結局、低姿勢こそが最強のビジネススキルである

「仕事ができるから」「立場が上だから」といって威張っていた人の「悲惨な末路」

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私が、最大手広告会社を攻撃するのに躊躇がない理由

2009年に『ウェブはバカと暇人のもの』という書籍を書いて以降、私もメディアでの発言権が激増したため、今ではその広告会社を叩くことはまったく厭わなくなっている。

2014年の過労自殺問題や、2018年のパワハラ問題、#metoo暴露問題なども含め、私の攻撃に躊躇がない理由は、Aから実に見下された扱いを受けた理由がもっとも大きい。

さらに、その後もその広告会社と一緒に仕事をすると、とにかく「我々、最大手広告会社様と仕事をさせてあげてやってんだからな」的な対応が多過ぎた。

某クライアント企業のビルの1階で15時からの打ち合わせがあったため、14時55分に待ち合わせた。私が14時55分ピッタリに着いたところ、その営業担当は「なんでオレよりも遅く来るんですか?」と不快感を示した。「申し訳ありません」とは言ったものの、「14時55分って言ったんだったら14時55分だろ?」としか思えなかった。

とにかくその広告会社は、下請けに対しては無礼な態度を取っても良い、という社風があることは感じられた。となれば、私にしても別にクライアントを選ぶ権利はあるわけで、ヘッポコ弱小フリーランスの身ながら、その会社との仕事をお断りするようになった。

もちろん、その広告会社の個々のクリエーターなどはいい人が多いし、何らかのイベントで会った時は感じが良い。しかし、組織になった時のあの下請けに対する高圧的な「威張っている」態度については正直ついていけない。

そんなことを言い続けただけに、ここ数年、その会社の人と広告関連のイベント等で名刺交換をすると「中川さんは弊社のことを嫌いでしょうが……」と前置きをされ、さらに「いや、お声掛けするのもためらったのですが……」と言われてしまう。

私自身、別に個々の社員に対する嫌悪感はない。「いやいや、○○さんに対しては何も悪い感情はありません! 今度飲んでください!」などと心から伝えている。ただ、「組織を背負った」立場の社員になると途端にゴーマンになるこの風潮は何なのだ? と思うことが多かった。

一応、こちらも恨み深い人間なので、これまでに不遜な扱いをしてきた人間のことは実名も含めて覚えている。何かその人物に関する醜聞が出た場合はここぞとばかりに過去の「威張った」エピソードを明かしても良いと考えている。

さて、筆が熱くなってしまったが、関連会社社員の女性・Aが今何をしているのかはまったくわからない。広告業界で活躍している人物の名前はちらほら耳に入ってくるが、その中には入っていない。

ただし、私の記憶の中では一生許さない対象として残っているし、彼女から同様の扱いを受けた人間の中には、同様に考えている人もいるかもしれない。

調子に乗って態度を変えてきた、とある同業者

そして【2】だが、「自分が調子が良い状態であることを自覚し、自分ほど活躍していない人間に対し見下す態度を取る」人物については、フリーライターの同業者で何人かいる。

ある時、若いながら署名原稿の連載を獲得した男性・Bだ。Bは私よりは年齢が若く、元々はライターとしての先輩である私に今後の人生を相談するような関係だった。

果たして会社員の立場を捨て、フリーのライターになるリスクとはどのようなものだろうか――。そんな心配をしていた彼を励まし、「あなたなら大丈夫だ!」なんて言っていた。別に私の助言がそこまで影響を与えたとは思わないが、結局彼はフリーライターという職を選び、そしてプチブレイクした。

そんな彼の活躍を嬉しく思っていたのだが、実際に会った時に彼から威張られ、その思いは捨て去ることになる。

 

私:ニュースサイトを作ることになったので、Bさんに手伝っていただきたいのです。

B:ギャラはいくらですか?

私:1文字10円です。

B:えっ? 原稿って普通は1000文字程度ですよね。僕は1本3万円以下の仕事はしないんです。話にならないです。

私:あ、失礼な相談をしてしまい、申し訳ない。今日も時間を取ってくれてありがとうございました。

 

その後、Bは仕事が減少し、ここから5年ほどした時に「会いたいです。仕事の相談をさせてください」と連絡があった。要は仕事を振ってくれ、ということだ。一応会ったところ、当時のゴーマンさを詫び、何か自分にできることがあったら必死に頑張ってやりたいと伝えてきた。

だが、私の答えは「へー、頑張ってくださいね」でしかなく、一切の仕事を出すことはないし、あまつさえ、彼がとある原稿で炎上した時は、前出の「3万円以下の仕事はしない」というエピソードをブログで暴露するという手段に打って出た。

最大手広告会社とBに対する私の仕打ちは大人げないだろう。だが、過去に無駄に威張られた経験を持つ者は、こうして大人げないことをする「正当性」が与えられてしまうのである。過去に威張られさえしなければ、私だってこんな復讐はしない。

あとは、一度私が担当するネットニュースの仕事を依頼したものの、「ネットの記事をやっていても成長性がない」的なことを言い、脱退した人物とたまたま12年ぶりぐらいに道でバッタリと出会ったが、ネットがここまで隆盛の今、なんだか妙なペコペコ対応をされてしまった。多分、過去に威張ったことを今となっては恥ずかしく思っているのだろう。

さて、そんな中、2018年にフリーのPRディレクター・コミュニケーションプランナーとして独立した片山悠という男性がいる。彼は低姿勢であることについてこう語る。

「会社のブランド力や報酬の多寡を問わず、クライアントや協力会社の方々には最大限の敬意を払うよう心がけています。特にコミュニケーションの仕事は人のつながりで成り立っていることを実感しているので。新しい仕事もご紹介でいただく場合がほとんどです。これからも、この仕事の基本は変わらないと信じています」

 

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プロフィール

中川淳一郎
中川淳一郎

1973年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。ライター、雑誌編集などを経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『縁の切り方 絆と孤独を考える』『電通と博報堂は何をしているのか』『ネットは基本、クソメディア』など多数。

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