リーダーはスイスイ、ストレートに偉くなっていくもの。できれば自分もそうでありたい。
だから、挫折や失敗、苦しい経験はできる限りしたくない……。
そんな風に思う人も、少なくないかもしれません。
思えば、社会に出てから私にとっての初めての大きな挫折は、日産自動車時代、アメリカ留学の前に、やらなければいけない英語の勉強と、途方もない量の仕事との両立で、ほとんどノイローゼのような状態になってしまったことでした。
それまでの私は、いろいろな苦しい経験はありながらも、仕事に懸命に向かっていましたし、実績も出していました。
だから、周囲に対しても同じようなことを求めました。
できない人を見ると、「どうしてできないんだ」「なぜやろうとしないんだ」とイライラしたこともありました。
傲慢な若者でした。
しかし、自分がノイローゼになってみて、初めて私はこんな風に思うようになったのです。
「こんなにも自分は弱いのに、どうして人に厳しくできるのか」と。
もしもこのノイローゼ経験がないまま過ごしていたのなら、周囲に厳しく接する、鼻持ちならない自信過剰ないやなヤツになっていたかもしれません。
しかし、自分が挫折を経験できたことで、人の気持ちを思いやれるようになりました。
人の痛みをきちんと理解しなければいけないのだ、ということがわかるようになりました。
そして何よりも、人を許せるようになりました。人に腹を立てることがなくなりました。
人は決して強くない。完璧な人間などいない。
時に弱さを見せることもある。それはあって然るべきであり、当たりまえのことだ、と。
この感覚は、後にリーダーとして人を引っ張っていくときのベースになりました。
この「気づき」を得られたことによって、私のマネジメント力は大きく変わったと思います。
挫折をしたおかげで、リーダーになくてはならない「人の痛みがわかる」という感覚を、手に入れることができたのです。
最終回の課題は
「あなたは人の気持ちを理解するために、普段からどんなことを心がけていますか? そのためには、これまでの自分の経験をどう活かしますか?」です。
本連載は今回をもって終了とさせて頂きます。
一年間の連載でしたが、ここまでお読み頂きありがとうございました。