私はこれまでたくさんのリーダーにお会いしてきましたが、とりわけ印象深かった人物に、ザ・ボディショップ創業者のアニータ・ロディックさんがいます。
ザ・ボディショップ発展の背景には、アニータの「世の中には不安につけ込んだ販売が多い、これは道徳に反しているのではないか」という思いがあったといいます。
だからこそ、彼女はウソをつかないビジネスを目指しました。
あらゆるビジネスが「女性」の考え方、すなわち愛、思いやり、直感といった資質で動かされれば、計り知れない改善がもたらされるだろうと。
ザ・ボディショップは、環境保護や人権擁護にも力を入れました。そして、そのアニータの考えが広く受け入れられ、事業は大きく成功しました。
私はザ・ボディショップの社長として、いつもプレッシャーを感じていました。「自分はアニータのような立派な人にはなれない」という思いがあったからです。
ただ、アニータの取り組みを見て、私は「絶対的なレベルは違うけれど、向かっている方向は同じだから」と自分を慰めていました。
そのことは、彼女も気づいてくれていたのだと思います。
アニータは亡くなったとき、数百億円ともいわれる遺産を、自分の娘には残さずに財団に寄付したといいます。生きているときからそう宣言し、自分の本にも書いていました。
彼女は自分のことは経営者ではなく「アクティビスト(社会変革の活動家)」だと言っていました。素晴らしい生き方ですし、それを最後まで貫いた人だと思いました。
世間一般では、成功することは、お金持ちになることや、高い社会的地位を手に入れることだというイメージが持たれています。しかし、本当にそうなのでしょうか。
仮に、人間として正しい行いをせずにお金持ちになったり、高い社会的地位を手に入れたりして、それが本当に成功といえるでしょうか。
生きることの根本の部分をよく考えてみるべきだと思います。
成功は、目指すべきものではないのです。人間的な成長こそが、必要です。
そして、人間的な成長をすること自体が、成功だと思います。
続いて第4回の課題は
「あなたにとっての人間的な成長とはどんなことを指しますか?」です。
(次回に続く)