編集部 新さんは今年の年初に『経営者が絶対に「するべきこと」「してはいけないこと」』を出版され、この7月にアルファポリスからは2冊目となる『仕事と人生を劇的に変える100の言葉』を出版されました。最新刊の「読みどころ」はどんなところでしょうか。
ずばり言うと、原理原則を短い言葉に凝縮したことです。
前回の『経営者が絶対に「するべきこと」「してはいけないこと」』を含め、私はこれまで数々の著作の中でずっと経営の原理原則を追究してきました。
経営とは会社経営だけでなく、大きくは国の運営もまた経営ですし、小さいところでは家庭も経営です。そして自分の人生を成功させるにも、正しい人生の経営が行われていなければならないと考えています。
国も会社も人生も、正しい経営を行っていれば成功するし、間違った経営をすれば失敗します。
では、正しい経営とは何かというと、それは原理原則を守り、実行し続けていくこととなります。
しかし、一口に原理原則といってもその中身は奥が深く、見る人のポジションによっては形も変わって見えるため、説明するにはどんなに簡単に説明しようとしても、ある程度の文章量が必要となってしまいます。
物事は、説明が長くなればなるほどわかりにくくなるものです。
そこで前作では、原理原則を「するべきこと」と「してはいけないこと」という対立する二つの面から捉え、原理原則を立体化することでより読者に分かりやすくしようと試みたわけです。
今回は、原理原則を短い言葉で格言風に表現することで、その真意が読者の記憶に残りやすくなることと、心に染み込みやすくなることを狙ったのです。
短い言葉は覚えやすいですから、仕事でも人生でも迷ったとき、何かにつまずいたときがあったら、そのときに言葉を思い出し、その言葉をきっかけに原理原則の真意を思い出してほしいのです。
編集部 ご本の中で紹介されている100の言葉は、すべて新さんがご体験の中から見つけ出し、考え出した言葉ということですね。
そうです。
本当は100にとどまらず、200も300もあるのですが、今回この本では厳選した100の言葉に絞り込みました。
もちろん、私もいろいろな先人、先輩の言葉に啓発を受けてきましたので、私の100の言葉の中にもそうした先人や先輩の名言が、私の中で熟成し、発展して、私の言葉になったというものも数多くあります。
知識というものは伝承ですから、ゼロから私がつくりました、すべて私のオリジナルというものは、この世に存在しません。
私は、よく「オレが、オレがの『が』を捨てて、おかげ、おかげの『げ』で生きよ」と言っていますが、私の100の言葉もいろいろな人々のおかげといえるでしょう。
ただし、この100の言葉で私が実践しなかったものはひとつもありません。
つまり、この本で紹介した100の言葉とそこにある真理は、すべて借り物ではなく、私の実行によりその効果が証明されている言葉であると自信を持って言えます。
編集部 タイトルに『仕事と人生を劇的に変える100の言葉』とありますが、新さんご自身の人生を変えた言葉というのはありますか。
私の仕事と人生に大きな影響を与えた言葉というのは3つあります。
ひとつは「スピーク・アウト(Speak Out)」、もうひとつは「ファン(Fun)」、3つ目が「自責の風」です。
「スピーク・アウト(Speak Out)」とは率直に物を言う、積極的に発言するという意味です。
この言葉は、私が32歳のときに当時のイギリス人の上司マイク・マクラレン氏がプレゼントしてくれた言葉です。
私は32歳のときに、それまで勤めていた外資系のシェル石油から、同じく外資系の日本コカ・コーラ㈱という会社へ移りました。
いまでは転職はキャリア・アップの一手段として認識され、何も珍しいことではなくなりましたが、私が32歳のころの日本社会では、一つの会社に入ったらそこで一生勤めあげるものという風潮が強い時代でした。いわゆる永年勤続ということです。
それでも私があえて日本コカ・コーラ㈱へ移ることを決心した理由は、コカ・コーラ社に自由闊達な社風を感じたからです。
この会社なら存分に自分の腕が振るえる、思い切り暴れられると思ったのです。
そして入社初日、私が会社に行くと、まず最初にこの「スピーク・アウト」が上司からプレゼントされました。
マクラレン氏は、概ね次のように言いました。
「コングラチュレーション(入社おめでとう)、ミスター・アタラシ。
入社のお祝いに君にプレゼントがある。プレゼントは2つだ。
君はこれから我が社で会議やミーティングに出席することになるが、そのとき最低2回、スピーク・アウト(積極的に発言)すること。
もし、君が会議やミーティングで何も発言しなければ、私を含め列席しているメンバーは、君のことを、物を考える能力がないか、物を考える能力はあっても発言する勇気がない人間だと決めつけることになる」