リーダーシップの身につけ方

リーダーに求められるものとは-18

2016.09.26 公式 リーダーシップの身につけ方 第24回

40 挫折や失敗が人を優しくさせる

リーダーはスイスイ、ストレートに偉くなっていくもの。できれば自分もそうでありたい。
だから、挫折や失敗、苦しい経験はできる限りしたくない……。

そんな風に思う人も、少なくないかもしれません。

思えば、社会に出てから私にとっての初めての大きな挫折は、日産自動車時代、アメリカ留学の前に、やらなければいけない英語の勉強と、途方もない量の仕事との両立で、ほとんどノイローゼのような状態になってしまったことでした。

それまでの私は、いろいろな苦しい経験はありながらも、仕事に懸命に向かっていましたし、実績も出していました。
だから、周囲に対しても同じようなことを求めました。

できない人を見ると、「どうしてできないんだ」「なぜやろうとしないんだ」とイライラしたこともありました。

傲慢な若者でした。

しかし、自分がノイローゼになってみて、初めて私はこんな風に思うようになったのです。
「こんなにも自分は弱いのに、どうして人に厳しくできるのか」と。

もしもこのノイローゼ経験がないまま過ごしていたのなら、周囲に厳しく接する、鼻持ちならない自信過剰ないやなヤツになっていたかもしれません。
しかし、自分が挫折を経験できたことで、人の気持ちを思いやれるようになりました。

人の痛みをきちんと理解しなければいけないのだ、ということがわかるようになりました。
そして何よりも、人を許せるようになりました。人に腹を立てることがなくなりました。

人は決して強くない。完璧な人間などいない。
時に弱さを見せることもある。それはあって然るべきであり、当たりまえのことだ、と。
この感覚は、後にリーダーとして人を引っ張っていくときのベースになりました。

この「気づき」を得られたことによって、私のマネジメント力は大きく変わったと思います。
挫折をしたおかげで、リーダーになくてはならない「人の痛みがわかる」という感覚を、手に入れることができたのです。

最終回の課題は
「あなたは人の気持ちを理解するために、普段からどんなことを心がけていますか? そのためには、これまでの自分の経験をどう活かしますか?」です。

本連載は今回をもって終了とさせて頂きます。
一年間の連載でしたが、ここまでお読み頂きありがとうございました。

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プロフィール

岩田松雄
岩田松雄

1958年生まれ。大阪大学経済学部卒業後、日産自動車株式会社に入社。同社にて幅広い業務を経験後、米国UCLAアンダーソンスクールに留学。その後、外資系コンサルティング会社ジェミニ・コンサルティング・ジャパン、日本コカ・コーラ株式会社役員を経て、株式会社アトラス(ゲーム会社)の代表取締役として、三期連続赤字の企業を再建。さらに株式会社タカラ常務取締役を経て株式会社イオンフォレスト(ザ・ボディショップ)の代表取締役に就任。店舗数を一気に増加させ、売上を67億円から約140億円に拡大。そしてスターバックスコーヒージャパン株式会社のCEOとして「100年後も光輝くブランド」というコンセプトを掲げ、業績を急回復させ再成長させる。これらの功績が認められ、UCLAビジネススクールより全卒業生3万7000人の中から「100 Inspirational Alumni」
('92年卒業生ではただ一人)に選出される。
現在は株式会社リーダーシップ・コンサルティングの代表取締役CEOであり、次世代のリーダー育成に注力する傍らで、立教大学の特任教授として教鞭もとっている。主に「リーダーシップ」に関するテーマにてこれまで著書は30万部を超える『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』はじめ多数。「リーダーシップ」に関する日本の第一人者として日本のビジネス界を牽引する人物である。
HP: http://leadership.jpn.com
Facebook: https://www.facebook.com/Leadership.jpn?pnref=lhc

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