【完結】とびきりの幸せを、君に

緑野 蜜柑

文字の大きさ
18 / 18

2-5. 腕の中で(番外編) *

しおりを挟む
「結菜さん…」
「ふぁ…、ん…っ」

ゆっくりと腰を動かしながら、腕の中の樫木先輩に優しく唇を重ねる。柔らかい感触を味わいながら、少しずつキスを深くする。

千寿ちひろく…、んん…っ」

控え目に、だけど受け身ではなく確かに応えてくれる彼女に、求めるように舌を絡めていく。奥まで繋がったソコがキュウっと締め付けてくるのが、愛しい。

「んん…っ」

俺の髪に樫木先輩の指が触れて、少しだけ唇を離す。

「ち、千寿ちひろくん…、な、なんかいつもより…、キスが、長い…」

紅潮した顔で先輩が俺を見上げる。恥ずかしそうではあるが、同時に、嬉しそうでもある。この表情は下半身にクるなと思いながら、俺は彼女の頬を両手で包んだ。

「結菜さん、多分こういうキス好きだろうなって思って」
「え…?」
「結菜さんのココも、さっきから、僕の事、すごい締め付けてますし」
「な…っ!」
「あ、ほら。今も」
「─…っ!?」

彼女が何を好きかなんて、考えてみれば簡単なことだった。だって、腕の中にいるときの彼女は、こんなにも素直に俺に感じてくれる。

それが過去に他の誰かに向けられていたとしても、もう大丈夫な気がした。だって、今、彼女が想いを向けてくれているのは、俺なのだと信じられる。

「あー…、なんか僕、こんな幸せでいいんですかね…」
「え、どうしたの、急に…」

樫木先輩が不思議そうな顔をする。その顔が可愛くて、もう一度キスをする。

「あの…、千寿ちひろくん…?」

赤い顔をして、彼女が俺を見る。

「そろそろ…、その…」

そこまで言って言葉をつぐんだ彼女のソコは、痛いぐらいに俺を締め付けていた。

「そんな煽ると、知りませんけど…」
「だ、だって…!」
「まぁ、可愛すぎて、僕も限界ですけどね」

そう微笑すると、俺は再度、樫木先輩にキスをして、腰の動きを速めた。



「あぁ…ッ、千寿ちひろく…っ、待って、また、イっちゃ…っ、あぁ─…ッ!!」

抱き締めた腕の中で、樫木先輩が絶頂を迎える。ビクビクと震える腰を引き寄せて、抜けないように深く自身を押し付ける。

「さっきまでが嘘みたいに、簡単にイキますね…」
「あぁ…っ、動くの、待…っ、まだ、イって…っ、ふぁ…ッ!」
「…煽ったのは、結菜さんですよ…」

収縮するナカを味わいながらピストンを続ける。泣き出しそうな声で必死に感じる樫木先輩が可愛くて、ただ夢中に腰を振る。

「ひぁ…ッ! だめ…っ、ああぁ…ッ!」
「ハァ…、結菜さん、舌出して…」
「ふぁ…ッ、あぁん…っ、んん…ッ!」

喘ぎながら従順に口を開ける彼女に、深く唇を重ねる。痙攣するようにビクビクと震える身体を抱きしめて、俺は数回腰を打ち付けると、そのまま欲を吐き出した。



「…10階、ですよね」
「あぁ、すまない」

次の日、俺はなぜかまた水原部長と二人きりでエレベーターで鉢合わせていた。

樫木先輩がバックが好きだなんていう嘘の挑発をされたことにまだ怒りはあったが、真に受けた俺もバカだったし、それは腹に飲み込んだ。

「僕のアドバイスは、役に立ったかい?」

しれっとそう聞いてくる水原部長に、まぁ、無言では逃がしてくれないよなと、微笑する。

「そうですね。おかげさまで」

振り返ってそう答えると、彼は意外そうな顔をして俺を見た。

「なんすか、その顔…」
「いや…、結菜が選ぶだけはあるなと…」
「…意味わかんないんすけど…」

そう言った俺を見て、水原部長は可笑しそうに笑った。

「なに笑ってるんすか」
「あっさり結菜に捨てられてくれれば良かったのに」

さらっと嫌味を言う水原部長に、今日は大人な態度を保つつもりが、つい「この野郎…」と思う。やっぱりこの人は嫌いだ。

「…結菜は、君で良かったと思うよ」
「え…」

水原部長はまっすぐ俺の目を見て穏やかな顔でそう言うと、扉が開いたエレベーターを出ていった。

認められたということだろうか…? まぁ、あの人に認められる必要は微塵もないのだが。

それにしても…
あの人はなぜあんなにも格好いいのか。俺に対しても飄々としたあの態度。俺なんかより全然大人で、勝てないなと思う。

