合理性を重視する若手ですが、一度納得すると期待以上の仕事をするときがあります。それはなぜでしょう。
ある車の部品メーカーの方の事例ですが、いくらみんなが頑張っていても、定時になると即帰宅する若手がいました。
しかしある時期から、部品を製作するために「今日は残業だ!」と自ら率先して頑張り成果を出したのです。
この変化がなぜ起きたのかがとても重要です。それは「やりがい」を感じたからと言うことができます。やりがいとは、その人が「頑張る理由」です。実はやりがいとは、大きく3つの段階に分けることができます。
【やりがいの第1段階「生活やお金のため」】
「なぜ、この仕事をしているのですか?」と聞くと、やりがいのない若手は、必ずこう言います。
「生活のためですよ」
または、
「お金のためです」と。
もちろん、生活のため、お金のために仕事をするのは間違っていません。とはいえ、この仕事においてのやりがいと言うことに関しては、低いと言わざるを得ません。
もっといい処遇の企業や、給料がいいところがあれば、すぐにでも転職する可能性があります。
部品メーカーの若手も、最初はこの意識段階であったと言えます。仕事は定時で終わり、あとはプライベートを充実させることが大事と割り切っていました。
しかし、この意識レベルの若手も仕事を通して、キッカケがあれば、やりがいは徐々に向上していくのです。
【やりがいの第2段階「自己成長」】
それは、「自己成長」です。仕事によって、新しい知識が増えていくのを感じられたり、できなかったことができるようになっていく。つまりスキルアップしていることを実感でき、成果に繋がっていくことで、やりがいは増えていきます。
クラブ活動や勉強でも、いくらやっても伸びない時期があります。しかし、継続することで上手くなったり、勉強も理解できるようになっていくと、その面白さが分かり、「もっと練習しよう」や、「もっと勉強しよう」という気持ちになっていきます。これが「自己成長」を感じられたときです。
先述の若手が取り組んだのは新しい部品の製作でした。難しい課題ではありますが、製作にチャレンジする中で試行錯誤し、自己成長を感じはじめました。
もちろん、持ち前の負けん気の強さも理由になったと思います。そして、ベテラン上司や先輩たちの超一流の知識やスキルを見ることで、さらに自身のレベルアップを図ることができていったのです。
しかし自己成長とは個人の中で完結するものなので、ある程度できるようになると徐々に落ち着いていきます。
やりがいをさらにあげる要因は、別のところにあるのです。
【やりがいの第3段階「貢献」】
それは、「貢献」です。自身が培った知識、スキルが成果となり、「誰かの役に立ったとき」「何かの役に立ったとき」に大きな達成感を得られるのです。自分の仕事がどんな意味を持つのか、そして自分はどんな貢献をするのかを理解したときに、その人の頑張りは、さらに大きなものになります。
人は自分のためよりも、他者のためのほうがやりがいを感じるのです。
例えば、どんなつらい仕事でも、家族のためや、子どものためと考えたほうが、頑張る気持ちが増えていくのではないでしょうか。
部品メーカーの若手が「今日は残業だ!」と叫んだ理由は、どうしても完成させたいという熱い思いが生まれたからです。
それは、高齢者が安全に運転できる車にし、命を守るという目的のためでした。彼には祖父がいましたが、車の運転でヒヤッとしたという経験を何度かきいたことがあり、高齢者の困っていることを理解したそうです。
「自分の力で何とかしてあげたい」。その思いが、仕事を頑張る原動力になったのです。上司や、先輩もまた同じ思いを持って仕事をしています。そのことにより、若手の気持ちも少しずつ変わっていったということです。