なお、話しやすい人にありがちな人間関係の問題としては、ほかに、「依存されやすい」ことが挙げられます。
世の中には、どうしても周りから「あの人とはあまり話したくない」と思われてしまう人がいます。
「他人が聞いてもあまり興味を惹かれない話や自慢話ばかりする」「同じ話を何度も繰り返す」「話が要領を得ず、ダラダラと長い」「人の話を聞かず、自分だけが一方的に話す」など、独りよがりな話し方をするため、聞いているほうを疲れさせてしまうのです。
「ただ単に話すのが好き(会話好きではなく、自分が話すのが好き)」「常に誰かに自分をアピールし、認めてもらわないと、不安で仕方がない」「自分の話は面白く、誰もが興味を持つはずだと思い込んでいる」など、理由は人それぞれでしょうが、彼らは心の中で常に話を聞いてくれる相手、自分を認めてくれる相手を求めています。
でも、その欲求が強すぎて、周りの人を辟易させてしまい、話を聞いてもらえなくなり、フラストレーションがたまり、さらに欲求が肥大化する……という悪循環に陥っているのです。
話しやすい人の場合、他人の話をちゃんと聞こうとする姿勢が災いして、そうした人たちから「この人ならどんな話でも聞いてくれそう」「この人なら自分を無下にしないだろう」と思われやすく、彼らの濃縮された「話を聞いてもらいたい欲求」「自分を認めてもらいたい欲求」をダイレクトにぶつけられがちです。
その結果、同じ話や自慢話、的を射ない話などを延々と聞かされる、複数の人が集っている場所で、もっと他の人と話したいのに、ずっと同じ人の話し相手をしなければならなくなる、といったことが起こりやすくなります。
もちろん、「あなたにとっては、その人の話を聞くことが、別に苦痛ではない」「精神的、時間的に余裕がある」「ほかに、特に話すべき人がいない」という状況なら、話につきあうのもありでしょう。
話を聞くことで、「こういう話し方をすると、相手を疲れさせてしまうんだな」「相手を不快にさせてしまうんだな」など、勉強になることもあるかもしれません。
でも、あなたに余裕がないときは、やはり「話しやすい人だと思われたい」「嫌われたくない」「いい人でいたい」という気持ちを手放し、自分の心身を守ることも必要です。
冷たいようですが、周りの人に話を聞いてもらえないのは、その人自身が解決しなければならない問題であり、あなたが背負い込む必要はありませんし、あなたが我慢して話し相手を続けることが、その人にとってプラスになるとも限りません。
相手が、「なぜ、みんなが自分の話を聞いてくれないのか」を考えるきっかけを奪うことにもなりかねないからです。
どうしても、そうした相手と二人で話さなければならないときは、あらかじめ話す時間を決め、「次の予定があって、あまり時間がとれないんです」と伝えるといいでしょう。
大勢がいる場所で話し相手にされてしまった場合は、「トイレに行く」「スマホを見て、『至急、電話(もしくはメール)をしなければならない用事ができました』と伝える」などの方法で、話を中断し、その場をいったん離れるのも手です。
あるいは、(これは相手のキャラクターやあなたとの関係性にもよるのですが)「ごめん、話が長い」「ちょっと、何言ってるかわからない」「今、聞いてる余裕ないから今度にして」などとはっきり伝えるのもいいでしょう。
あなたの中に、相手を傷つけたくないという思いがあるなら、できるだけ明るめの声、柔らかめの口調で言う、やや冗談めかして言う、など、伝え方を工夫してみましょう。
「これ以上、この人の話を聞くのは苦痛だ」と感じるのであれば、くれぐれも質問をしたり、共感を示したりしてはいけません。
なお、相手が上司や取引先など、立場的にあまり無下にできない(スルーしたり、毅然とした態度をとったりしにくい)相手からなめられたり依存されたりすることもあるかもしれません。
そのような場合は、心の中でバリアを張りつつ、できるだけ感情のこもらない声で、「はあ」「なるほど」「そうですか」といった相槌を少なめに打つ……というのもありでしょう。
すべての人に効果があるかどうかはわかりませんが、相手が何かを察し、適度な距離が生まれる可能性があります。
話しやすい人であるがために不愉快な思いや面倒な思いをすると、中には「話しやすい人であること(話しやすい人になること)をやめようかな」と考える人もいるかもしれません。
自然とキャラ変できるのであれば、それもまたありかな……と私は思うのですが、人には持って生まれた性格というものがあり、なかなか変えることは困難です。
「性格や行動を変えなきゃ」と思うことがストレスになることもあるでしょうし、無理にキャラ変をした結果、周りの人から、今度はあなたが敬遠されてしまうようになるかもしれません。
あなたが話しやすい人だからといって、簡単になめたり依存したりしてくるのは、相手に問題があるのです。
あなた自身は悪くありません。
困った相手に対しては、ときには話しやすい人になるためのテクニックの逆を実行し、「話しにくい人」だと思わせつつ、基本的には堂々と話しやすい人でいましょう。