ビジネスのシーンでは、部下との面談の後でフォローのメールを送ることがあると思います。強く叱り過ぎた後のフォローであったり、説明が十分に理解されていないのではと危ぶまれるときには、改めて重要な点をメールでフォローすることがあります。
面談の後に、面と向かってまた念を押すというのはお互いに気まずいですから、メールはそういうとき有効な手段といえるでしょう。
しかし、せっかくのフォローのメールでも、言い方、言い回しを間違えると効果がないどころか、ときに逆効果になりかねません。
たとえば、面談で部下にこれから身に付けるべき能力について話をしたとします。
こうした上司の話は、部下にとっては一種のお説教です。お説教の後に上司から次のようなメールが来たら、部下は感激するでしょうか。うんざりするでしょうか。
<文例A 面談の後に来た上司の念押しメール>
さっきも言ったとおり、現代ビジネスはグローバリゼーションが基本になる。
ビジネスでは英語が必須能力だ。
英語のできないビジネスマンは、ビジネスマンとはいえない。早急に英語力をつけなさい。
これでは、面談で言われたことをさらに念押しされただけです。
部下としては、このメールを見ても「わかったよ」としか思えないでしょう。やる気のレベルとしては、面談直後が50だったとすれば、25くらいに急落しているはずです。
それなりに実績をあげている部下なら、かえって反発を覚えるかもしれません。
上司としては部下の意欲を高めようと、叱咤激励のつもりでしたが、部下は叱咤されたと思うばかりで、激励されたとは思いません。
なぜこのようなことになってしまったかというと、このメールは部下を叩くばかりで持ち上げる部分がないからです。
部下といえども人間、すこしは持ち上げてやらないと、気分が高揚しません。
気分が高揚しないとモチベーションも上がらないものです。
したがってフォローのメールでは、はじめに部下を持ち上げることが基本となります。
<文例B 面談の後に来た上司のフォローメール>
さっきも言ったとおり、現代ビジネスはグローバリゼーションが基本です。
君はマーケティングに強い。リーダーシップもある。問題解決能力も高い。
そこに英語力が加われば、間違いなく一流のビジネスマンになれます。
早急に英語力をつけてくれることを望んでいます。
事実かどうかは別として、ビジネスマンとして英語力以外はひととおりの能力が備わっていると、上司から言われているのですから、部下としては悪い気はしないはずです。
面談もときには、文例Aのような厳しいことを言われたとしても、メールを見てやはり上司は自分のことを評価してくれていると思えば、苦手な英語にも挑戦してみようかという気になるかもしれません。
フォローのメールでは、まず部下のよい点をほめるところから、肝心の話に持って行くことが有効と思います。
メールは若干長めになったとしても、部下が上司のメールを読み飛ばすことはありませんので、まずほめてから肝心の用件に入るという段取りがフォローのメールの基本です。
部下を叱った後にも、フォローのためにメールを送る上司は多いはずです。
それ自体は望ましい行動ですが、前述した文例Aのメールのような念押しのメールではフォローになりません。
叱られた後に上司から部下へメールが来たら、部下は10人中8人は、なぐさめのメールが来たと思います。
メールにはそういう期待が込められているのです。
そこへ次のようなメールが来たら、ガッカリするより腹立たしくなるかもしれません。
<文例C 叱られた部下に追い打ちをかけるようなメール>
さっきはすこしきつく言いすぎたかもしれない。
しかし、今回の失敗は顧客とのコミュニケーションをしっかり取っていれば防げたはずだ。
顧客との付き合いの長さに油断して、情報収集が疎かになっていたとしか思えない。
顧客の動向に注意するのは、営業のイロハのイだ。ベテランなんだからしっかり頼む。
部下にしてみれば、傷口に塩を塗り込むようなメールといえます。
そもそもすでに一度叱っているわけですから、メールで追い打ちをかける必要はありません。叱られた部下に、後で追い打ちをかけるようなメールを送るのは、上司と部下の信頼関係に傷をつけかねないことです。
信頼はチームの背骨です。
「くれぐれも注意してほしい」という上司の気持ちは分かりますが、反省している部下にとっては立ち直るチャンスまで奪うメールです。
<文例D 叱られた部下へのフォローのメール>
さっきはすこしきつく言いすぎた。君の貢献にはいつも感謝している。
今回の失敗も、君ならきっとよい教訓にしてくれると信じている。
これからもよろしく頼むよ。
旧日本海軍連合艦隊司令長官の山本五十六の言葉に「やっている姿を感謝で見守って、信頼せねば人は実らず」というものがあります。
上司として、部下に感謝と揺るぎない信頼を示すことは、フォローのメールに必要な要件と思います。
叱られた後に、文例Dのようなメールが来たら、感激屋タイプの部下なら涙するかもしれません。