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第二章 中西真紀

四階の部屋のチャイムを鳴らす

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  イライラして勢いよく階段を駆け上ったわたしは今、四階の二号室の部屋の前にいる

  四階の廊下には誰もいなくてシーンと静まり返っている。

  わたしは二号室の玄関のドアに耳を近づけ中の様子をうかがう。だけど、物音一つしない。さっきまであんなにうるさかったのに変だなと思う。

  チャイムを鳴らそうかなと考える。あれだけうるさくされたのだから文句を言わなければ気が済まない。

 わたしは勇気を出して玄関チャイムを鳴らす。しばらく待つが返事はない。絶対に部屋の中に居るはずなのに。

 ピンポーンピンポーンと何度かチャイムを鳴らす。だけど、やはり返事はない。これは居留守を使っているのだな。そう思うと頭にきた。

  わたしは玄関のドアをドンドンドンドンと叩いた。だけど、やはり返事はない。

  イライラしたわたしは玄関チャイムをもう一度鳴らす。だけど、やはり返事はない。ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンと何度も鳴らすが返事はない。

  玄関のドアをもう一度ドンドンドンドンと叩くがやはり返事はない。

  絶対に部屋の中に居るはずなのに居留守を使うなんて頭にくる。

  だけど、他の部屋の人が出てきて何か言われるのも面倒だなと思い諦め部屋に戻ることにした。



  部屋に戻ってもイライラは止まらない。頭にくる。

わたしは床に落っこちている卒業アルバムを拾い上げ思いっきり壁に投げつけた。卒業アルバムは壁にぶつかりそして床に転がり落ちた。

  興奮してハアハアと息が荒くなる。わたしの息はハアハアと息が荒くなる。

  少し落ち着くとわたしは何をやっているのかなとおかしくなり笑ってしまった。

  わたしも馬鹿だよね。上の階の玄関のドアをドンドン叩くなんてね。

  そんなことを考えているとふと床に落っこちている卒業アルバムが目に入った。

  なんだか卒業アルバムが寂しげにわたしを見ているような錯覚に陥りそうになる。

「八つ当たりしてごめんなさい」

  わたしは卒業アルバムに謝った。



  もちろん卒業アルバムは返事なんてしないけれど、ごめんなさいと謝ると心がほんの少し落ち着いた。

  いつまでも過去にとらわれたくない。あの時こうしていれば良かったと思っても過去は通り過ぎてしまったのだからどうすることもできない。

  わたしは前を向いて歩いていたはずなのに……。

  さや荘に引っ越してきてからなぜだかあの悪魔に支配されていた嫌な過去を思い出す。田本和子の歪んだ顔と麗奈の悲しそうな顔とそれから由美の怯えた顔が頭に浮かんでくる。

  わたしは疲れたのでベッドの上にごろりと寝転がる。すると眠りの世界におちていた。

  夢の中では由美とほのかの優しい笑顔に会えた。その笑顔が懐かしくてあの頃の楽しかった思い出がふわりと溢れてきて幸せな気持ちになった。

  由美とお弁当の中身を交換っこした。

  由美の卵焼きはふんわりと甘くて美味しかった。由美もわたしの唐揚げを食べて笑顔になった。そんなわたし達をほのかはニコニコと笑い眺めていた。

  キラキラと輝く思い出にわたしの心は温かくなった。

  しばらくの間その懐かしい思い出に浸っていたのだけど……。
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