上 下
37 / 66
シーサーたんと怪獣界のお父ちゃまとミケネコーン

6 ミケネコーンはどこにいるの?

しおりを挟む

  翌朝目が覚めるとミケネコーン用のベッド(飼い猫のミケナが使っていた水玉模様の涼しげな柄)にミケネコーンのその姿はなかった。

「ミケネコーンちゃん、どこにいるの~?」

  名前を呼んでみたが返事はなかった。

  わたしは、心配になりベッドの下やクローゼットの中や机の引き出しの中まで覗いた。けれどミケネコーンの姿はない。

  いなくなってしまったミケナのことを思い出し不安な気持ちになるのと同時にミケネコーンは怪獣界からやって来たことを思い出した。

  ミケネコーンちゃんは預かっているだけなんだ……。食いしん坊でワガママだけどいつの間にか大切な存在になっていることに気がついた。

  底知れぬ食欲でむしゃむしゃにゃんと食べまくる。気持ちのいい食べっぷり。ポロポロこぼしてかりゆしシャツも食べ物でベタベタにするけどね。

「ミケネコーンちゃん、どこにいるの?」

  やっぱり返事はない。

  わたしは、もしかしたら一階にいるのかなと思い部屋を出て階段を下りた。

  すると……。


  
  居間に行くと話し声が聞こえてきた。部屋の中を覗くと、かりゆしシャツ姿のミケネコーンがいた。

  そして、「めちゃ旨ですにゃん、ミケネコーンは幸せですにゃん」と言ってバナナをむしゃむしゃにゃんと食べている姿が見えた。

  なんだ、居間にいたんだ良かったとホッとしたのと同時に呑気にバナナなんて食べているミケネコーンを見ていると心配した自分が馬鹿みたいに思えてきた。

「あ、夏花~おはようですにゃん!」

  ミケネコーンはわたしに気づきにゃぱにゃぱと朝の挨拶をした。

「あ、おはよう、ミケネコーンちゃん」

  わたしは、あははっと笑いながら居間に入り椅子に座った。

「夏花もバナナをむしゃむしゃにゃんと食べますかにゃん?」

「あ、うん……」

「うにゃん?  夏花ってば元気がないですがどうしたんですかにゃん?」

  ミケネコーンは心配そうに眉間に皺を寄せた。その表情を見るとミケネコーンは何も悪くない。わたしが心配しただけだと思い笑顔を作った。

「大丈夫、元気だよ~わたしもバナナ食べようかな?」

「にゃはにゃはにゃん。バナナめちゃ旨ですにゃん!」

  ミケネコーンはそう言って小さな体でテーブルの上にあるバナナをうんしょと持ち上げて、わたしに渡した。

「ミケネコーンちゃん、ありがとう」

  わたしは、バナナを笑顔で受け取った。この日食べたバナナはとても美味しかった。

  
  バナナを食べ終えると、お母さんが用意してくれた目玉焼きとウインナーの朝食を食べた。

「めちゃくちゃ美味しいですにゃん。ミケネコーンは目玉焼きもウインナーも大好きですにゃん」

  ミケネコーンはそれはもう幸せそうな表情でむしゃむしゃにゃんと食べている。そんなミケネコーンを見ていると、なんだか微笑ましくて幸せな気持ちになる。

「ミケネコーンちゃんは食べることが好きなんだね」

  わたしは、ウインナーを口に運びながらうふふと笑った。

「はいにゃん。ミケネコーンはむしゃむしゃにゃんとご飯を食べている時間が幸せですにゃん」

  そう答えたミケネコーンの口の周りはお決まりのようにケチャップまみれになっていた。

「ミケネコーンちゃん!  口の周りにケチャップがくっついているよ~」

  わたしは、言いながら紙ナプキンでミケネコーンの口の周りを拭いてあげた。

「夏花、ありがとうですにゃん」

  ミケネコーンはお礼を言ってにゃぱにゃぱにゃんと笑った。

  そんなミケネコーンが妹のように思えてきた。あ、弟だった。あははっ、なんだか可笑しいや。わたしがクスクスと笑っていると、

「夏花?  どうしたんですかにゃん?」

  ミケネコーンは不思議そうに首を傾げた。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔法少女はまだ翔べない

