【完結】とびきりの幸せを、君に

緑野 蜜柑

文字の大きさ
上 下
17 / 18

2-4. 嘘 (番外編) *

しおりを挟む
樫木先輩の違和感に気付いたのはそれから少し後のことだった。

「んん…ッ、あ…っ、ふ…、んぅ…っ」

声を漏らして身体も反応してはいるが、なんだか少し様子がおかしい。

いつもなら、とっくに絶頂を迎えている。なのに今日の彼女は、昇りかけたまま最後の一波を迎えられないように見えた。

「結菜さん…?」
「ん…っ、ごめ…ん…っ、あの…」

戸惑う彼女の顔をこちらを向かせて頬を撫でる。体調でも悪いのだろうか。

「もし体調が悪いようなら、今日はここでやめましょうか?」
「え…っ、あ…、待って…っ」

繋がったソコから自身を引き抜こうとすると、先輩がそれを制止した。

「だ、大丈夫…、続けて…!」
「いや、でも…、なんか様子、変ですよね」

体調が悪いなら無理に続ける必要はない。樫木先輩に無理をさせて、俺だけ気持ちよくなるような抱き方をしたって意味がない。

「あの…、もっと…その、近くで…」
「え…?」

樫木先輩が言いづらそうに俺を見る。

「結菜さん…?」
「体調は問題なくて…、後ろからだと…、千寿ちひろくんが遠くて…、うまく…、イけなかったっていうか…」

そこまで言うと、先輩は真っ赤になった顔を手で隠した。

「え…?」

思わず聞き返す。遠い…? だってバックが好きだったのでは…?

「もしかして、バック、嫌でした…?」
「い、嫌ではないんだけど…、その、千寿ちひろくんの腕の中でしてもらうのが、好きというか…」

それを聞いて、水原部長のあの言葉は、嘘だったと気付く。挑発されて、俺はまんまと踊らされていたみたいだ。

あの人、マジで許せないんだが…
そして、俺も、アホすぎる…

千寿ちひろくん…? ぅわ…っ!」

彼女の身体の向きを変え、正常位で向き合う。腕の中に閉じ込めて、唇を重ねた。

「んん…っ、ふ…っ」

繋がったナカが、キュウ…と俺を締め付ける。あの人の言葉に翻弄されて、今日は彼女をちゃんと見れていなかった気がする。

唇を少し離して、至近距離で樫木先輩を見つめる。キスが嬉しかったのだろうか。少しはにかんだ顔が可愛い。

「なんか、すみませんでした…」
「…? なんで千寿ちひろくんが謝るの…?」
「まぁ、色々…」

俺は水原部長より若くてまだガキだけど、焦って見失わないようにしたい。腕の中の何よりも大切なものを。

「僕の腕の中で、抱き直させてください」

そう言って、もう一度、唇を重ねる。欲しがるみたいに彼女の腰が押し付けられて、愛しさに胸が熱くなった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あなたは私を愛さない、でも愛されたら溺愛されました。

桔梗
恋愛
結婚式当日に逃げた妹の代わりに 花嫁になった姉 新郎は冷たい男だったが 姉は心ひかれてしまった。 まわりに翻弄されながらも 幸せを掴む ジレジレ恋物語

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

結婚目前で婚約破棄された私を救ってくれたのは、競合会社の御曹司でした

鳴宮鶉子
恋愛
結婚目前で婚約破棄された私を救ってくれたのは、競合会社の御曹司でした

何も言わないで。ぎゅっと抱きしめて。

青花美来
恋愛
【幼馴染×シークレットベビー】 東京に戻ってきた私には、小さな宝物ができていた。

スパダリな彼はわたしの事が好きすぎて堪らない

鳴宮鶉子
恋愛
頭脳明晰、眉目秀麗、成績優秀なパーフェクトな彼。 優しくて紳士で誰もが羨む理想的な恋人だけど、彼の愛が重くて別れたい……。

【完結】誰にも知られては、いけない私の好きな人。

真守 輪
恋愛
年下の恋人を持つ図書館司書のわたし。 地味でメンヘラなわたしに対して、高校生の恋人は顔も頭もイイが、嫉妬深くて性格と愛情表現が歪みまくっている。 ドSな彼に振り回されるわたしの日常。でも、そんな関係も長くは続かない。わたしたちの関係が、彼の学校に知られた時、わたしは断罪されるから……。 イラスト提供 千里さま

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

LOVE marriage

鳴宮鶉子
恋愛
LOVE marriage

処理中です...