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隙のない檜山の意外な弱点。あれから俺は檜山をどこか意識してしまっていた。
腕の中で震えていた姿は、思い出すほど可愛く思えて。もし付き合えたら、あれが自分のものにできるのかなどと、つい考えていた。
しかし、悲しいほどに、檜山はいつも通りだった。
◇
「隙が…全くない…」
パソコンのモニタに映った仕事のデータを眺めながら、ため息をついた。
たまたまあの日に檜山の弱点を知ってしまっただけで、普段の檜山には相変わらず口説く隙など全くないのだ。
なんとか用事を作って話しかけても、広がるのは仕事に関する話題ばかり。ここ数日で、何度『真面目かよ…!』と心の中でツッコんだことか。
いや、まぁ、仕事の話を一生懸命してるトコも可愛いけど。ただ、それって前と何も変わらない訳で。
あいつ昔からそうなんだよな。周りの男がいくら好意を寄せていても、眼中にもないというか、全くそういう雰囲気にならないというか。
口説いたところで玉砕だろうな…
最悪、二度と話しかけられなくなる恐れすらありそうだ。
「はぁ…」
溜め息をついて、ノートパソコンの電源を切るとそのまま閉じた。
新人の頃は、外見が可愛いなって思っただけだった。檜山のことよく知らなかったし、同期たちが玉砕していくのを見て、芽生えかけた恋愛感情はあっさり消せた。
だけど今は、檜山の色んな面を知ってる。この5年の間に築けた信頼は、俺に余計な恋愛感情がなかったから得たものだ。
好きだって気持ちをぶっちゃけて玉砕したら、それも失うのか。
「あー、もう。ぐだぐだ考えすぎ。帰ろ」
今日は金曜。帰ってちょっといい酒でも飲んで、とりあえずこの件は先送りだ。
そう思って、エントランスまで降りて絶望した。
「雨かよ…。傘持ってねーし…」
確かに朝の天気予報で今夜は雨だと言っていた気がする。
走って帰るか…、と思った瞬間。
空が光って、雷が落ちた。
え…
あいつ、こういう日どうしてんの…?
腕の中で震えていた姿は、思い出すほど可愛く思えて。もし付き合えたら、あれが自分のものにできるのかなどと、つい考えていた。
しかし、悲しいほどに、檜山はいつも通りだった。
◇
「隙が…全くない…」
パソコンのモニタに映った仕事のデータを眺めながら、ため息をついた。
たまたまあの日に檜山の弱点を知ってしまっただけで、普段の檜山には相変わらず口説く隙など全くないのだ。
なんとか用事を作って話しかけても、広がるのは仕事に関する話題ばかり。ここ数日で、何度『真面目かよ…!』と心の中でツッコんだことか。
いや、まぁ、仕事の話を一生懸命してるトコも可愛いけど。ただ、それって前と何も変わらない訳で。
あいつ昔からそうなんだよな。周りの男がいくら好意を寄せていても、眼中にもないというか、全くそういう雰囲気にならないというか。
口説いたところで玉砕だろうな…
最悪、二度と話しかけられなくなる恐れすらありそうだ。
「はぁ…」
溜め息をついて、ノートパソコンの電源を切るとそのまま閉じた。
新人の頃は、外見が可愛いなって思っただけだった。檜山のことよく知らなかったし、同期たちが玉砕していくのを見て、芽生えかけた恋愛感情はあっさり消せた。
だけど今は、檜山の色んな面を知ってる。この5年の間に築けた信頼は、俺に余計な恋愛感情がなかったから得たものだ。
好きだって気持ちをぶっちゃけて玉砕したら、それも失うのか。
「あー、もう。ぐだぐだ考えすぎ。帰ろ」
今日は金曜。帰ってちょっといい酒でも飲んで、とりあえずこの件は先送りだ。
そう思って、エントランスまで降りて絶望した。
「雨かよ…。傘持ってねーし…」
確かに朝の天気予報で今夜は雨だと言っていた気がする。
走って帰るか…、と思った瞬間。
空が光って、雷が落ちた。
え…
あいつ、こういう日どうしてんの…?
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