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恋愛 完結 短編 R15
    ──私の泪は、愛せぬ人しか癒せない。  その街に生まれ継ぐ癒しの聖女には、治癒という呪いが掛けられていた。  人体に触れるだけで、どんな病魔も払い除け全癒する聖女の”泪”。  ──その泪に含まれるのは、聖女自身の生命力。  故に、治癒とは聖女の寿命を分け与えることであり、彼女達にとっては呪いだったのだ。  主人公イリスも、聖女の一人。  泪のほとんどを使い果たし、十九歳の若さで虫の息だった。  僅かなる余生は、高貴崇高な公爵貴族ローランド家の子供を身籠り、次世代の聖女を残すのみ。  そんなイリスには、たった一つだけ心残りがあった。    ──義弟エリクの虚弱体質を治癒できないこと。  エリクは、癒しの力を授からず、ローランド家の子供でないことから、悪魔の子と呼ばれ、忌み嫌われていた。  ──だけどイリスにとって、世界で一番治癒したい宝物だった。  イリスがローランド家に掛け合うも、認められず、二人は物置小屋に幽閉される。  使命の放棄、聖女の恥だと、ローランド家子息のリューク、その恋人のニーナからの暴虐の嵐が降り注ぐ。  ──本当に愛する人だけを癒せないまま、死ぬしかないのか。  イリスは、夢を見る。  先代の聖女、母親との夢。    息も絶え絶えの母は、幼き私を見て、確かにこう言った。  ──悲劇は幸福の伏線でなければならない、と。
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文字数 25,429 最終更新日 2022.12.24 登録日 2022.12.24
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