ふ~、いい湯だな。ガッツリ素敵にテキパキ、コスメティックの仕事を終えました。朝からスムーズにあれもこれもと、ミーティングにプレゼンに撮影の準備に……とやることを終えて、片付け魔の僕は気分爽快。でも、なんだか身体が重く感じます。
「そうだ、久しぶりに行ってみよう!」帰宅準備をしながらそう思い立ち、タオル・洗顔料・スキンケアアイテムをカバンに入れ、グッバイオフィス。銀座の街へと繰り出すことにしました。
そして向かった先は――オフィスから徒歩3分の銭湯「金春湯」。文久3年(1863年)から続く歴史ある銭湯です。以前はよく通っていたのですが、少し前にリニューアルしてからは、ちょうど仕事が忙しかったこともあり、遠ざかっていました。
銀座7丁目のコスメティック店「SHISEIDO THE GINZA」で発行していたフリーペーパー『ギンザドキドキ』(僕はその編集長を務めていました)のコンテンツの1つとして、銀座のさまざまな場所を訪れる『銀座にまつわるエトセトラ』という企画がありました。金春湯は、この企画で取材させていただいたことがあるのです。ちなみにそのときの記事には、僕がこのお店で入浴しているカットを掲載しました。
どんなふうにリニューアルされたのかな? と楽しみに思いながら早速お店の中へ。入口や番台は見たところとくに変わりなし。番台に座る女将さんも、変わらずお元気そうで何よりです。脱衣所は、前よりも綺麗な内装にリニューアル。浴場は親しみやすいコンパクトな空間はそのままで、アットホームで好感が持てます。同じように感じるお客が多いのか、非常に人気のようでこの晩もなかなか混んでいました。
僕がクリエイションアイデアを考えたり、構想をまとめたりするときに、意外と閃くのは「液体」の中。たとえばジムのプール。そこでは意識は泳ぐことに向けられていますが、脳内では別のことをいろいろ考えているようで、ふっといいアイデアが浮かんだりするのです。ただ、プールのど真ん中なので、思いついたアイデアを忘れないようにするのが大変ではあります。
この、「閃いたことを忘れないようにする」ことは非常に重要。そのため自宅ではお風呂に入るときに、浴室にアイデア帳を持ち込むようにしています。ちなみにお風呂でのアイデア出しも非常にはかどります。“液体”に包まれながら思考するのが好きなのであります。
振り返ってみれば、今年は年明けからかなり飛ばしてきました。2つの展覧会の制作準備からスタートし、台湾の大学でのワークショップや、資生堂のNEWクリエイション、さらにこの連載の開始(連載は4月に始まって、今回でなんと16回目を迎えました)。他にも色々とやらせていただきましたが、10月に大きな展覧会が無事終了したので、「ちょっと一段落できるのかな?」と久しぶりに頭と身体をリセットするために旅に出かけることにしました。
選んだ地は、“湯の国”大分県・別府。温泉に浸かりながら、いくつかのプロジェクトのアイデア出しと、連載の執筆をしようと決めました。そう、一度やってみたかった「旅先の宿にこもって書く」という執筆の旅です。見知らぬ湯の地を1人で訪れ、温泉でリラックスしつつ、複数の連載をまとめて書きたいと考えたのです。ちなみに今この連載は、竹瓦温泉で身体を温めてから入った地元の喫茶店で、温泉珈琲を飲みながら書いています。