という規定サイズをオーバーしてしまうことがわかり、2作品に減らすしかありませんでした。そうした経緯があったので、「正直グランプリは厳しいだろうな」と考えていました。
そのためある意味「開き直る」ことができ、大勢の観衆を前にしたプレゼンということで緊張はしていたものの、一方でどこか冷静な自分もいました。その冷静な僕が言います。「グランプリを狙うには完璧な準備が必要。だから今回は見送ろう」
そう考えると、自然と踏ん切りがつきました。グランプリ受賞というゴールに囚われずに、「どうせやるなら言いたいことはきちんと伝えよう! 胸を張って、その場を楽しみながら挑もう!」と心に決めたのです。