縫ってます、縫ってます、縫ってます。コツコツと作品のストックを増やしています。アトリエ制作モードでございます。平日の日中はコスメティッククリエイトの仕事があるので、夜と週末の時間を制作に費やしております。
いったい何のための制作かというと……ギャルリーワッツで10月17日から22日にかけて開催される展覧会――『青山でヘンタイ』展でございます。
この展覧会は、僕がソーイングしたオリジナルテキスタイルで“変わったタイ=ヘンタイ”を100本以上制作し、それらを来場者が自由に試着できるという、コミュニケーション体験STYLEの展覧会です。2007年に始まったこのシリーズは、今回で2回目となります。
セルフプロデュースでの展覧会を初めて実施したのは、大学3年生のとき。以来、資生堂に入社してから現在まで、毎年企画展で作品を発表しています。学生時代から数えて、もう何度開催しただろうか?
もともと絵画からスタートした作品制作でしたが、その後いろいろなことに触発されるにつれ、様々な表現にTRYするようになりました。現在注力しているのは、オリジナルファブリック(生地)をベースとしたコスチューム作品を“その場で試着できる”展覧会など、「装うこと」に重点を置いたインスタレーション表現です。
高校を卒業して入った多摩美術大学の染織デザイン科では、布のデザインをしたり、ファブリックを織って制作したりしていました。その頃から徐々にコンセプチュアルなコスチュームに興味が湧いて、やがて自分でも創るようになり、自作を人に着せて撮影するといった活動を始めました。こうした活動は、今の仕事のクリエイションにもつながっています。
その後、東京藝術大学大学院1年生のとき、プロデューサーから舞台衣装の制作を頼まれたのが運命★でした。それまでは糸を染め、織り、ファブリックを創って作品にしていたのですが、この舞台は出演人数が多かったため、大量の布を必要としました。
「1つ1つにあまり時間はかけられない。でも、オリジナリティーは出したい!」
そんな思いから、必然的に手に取ることとなったのが“ミシン”でした。
このミシンとの出会いが、僕のクリエイションを変えることになります。服飾系の学校でパターンを学んだことはありませんでしたが、「ミシンを使って、どうにか自分なりに創ってみたい!」とやる気満々になったのを覚えています。
そしていざ制作――大量の生地は、パレットに出された絵具のように。ミシンの糸は、それらの生地をつなぎ合わせる魔法のホッチキス、あるいは膨大なカラーが揃った色鉛筆のように見えました。
そして見よう見まねでミシンを動かして制作していくうち、自分なりのディテールファブリックやラインが創れる楽しさを発見したのです。
「あ! この表現♥面白い!」
さて、その舞台公演の直後。ある友人から、クリエイションを頼まれました。それは、なんとウェディングドレス。大切な友人の晴れの日を飾る★衣装を、ミシン初心者の僕が創っていいものか不安でもありましたが……「旧友のためにBESTを尽くしたい!」とTRYすることにしました。
純白のテキスタイルを、彫刻作品を創るかのごとく3次元のボディーを回しながら縫っていく。チャレンジングな制作でしたが、なんてったって人生の晴れ舞台を飾る衣装です。友人として、クリエイターとして、大興奮!
「絶対に美しく、そしてHAPPYになってほしい!」
そんな思いでクリエイションに励みました。
そして迎えた結婚式当日。ドレスは大好評で、あちこちから聞こえる「あの衣装、どこのブランド?」「誰が創ったの?」という参加者たちの声。主役である友人も非常に喜んでくれました。今でも時々、様々な方に晴れの日のコスチューム制作を頼まれています。
こうした経験を通して、僕はミシンを使った表現STYLEにどんどんハマっていきました。
「いろんなテキスタイルを縫ってクリエイションしてみたい! こんな形に縫ったらどうなるのだろう? あんな形にカットして縫い合わせたら、どう見えるのだろう?」
ワクワクが止まりませんでした。