【完結】雷の夜に

緑野 蜜柑

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隙のない檜山の意外な弱点。あれから俺は檜山をどこか意識してしまっていた。

腕の中で震えていた姿は、思い出すほど可愛く思えて。もし付き合えたら、あれが自分のものにできるのかなどと、つい考えていた。

しかし、悲しいほどに、檜山はいつも通りだった。



「隙が…全くない…」

パソコンのモニタに映った仕事のデータを眺めながら、ため息をついた。

たまたまあの日に檜山の弱点を知ってしまっただけで、普段の檜山には相変わらず口説く隙など全くないのだ。

なんとか用事を作って話しかけても、広がるのは仕事に関する話題ばかり。ここ数日で、何度『真面目かよ…!』と心の中でツッコんだことか。

いや、まぁ、仕事の話を一生懸命してるトコも可愛いけど。ただ、それって前と何も変わらない訳で。

あいつ昔からそうなんだよな。周りの男がいくら好意を寄せていても、眼中にもないというか、全くそういう雰囲気にならないというか。

口説いたところで玉砕だろうな…
最悪、二度と話しかけられなくなる恐れすらありそうだ。

「はぁ…」

溜め息をついて、ノートパソコンの電源を切るとそのまま閉じた。

新人の頃は、外見が可愛いなって思っただけだった。檜山のことよく知らなかったし、同期たちが玉砕していくのを見て、芽生えかけた恋愛感情はあっさり消せた。

だけど今は、檜山の色んな面を知ってる。この5年の間に築けた信頼は、俺に余計な恋愛感情がなかったから得たものだ。

好きだって気持ちをぶっちゃけて玉砕したら、それも失うのか。

「あー、もう。ぐだぐだ考えすぎ。帰ろ」

今日は金曜。帰ってちょっといい酒でも飲んで、とりあえずこの件は先送りだ。

そう思って、エントランスまで降りて絶望した。

「雨かよ…。傘持ってねーし…」

確かに朝の天気予報で今夜は雨だと言っていた気がする。

走って帰るか…、と思った瞬間。

空が光って、雷が落ちた。


え…
あいつ、こういう日どうしてんの…?
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【完結】とびきりの幸せを、君に (R18)



本作の脇役、村瀬の友人の神島の恋愛ストーリーはpixivで随時更新中です(R18)。
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