この人が相手で樫木先輩はなんで俺を選んでくれたのだろうと改めて思いながら、目を瞑って彼女の言葉を思い出す。

" 幸野くんが、いいのよ "

…うん。そうだった。初めて身体を重ねたあの夜、彼女はそう言ってくれた。

" 実は小心者よね、幸野くんって "

そんな言葉も言っていたなと笑う。余裕なフリをしても、樫木先輩のことになると、俺は結局、余裕なんてないのだ。

樫木先輩の笑顔が浮かぶ。このままの俺を、彼女は好きになってくれた。なにも焦る必要はない。

ただ、願わくは、彼女の隣が釣り合うように、俺は俺なりに少しでも格好良くいようと心に決めたのだった。


-End-
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

嘘をつく唇に優しいキスを

松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。 桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。 だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。 麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。 そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。

ハイスペックでヤバい同期

衣更月
恋愛
イケメン御曹司が子会社に入社してきた。

自信家CEOは花嫁を略奪する

朝陽ゆりね
恋愛
「あなたとは、一夜限りの関係です」 そのはずだったのに、 そう言ったはずなのに―― 私には婚約者がいて、あなたと交際することはできない。 それにあなたは特定の女とはつきあわないのでしょ? だったら、なぜ? お願いだからもうかまわないで―― 松坂和眞は特定の相手とは交際しないと宣言し、言い寄る女と一時を愉しむ男だ。 だが、経営者としての手腕は世間に広く知られている。 璃桜はそんな和眞に憧れて入社したが、親からもらった自由な時間は3年だった。 そしてその期間が来てしまった。 半年後、親が決めた相手と結婚する。 退職する前日、和眞を誘惑する決意をし、成功するが――

溺婚

明日葉
恋愛
 香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。  以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。  イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。 「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。  何がどうしてこうなった?  平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

雪の日に

藤谷 郁
恋愛
私には許嫁がいる。 親同士の約束で、生まれる前から決まっていた結婚相手。 大学卒業を控えた冬。 私は彼に会うため、雪の金沢へと旅立つ―― ※作品の初出は2014年(平成26年)。鉄道・駅などの描写は当時のものです。

数合わせから始まる俺様の独占欲

日矩 凛太郎
恋愛
アラサーで仕事一筋、恋愛経験ほぼゼロの浅見結(あさみゆい)。 見た目は地味で控えめ、社内では「婚期遅れのお局」と陰口を叩かれながらも、仕事だけは誰にも負けないと自負していた。 そんな彼女が、ある日突然「合コンに来てよ!」と同僚の女性たちに誘われる。 正直乗り気ではなかったが、数合わせのためと割り切って参加することに。 しかし、その場で出会ったのは、俺様気質で圧倒的な存在感を放つイケメン男性。 彼は浅見をただの数合わせとしてではなく、特別な存在として猛烈にアプローチしてくる。 仕事と恋愛、どちらも慣れていない彼女が、戸惑いながらも少しずつ心を開いていく様子を描いた、アラサー女子のリアルな恋愛模様と成長の物語。

処理中です...