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第七章 吉田さんと動物達そして
8 不思議な動物達は……
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「はい、茶和ちゃんは妖怪あやかしです。それからヤンバちゃんもチワワンちゃんも同じく妖怪あやかしですよ」
吉田さんは、ふぅーと言い切ったように息を吐いたけれど、わたしとみどりちゃんは、びっくりしてぽかんと口を開いた状態で呆然とした。
「わたしは、やんばるの森からなぜだか那覇に飛んできてしまった時に茶和ちゃんと同じく自転車に乗った少年に轢かれてぺったんこになりました。こっこー、でも吉田さんが蘇らせてくれました」
こっこーとヤンバちゃんは、歌を歌うように言った。
「はーい、わたしもですワン。わたしも茶和ちゃんやヤンバちゃんと同じく自転車に乗った少女に轢かれぺったんこにされましたワン」
ヤンバちゃんとチワワンちゃんは、まるでそれが当たり前のことであるかのように話した。
ヤンバちゃんもチワワンちゃんもそれから茶和ちゃんも楽しそうに笑っているので辛くて怖くて不思議な話なんだけれど恐ろしさが和らぎなんだかほっこりとした。
「ただ気がかりなのが桃谷さんのことなんですよ」
吉田さんの横顔は寂しそうに見えた。
わたしはふと桃谷さんの見せた涙を思い出した。ポタポタと頬を伝ったあの涙と関係があるのだろうか?
桃谷さんの彼の涙の理由は何だろうか?
しばらく沈黙していた吉田さんが口を開いた。
「桃谷澄花さんは茶和ちゃんの飼い主だったんです。あ、彼女は俺の高校の後輩なんですが、猫がいなくなったと相談されたんです。それで、桃谷さんから借りた写真を持っていたんです」
「吉田さんは、わたしと出会ってくれたんですにゃん」
茶和ちゃんは嬉しそうににゃんと鳴いた。
「ご飯を食べる前の茶和ちゃんは猫の幽霊でした。けれど、パンを食べさせ俺が触れると茶和ちゃんは妖怪あやかしとして蘇りました」
「はい、わたしは蘇らせてもらいましたにゃん」
「桃谷さんの写真の猫だと分かると嬉しくなって連絡をしました。けれど俺が茶和ちゃんだよと抱っこした猫を桃谷さんに見せても彼女には茶和ちゃんが見えなくて……」
吉田さんの横顔は苦痛に歪んだ。わたしはそんな吉田さんをぎゅっと優しく抱きしめてあげたくなった。だって、吉田さんのその時の気持ちを考えると。哀しくて辛くて胸がギュッとなる。
とその時。コンコンコンとお店の扉がノックされた。
誰だろか?
吉田さんは、ふぅーと言い切ったように息を吐いたけれど、わたしとみどりちゃんは、びっくりしてぽかんと口を開いた状態で呆然とした。
「わたしは、やんばるの森からなぜだか那覇に飛んできてしまった時に茶和ちゃんと同じく自転車に乗った少年に轢かれてぺったんこになりました。こっこー、でも吉田さんが蘇らせてくれました」
こっこーとヤンバちゃんは、歌を歌うように言った。
「はーい、わたしもですワン。わたしも茶和ちゃんやヤンバちゃんと同じく自転車に乗った少女に轢かれぺったんこにされましたワン」
ヤンバちゃんとチワワンちゃんは、まるでそれが当たり前のことであるかのように話した。
ヤンバちゃんもチワワンちゃんもそれから茶和ちゃんも楽しそうに笑っているので辛くて怖くて不思議な話なんだけれど恐ろしさが和らぎなんだかほっこりとした。
「ただ気がかりなのが桃谷さんのことなんですよ」
吉田さんの横顔は寂しそうに見えた。
わたしはふと桃谷さんの見せた涙を思い出した。ポタポタと頬を伝ったあの涙と関係があるのだろうか?
桃谷さんの彼の涙の理由は何だろうか?
しばらく沈黙していた吉田さんが口を開いた。
「桃谷澄花さんは茶和ちゃんの飼い主だったんです。あ、彼女は俺の高校の後輩なんですが、猫がいなくなったと相談されたんです。それで、桃谷さんから借りた写真を持っていたんです」
「吉田さんは、わたしと出会ってくれたんですにゃん」
茶和ちゃんは嬉しそうににゃんと鳴いた。
「ご飯を食べる前の茶和ちゃんは猫の幽霊でした。けれど、パンを食べさせ俺が触れると茶和ちゃんは妖怪あやかしとして蘇りました」
「はい、わたしは蘇らせてもらいましたにゃん」
「桃谷さんの写真の猫だと分かると嬉しくなって連絡をしました。けれど俺が茶和ちゃんだよと抱っこした猫を桃谷さんに見せても彼女には茶和ちゃんが見えなくて……」
吉田さんの横顔は苦痛に歪んだ。わたしはそんな吉田さんをぎゅっと優しく抱きしめてあげたくなった。だって、吉田さんのその時の気持ちを考えると。哀しくて辛くて胸がギュッとなる。
とその時。コンコンコンとお店の扉がノックされた。
誰だろか?
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