結局、低姿勢こそが最強のビジネススキルである

「仕事ができるから」「立場が上だから」といって威張っていた人の「悲惨な末路」

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威張って良いことなんて何一つない!

会社員であれ、自営業者であれ、時々「威張っている人」は存在する。

こうした人々は当連載の趣旨である「低姿勢な人」とは対極の存在だが、よっぽどの天才かアーティストを除き、威張るとロクなことはない。

まず、威張られた側は恨みを抱く。この恨みは激しく長期にわたって続くもので、威張った側の勢いや活躍が停滞し始めたところで時空を超え、何年も前の威張られた体験を突然関係者に暴露してしまったりするのだ。

下手すればフェイスブックにも当時の体験を書かれてしまい、「あの時私に散々上から目線で無駄な説教と自慢を繰り返した日々は、えぇ、それは実に実に思い出深い日々でした(笑)」なんてことになり、「いいね」が次々とつくほか、コメント欄もその人物を知る人による過去の傲慢さや、近年の凋落ぶりを暴露し嘲笑する流れとなる。

さすがに大人だからそこまではやらないかもしれないが、少なくともやられるリスクは間違いなくある。だからこそ、人の恨みを買うような「高圧姿勢」(低姿勢の逆の言葉)はしない方がいい。

というか、威張っても良いことなど一つもないのだ。一瞬の自尊心を満たすに過ぎない。その自尊心が満たされたからってお金はもらえるのか? 威張るのであれば、せいぜい自宅で飼っているメダカか何かに「ほら、オレ様がエサをあげなくちゃお前は飢えてしまうんだぞ。どうだ、エサが欲しいか?」なんてメダカのエサを水槽越しに見せつける程度でいい。人間に対して威張るのは意味がない。

威張るタイプの人物で多いのは以下の2タイプだ。

 

【1】
勝手に相手を自分よりも下の立場だと見なし、不遜な態度を取る

【2】
自分が調子が良い状態であることを自覚し、自分ほど活躍していない人間に対し見下す態度を取る

 

両方ともマウンティングを取るタイプなわけだが、【1】のタイプは「肩書」でモノを見るタイプで、【2】は「実力」でモノを見るタイプであり、拝金主義者であることが多い。

最大手広告会社のありえない態度

まず【1】の方だが、過去に出会った中で鮮明に覚えているのは、日本の最大手広告会社から関連会社に出向してきた女性社員だった。

私がフリーになった2001年に彼女の部下から依頼を受け、仕事を開始した。今考えると無茶苦茶なのだが、今でこそライター・編集者を名乗る私のやった仕事は「イラストレーター」である。

部下である私の担当女性は、本社からの出向組ではない。初めて彼女と打ち合わせをした後に、「ちょっと私の上司を紹介しますね」と言われ、名刺交換をした。一応名刺交換の作法としては「双方がペコペコしながら両手で出し、どちらが先に受け取るか、どちらが下に出すか」というどうでもいい駆け引きが展開されるもの。

その女性上司(以下Aと呼ぶ)は、「はい」と言い、直立不動のまま片手で名刺を私に出した。もしもこの瞬間を写真に撮っていた場合、ペコペコ姿勢を取り、両手で名刺を出す私と彼女の対比により上下関係が明確になることだろう。隷属関係といっても良いほどの見事なコントラストだった。

こんな名刺交換をしたことは初めてだったため驚いたが、以後もAの態度はまぁ、ひどかった。当時の私は28歳で、Aは恐らく33歳ぐらいだろう。打ち合わせのために同社に行くことは何度もあったが、Aは絶対に打ち合わせには来ない。それはそれで構わないのだが、執務室や廊下ですれ違った場合にこちらが「こんにちは」や「おつかれさまです」と頭を下げて挨拶をすると、まったくこちらを見ず、無視をするのだ。

これが何回か続くと、こちらも挨拶はしなくなる。当時の私の年収は60万円しかなかったが、Aからすれば年収1000万円超のエリート社員で、今は出向の身だけど、この期間が終わったら私は本社で素晴らしい活躍をするんだからね。アンタみたいな出入り業者ふぜいが私に喋るなんて100年早いわ! なんて思っていたのでは、とあの最悪な態度を思い返すにつれ予想してしまう。

Aによるこの仕打ちがあるがために、私は「この野郎! 出入り業者だからって見下すんじゃねーよ!」と思うほか、「いつか一太刀くらわせてやる」と思った次第である。

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プロフィール

中川淳一郎
中川淳一郎

1973年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。ライター、雑誌編集などを経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『縁の切り方 絆と孤独を考える』『電通と博報堂は何をしているのか』『ネットは基本、クソメディア』など多数。

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