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第二章 中西真紀
黒くなった
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「中西さんのお部屋の上の階に住んでる方からしばらく留守にすると連絡があったんですよね。もう帰ってきたのかな? 確認してみますね」
「はい、お願いします」
引っ越してきたばかりなのでもう少し我慢した方が良いかなとは思ったけれどあまりにもドスンドスンドンドンとうるさかったのだから言って良かったよねとわたしは自分に言い聞かせた。
そして、わたしは森口さんの顔をチラリと見た。森口さんはブツブツと何やら呟いているようだ。
「森口さんどうかしたんですか?」
「あ、いえ何でもありませんよ」
強張っていた森口さんの表情はふわりと和らぎいつもの可愛らしい笑顔が戻ってきた。
だけど、なんだか違和感を感じた。きっと気のせいだ。
「森口さん、モーニングセット美味しかったですよ。明日もよろしくお願いします」
と言ってわたしは笑顔を浮かべカフェの扉を開き外に出た。
秋の穏やかな風が吹いていた。
部屋に戻り玄関のドアを開けた。
わたしが投げつけた卒業アルバムが床に転がっていた。嫌だなと思いながらわたしは卒業アルバムを拾い上げ本棚に戻した。
あの卒業アルバムには嫌な思い出がある。
わたしは田本和子に言われて麗奈の顔写真を黒マジックで塗りつぶした。麗奈の顔が真っ黒になるのと同時にわたしの心が真っ黒になったと感じた。
わたしが黒マジックで麗奈の顔写真を塗りつぶしていたその時、視線を感じた。その視線に振り返ると由美の怯えたような目がわたしをじっと見ていた。
あの時の由美の怯えた目も思い出したくない。真紀ちゃん助けてと訴えているような由美の目も思い出したくない。
だから、わたしは中学時代の親友だった由美と連絡を取り合っていなかったことを思い出した。
なんだか不思議だ。このさや荘に引っ越してきてからあの頃の記憶が蘇ってくるなんて……。
そんなことを考えていると……。
ドスンドスンドンドンドスンドスンドンドンドンドンドスンドスンドンドンドスンと上の階から大きな音が鳴り響いてきた。
そして、カタンと部屋の中で音がした。何かが落ちてきたのかなと振り返ると卒業アルバムが床に落ちていた。
どうして卒業アルバムだけ本棚か落下するのだろうか?
ドスンドスンドンドンドンドスンドスンドンドンと今も尚、上の階から大きな音が聞こえてくる。
うるさい、うるさいよ。
ドスンドスンドンドンドンドスンドスンドンドンドン。
だからうるさいんだってば!
ドスンドスンドンドンドンドンドンドスンドスンドスンドスンドン。
うるさい、うるさい、だから、うるさいんだってば!
ドンドンドンドスンドスンドスンドンドンドン。
「うるさいんだってば~」
わたしはイライラして大声で叫んだ。
なのに尚もドンドンドンドンドスンドスンと上の階から大きな音が鳴り響いてくる。
もう我慢できない。
「はい、お願いします」
引っ越してきたばかりなのでもう少し我慢した方が良いかなとは思ったけれどあまりにもドスンドスンドンドンとうるさかったのだから言って良かったよねとわたしは自分に言い聞かせた。
そして、わたしは森口さんの顔をチラリと見た。森口さんはブツブツと何やら呟いているようだ。
「森口さんどうかしたんですか?」
「あ、いえ何でもありませんよ」
強張っていた森口さんの表情はふわりと和らぎいつもの可愛らしい笑顔が戻ってきた。
だけど、なんだか違和感を感じた。きっと気のせいだ。
「森口さん、モーニングセット美味しかったですよ。明日もよろしくお願いします」
と言ってわたしは笑顔を浮かべカフェの扉を開き外に出た。
秋の穏やかな風が吹いていた。
部屋に戻り玄関のドアを開けた。
わたしが投げつけた卒業アルバムが床に転がっていた。嫌だなと思いながらわたしは卒業アルバムを拾い上げ本棚に戻した。
あの卒業アルバムには嫌な思い出がある。
わたしは田本和子に言われて麗奈の顔写真を黒マジックで塗りつぶした。麗奈の顔が真っ黒になるのと同時にわたしの心が真っ黒になったと感じた。
わたしが黒マジックで麗奈の顔写真を塗りつぶしていたその時、視線を感じた。その視線に振り返ると由美の怯えたような目がわたしをじっと見ていた。
あの時の由美の怯えた目も思い出したくない。真紀ちゃん助けてと訴えているような由美の目も思い出したくない。
だから、わたしは中学時代の親友だった由美と連絡を取り合っていなかったことを思い出した。
なんだか不思議だ。このさや荘に引っ越してきてからあの頃の記憶が蘇ってくるなんて……。
そんなことを考えていると……。
ドスンドスンドンドンドスンドスンドンドンドンドンドスンドスンドンドンドスンと上の階から大きな音が鳴り響いてきた。
そして、カタンと部屋の中で音がした。何かが落ちてきたのかなと振り返ると卒業アルバムが床に落ちていた。
どうして卒業アルバムだけ本棚か落下するのだろうか?
ドスンドスンドンドンドンドスンドスンドンドンと今も尚、上の階から大きな音が聞こえてくる。
うるさい、うるさいよ。
ドスンドスンドンドンドンドスンドスンドンドンドン。
だからうるさいんだってば!
ドスンドスンドンドンドンドンドンドスンドスンドスンドスンドン。
うるさい、うるさい、だから、うるさいんだってば!
ドンドンドンドスンドスンドスンドンドンドン。
「うるさいんだってば~」
わたしはイライラして大声で叫んだ。
なのに尚もドンドンドンドンドスンドスンと上の階から大きな音が鳴り響いてくる。
もう我慢できない。
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