ここでは、文章の起承転結を逆転する方法を紹介します。文章の基本はおなじみの起承転結です。ただ、起承転結形式の文章はオーソドックスではあるものも、凡庸なという印象が避けられません。
そこで、あえて結論を前に持ってくる結・起承転という文章の書き方があります。
結論を前に持ってくるとは、野球の試合の記事ならはじめに勝敗を書き、その後に1回からの攻防について記すということです。
はじめに結論がわかっているのですから、結・起承転形式では長い文章は書けません。恐らくだれも最後まで付き合ってはくれないでしょう。
その分、短い文章ではキレが出ます。長い文章を書くのが得意ではないという人は、結・起承転形式を活用してみるとよいかもしれません。
<文例① オーソドックスな起承転結形式の文章>
今年の夏は猛暑だった。
熱中症で倒れる人が続出したそうだ。
アメリカやヨーロッパも異常な高温だったという。
令和に入って地球の温暖化は、ますます深刻化しているようだ。
「起」が日本の猛暑で、「承」は熱中症、「転」がアメリカ、ヨーロッパの猛暑で、「結」は地球の温暖化という流れです。
極めてオーソドックスな文章ですが、結論を前に持ってくると文章もひと味違ってきます。
<文例② 結・起承転形式の文章>
令和に入って地球の温暖化は、ますます深刻化しているかのようだ。
今年の夏も猛暑だった。
毎年、熱中症で倒れる人が続出している。
今年は、アメリカやヨーロッパも異常な高温だった。
結論を前に持って来て、文章を再構成すると文例①にはない「ザワツキ感」が出てきます。結論が最後にない文章は、何となく安定感に乏しくなりますから、テーマによっては余韻をもたらします。
ひと味違う文章とは、ユニークな視点、独自の解釈のある文章にも当てはまる言葉です。
同じことを書くにしても、別の視点から事象を見るという試みは、文章に付加価値を付けることになります。
POV(ポイント・オブ・ビュー)、すなわち視点を変えることで、文章は想像力をかき立てられます。
<文例③ 事実を平板にとらえた文章>
円ドルレートは、本来貿易収支で決まる。
貿易赤字のアメリカは、日本からの輸入品の支払いのためにドルを売って円を買うから、円の値段が上がりドルは安くなる。
しかし、2011年東日本大震災のとき、日本は貿易赤字に陥ったが、それでも円高は進んだ。
為替レートの動きは、市場原理だけでは説明できない。
事実関係をそのまま述べただけなので、あまりエキサイティングなものがありません。
この文章にユニークなPOVを持ち込んでみると、文章はひと味違ってきます。
<文例④ 事実にユニークなPOVを持ち込んだ文章>
円ドルレートは、本来貿易収支で決まる。しかし、2011年東日本大震災のとき、日本は貿易赤字に陥ったが、それでも円高は進んだ。
視点を変えれば、為替レートは市場原理だけでは決まらないということになる。
かつて「有事のドル」といわれたが、現代は「有事の円」だ。
日本が貿易赤字でも、人々には経済危機のときには円という集団心理があるから、非論理的な円高となる。
視点を変えて為替レートを見ることで、市場原理という常識からはみ出た心理学的な結論となりました。
結論が正しいか否かは別として、これで挑戦的かつユニークな文章にはなったと思います。