誰しも望む未来があります。しかし、その未来を実現できる人は、ひとにぎりだと考えていませんか? そんなことはありません。未来の自分を変えるヒントは、あなた自身の中にあるのです。過去に「目をつけ」「掘り下げて」「引き出す」。このプロセスの繰り返しが、あなたの未来を大きく変えるのです。ここでは、自分自身を「振り返る」ことで見えてくる、あなたが望む未来の導き出し方を紹介していきます。そう、あなたの過去は宝の山なのです。
私たちは、学ぼうとしたら未来と現在と過去のどの時間から学ぶでしょうか。
そう、過去です。学問も知恵も技術も、情報さえも、すべて過去にあります。過去とは、薄皮一枚の現在が次々と堆積していく時間世界なのです。
たとえば、ビジネスでお客さまへの提案をまとめるとしたら、前回の打ち合わせのメモを見返して対策を練ります。自社内の過去の成功事例についてヒアリングをしてみることもあるでしょう。かつてうまくいったプレゼンのときの話し方を思い出して、参考にすることもできます。プレゼンの配布資料は、前回の配布物リストを元に考えることができます。
これらはみな過去の出来事を振り返り、再利用したり、参考にしたりして学んでいる例です。
未来は、到来していないので参照することができません。現在は、瞬き一つで過去になります。私たちがアクセスできるのは過去の知恵しかないのです。
だからこんな風に整理することができます。
「行動できるのは現在」
「学ぶことができるのは過去」
「希望を託すことができるのが未来」
過去を振り返るのは、地下に眠る金・銀・ダイヤモンドの鉱脈や、古代エジプトの宝物を探りあてるために、大地を掘り返すようなものです。
私たちが過去を探求するときには、それと同じように、宝と呼ぶべき「知恵」を探り出すのです。
今はまだ、自分の過去の出来事を振り返っても、宝が掘り出せるということに半信半疑かもしれません。
しかし、こんな事例もあります。
あるお客さまが、仕事が軌道に乗って安定してきたときに、何か満たされないものを感じ始めたと言いました。
「マンネリ化しているのか、まったく人生に刺激がない」
そこで、「刺激があるとき」はどういうときなのか、振り返ってもらいました。
すると若い頃のことを思い出し、当時は性格も弾けており、街に繰り出しては新しいことにチャレンジしていたときのことが思い出されたそうです。
そこで、今からチャレンジして刺激的と感じることは何かを書き出してもらいました。その中で、世界的な有名人と直接会ってみたいという希望が出てきました。
「世界の最先端の情報を、最先端の人から直接聞いてみたい! 会えると思っていなかったが、もしも会えたらとても興奮する!」
そしてそのお客さまは、日常の仕事もこなし、今まで会いたくても会えないと思っていた人に連絡をとってみると共に、最近は、刺激を与え合うような友人と連絡をとれていないことにも気づき、連絡を取ることにしました。
この一連の振り返りにより、人生がぐっと刺激的なものになり、また仕事に邁進することができました。
私たちの希望を具体的な形にしたものが夢です。その夢は美しい花を咲かせる草木の種のようなものです。
「将来、自由にどこへでも旅行できるような暮らしをしたいなぁ」
というのが希望です。自分にとって望ましい価値観です。
それを具体的にすると、次のような未来を描けるかもしれません。
「現在の会社で部長クラスの給料をもらって、企画の仕事をし、お客さまに会うために海外の各地を訪問し、巨大プロジェクトを運営できていたらいいなぁ」
意外に思われるかもしれませんが、日々の暮らしがどうなっているかを具体的に描くことが、「夢を描く」ということです。どこにいて、誰と何をしているのか。それはどういう状況なのかを具体的に描くことができて、初めて「夢」と呼べるのです。それを最近では、「ビジョン」などと呼ぶこともあります。
抽象的な希望を、具体化したものが「夢」です。
しかし、この「夢」は、まだ現実化していません。まだ計画の段階にすらなっていませんので、ちょうど、樹木の「種(たね)」と同じものです。「種」が違えば、育つ樹木の姿も違います。