本稿が2017年最初の投稿となる。年頭に当たって何かめでたそうなことを書きたいと考えた。世の中が動くときは、基本的に出版界には追い風が吹く。トランプ新大統領の言動が波紋を呼ぶごとに、出版界としてはある種の期待感を抱いてはいるが、彼が就任後どういう路線をとるのかは、依然不透明な部分が残る。ブレグジットのように、案外、すぐに落ち着いてしまうかもしれない。
前途の見えない出版界では、そうそうめでたいネタはないのだが、とはいえ本稿も、もうすぐ連載一年を迎えるタイミングでもあり、年頭にあたり本を出版するとどんなよいことがあるのか、「夢」の部分について再確認してみたい。
ビジネス書や実用書の作家は、作家が本業という人は少なく、多くは他に本業を持ちつつ本も書いているという人である。こうしたビジネス書・実用書の作家の場合、本を出版することの効果とはもっぱら本業にリターンがあるということになる。
以前にも本稿で記したとおり、企業コンサルタントというのは、弁護士や税理士と違い、国家資格を持っていなくてもできる職業である。もちろん、中小企業診断士などの資格はあるが、それが強い威力を発揮するということはない職業だ。つまり、有資格であろうと、無資格者であろうと、クライアントからはほとんど差別されないのがコンサルタントなのである。
したがって、他者との差別化はもっぱら実績でつけるしかない。実績の中でも、最もモノを言うのが「出版」である。そう言い切ってよいと思う。これも以前に書いたことだが、わたしの知り合いの流通系のコンサルタントは、初対面のクライアントとの面談の際には必ず著書を持参する。クライアントは始めのうちは○○さんとコンサルタントの名前を呼んでいるが、「ご参考までにわたしが書いた本を差し上げます」とテーブルに著書を何冊か積み上げると、冊数が増えるごとに相手の見る目が変わり、呼称が「○○さん」から「先生」に変わるそうだ。
彼は、コンサルタントにとって大事なのは、名刺より「著書の有無」だと言っている。これはコンサルタントだけのことではなく、税理士、公認会計士、弁護士、あるいはその他の士業でも似たようなものと思われる。
つまり、本を出す効果の一つ目は、仕事がやりやすくなるということだ。仕事がやりやすくなるというのは、知識や情報を商品にしている人だけに限ったことではない。本の効果のうち、金額面で最大だったのは、わたしの体験に限っていえば10億円である。これは作家の自己申告だったので、真実はこれ以上かもしれないし、これ以下だったのかもしれない。
詳細はともかくも、本を出したことによって相当なリターンがあったということは間違いない事実だ。彼はコンサルタントではない。その後に、店頭公開したあるサービス系のFCの経営者である。