書店の陳列台に、ところどころ小さなプラカードのようなものが立っている。いわゆるポップという書店内の小さな広告である。各出版社とも、お客の目を引くよう工夫を凝らしてつくっている。ポップは、案外本の実売に効果があり、出版社がポップをつくってくれるのは作家にとってありがたい。
では、出版社はどういう規準でポップづくりを決めているのだろうか。当然だが、出版社としては売りたい本(出版社が売りたい本というのは、売れそうだと出版社が考えている本のこと)のポップをつくることになる。では、出版社任せとせずに、作家がポップを自作したら出版社は受け入れてくれるだろうか。
初版発行部数が大量の本は、出版社も売れると思ってつくっているのだから、当然、ポップも出版社がつくる。このケースでは、作家がポップをつくるということはあり得ない。
逆に初版発行部数が少ない場合は、必ずしも主力商品という位置づけではない。しかし、初版発行部数が小さいケースでは、配本する書店の数も相対的に少なくなるので、ポップの送り先も少なくて済む。したがって、送る手間も少ないいので、作家が自作したポップでも使ってくれる可能性は小さくない。
とはいえ、書店店頭に出す以上、ポップにも、それなりのクオリティが求められることは当然のことである。
ビジネス書の出版傾向は、昨年あたりからすこし流れが変わってきているという話があちこちから聞こえてくる。ひとつは、これまで自己啓発全盛時代が長く続いていたが、自己啓発でも話だけで終わらず、実効性を求める方向に重心が移りつつあるというものだ。
「言うだけじゃあダメ、結果につながらないとね」ということである。アドラーブームもその一端かもしれないし、ひょっとするとアドラーがつくった流れなのかもしれない。
もうひとつは、仕事のスピード、個人の生産性を上げる、もう少しビジネス書のタイトル的な表現をすると「得する仕事の仕方」というような方向があるといわれている。「得する仕事」というのは、自分が得するということなので、その点ではこちらも「自己啓発」という枠から飛び出してはいない。
論理的、現実的に、自分だけが得する仕事の仕方というのはあり得ないのだが、それでも具体的な方法論に読者の関心が向いているという点は大きい。両者とも、結果を求めるという点では一致する。読者は、目のつけどころや発想の転換等の気づきレベルで話が終わるだけでは納得しなくなっているのかもしれない。
目のつけどころや発想の転換であれば、岡目八目でビジネスの世界と関係の薄かった作家でも書けたが、実効性が問われるとなると、ビジネス未経験者が説得力のある言葉を述べることは難しいはずだ。ビジネス経験のある作家にとっては、2017年はすこしチャンスが広がる可能性がある。
次回に続く