東 里胡
児童書・童話
第15回絵本・児童書大賞、奨励賞をいただきました、応援下さった皆様、ありがとうございます! 中学一年生のキラリが転校先で出会ったのは、キラという男の子。 キラキラコンビと名付けられた二人とクラスの仲間たちは、ケンカしたり和解をして絆を深め合うが、キラリはとある事情で一時的に転校してきただけ。 駄菓子屋を営む、おばあちゃんや仲間たちと過ごす海辺の町、ひと夏の思い出。 そこで知った自分の家にまつわる秘密にキラリも覚醒して……。 果たしてキラリの夏は、キラキラになるのか、それとも? 表紙はpixivてんぱる様にお借りしております。

がらくた屋 ふしぎ堂のヒミツ

三柴 ヲト
児童書・童話
『がらくた屋ふしぎ堂』  ――それは、ちょっと変わった不思議なお店。  おもちゃ、駄菓子、古本、文房具、骨董品……。子どもが気になるものはなんでもそろっていて、店主であるミチばあちゃんが不在の時は、太った変な招き猫〝にゃすけ〟が代わりに商品を案内してくれる。  ミチばあちゃんの孫である小学6年生の風間吏斗(かざまりと)は、わくわく探しのため毎日のように『ふしぎ堂』へ通う。  お店に並んだ商品の中には、普通のがらくたに混じって『神商品(アイテム)』と呼ばれるレアなお宝もたくさん隠されていて、悪戯好きのリトはクラスメイトの男友達・ルカを巻き込んで、神商品を使ってはおかしな事件を起こしたり、逆にみんなの困りごとを解決したり、毎日を刺激的に楽しく過ごす。  そんなある日のこと、リトとルカのクラスメイトであるお金持ちのお嬢様アンが行方不明になるという騒ぎが起こる。  彼女の足取りを追うリトは、やがてふしぎ堂の裏庭にある『蔵』に隠された〝ヒミツの扉〟に辿り着くのだが、扉の向こう側には『異世界』や過去未来の『時空を超えた世界』が広がっていて――⁉︎  いたずら好きのリト、心優しい少年ルカ、いじっぱりなお嬢様アンの三人組が織りなす、事件、ふしぎ、夢、冒険、恋、わくわく、どきどきが全部詰まった、少年少女向けの現代和風ファンタジー。

左左左右右左左  ~いらないモノ、売ります~

菱沼あゆ
児童書・童話
 菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。 『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。  旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』  大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。

獣人ディックと赤ずきんちゃん

佐倉穂波
児童書・童話
「赤ずきん」の物語を読んでトラウマになった狼の獣人ディックと、ほんわかしてるけど行動力のある少女リリアの物語。  一応13話完結。

【完結】三毛猫みぃのお家

たまこ
児童書・童話
三毛猫みぃと家族との、ちいさくて、やさしい日常。 ※『君たちへの処方箋』にて三毛猫みぃ再登場しています

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

三毛猫みー子の話

永山もか
児童書・童話
とある三毛猫:みー子の(本猫にとっては)長い一日と、(本猫にとっては)大冒険のお話です。 猫好きさんはもちろん、そうでない人にも楽しんでいただけたら幸いです。 ※カテゴリをとても迷いました。子ども向けに書いているわけではないけれど童話風味ではある、という感じです。 ※表紙は我が家の猫です。みー子のモデルになった部分もあったりなかったり。

ツバメに乗った妖精さんのお話

乙原ゆん
児童書・童話
春の女神さまに仕える妖精さんたちにまつわるお話 1.ネコのルルとツバメに乗った妖精さん ある春の日、蝶々に心引かれてお庭に出た家猫のルルは一人の妖精に出会いました。 猫の小さな冒険と、妖精さんの出会いのお話。 2.イブキとハルトとサクラの木 ルルと別れたイブキとハルトでしたが、イブキがルルが家に帰るところまで見守りたいと言ったために、出発を遅らせました。そのおかげで、二人は女神さまの力を宿した桜の木を見つけます。二人はサクラの木について調べることにしました。 3.ある晴れた春の夕暮れに 二人の妖精の一年後の春のお話。 ※第15回絵本・児童書大賞エントリー作品です。

処理中です...