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第七章 吉田さんと動物達そして

7 茶和ちゃんの正体は……

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  吉田さんは茶和ちゃんはと言った後しばらく沈黙した。

「吉田さん、話しても構わないですにゃん。二人に話してくださいにゃん」

「そうか……茶和ちゃん。梅木さんと並木さんはこの古書カフェ店の店長だもんな。うん、では続きを話すぞ」

  わたしは、みどりちゃんの顔をちらりと見た。みどりちゃんもわたしの視線に気がついたようで目が合った。

「ドキドキするね」とわたしは小声で隣に座るみどりちゃんに言った。

    みどりちゃんも「うん、ドキドキするね」と小声で答えた。

  それから吉田さんは、ぽつりぽつりと話し始めた。

  吉田さんが話す内容にわたしはびっくりした。だって、それは……。

「茶和ちゃんは、俺が鞄の中から取り出したパンを受け取り美味しそうに食べた。良かったなと俺は茶和ちゃんの頭を撫でた。そう、撫でたんだけど……その頭は冷たくてまるで氷のようだった。ひんやりしていて冷たかったんだ」

  吉田さんは、ふぅーと息を吐いた。

「どうしてこの子はこんなにも体が冷たいのかなと、俺は不思議に思った。これは、なんだか嫌な予感がするなと思ったんだ」

「今更ですが、びっくりさせてごめんなさいですにゃん」

  茶和ちゃんは、舌を出してにゃはにゃはにゃんと笑った。けれど、その表情に寂しさも浮かんでいるように見えた。

「いや、それは別にいいんだ。気にするな茶和ちゃん。今の茶和ちゃんは、あったかいもんな」

  吉田さんは身を乗り出して向かい側に座る茶和ちゃんの頭を優しく撫でた。


  
  それから吉田さんはゆっくり続きを話した。

  その内容は……。

「茶和ちゃんは、俺の思った通り生きていなかったんだ。俺はびっくりして腰を抜かしそうになった」

「生きていなかったって?  茶和ちゃんはぬいぐるみか何かだったんですか?  でも茶和ちゃんはお話もするし動いていますよね」

  わたしは、吉田さんに聞いた。

  だって、茶和ちゃんが生きていなかったったなんて信じられなくて、わたしはお布団で茶和ちゃんと一緒に眠ったよ。その時の茶和ちゃんはもふもふで柔らかくて温もりが確かにあった。

「梅木さん、茶和ちゃんは、自転車の事故でぺったんこになり一度命を落としたんですよ」

  左隣に座る吉田さんはわたしの顔を見て言った。

「……命を落とした。そ、それって茶和ちゃんは死んでるんですか?  それともお化けか何かなんですか?」

  わたしは、意味がわからなくて吉田さんの顔と茶和ちゃんの可愛らしい顔を交互に見つめた。

  みどりちゃんもびっくりしたように吉田さんを見ていた。

「まあ、茶和ちゃんは、一度死んだけれど俺が生き返らせたんだ。って言うか茶和ちゃんは、妖怪としてと言えばいいのかな?  あやかしかな……。今、茶和ちゃんはここにいるんだ」

  吉田さんはとんでもないことを当たり前のように言った。

「妖怪、あやかしですって!」わたしとみどりちゃんは、ほぼ同時に叫んだ。

  それから吉田さんは信じられないことを続けて言った。
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