上 下
73 / 75
第七章 吉田さんと動物達そして

8 不思議な動物達は……

しおりを挟む
「はい、茶和ちゃんは妖怪あやかしです。それからヤンバちゃんもチワワンちゃんも同じく妖怪あやかしですよ」

  吉田さんは、ふぅーと言い切ったように息を吐いたけれど、わたしとみどりちゃんは、びっくりしてぽかんと口を開いた状態で呆然とした。

「わたしは、やんばるの森からなぜだか那覇に飛んできてしまった時に茶和ちゃんと同じく自転車に乗った少年に轢かれてぺったんこになりました。こっこー、でも吉田さんが蘇らせてくれました」

  こっこーとヤンバちゃんは、歌を歌うように言った。

「はーい、わたしもですワン。わたしも茶和ちゃんやヤンバちゃんと同じく自転車に乗った少女に轢かれぺったんこにされましたワン」

  ヤンバちゃんとチワワンちゃんは、まるでそれが当たり前のことであるかのように話した。

  ヤンバちゃんもチワワンちゃんもそれから茶和ちゃんも楽しそうに笑っているので辛くて怖くて不思議な話なんだけれど恐ろしさが和らぎなんだかほっこりとした。

「ただ気がかりなのが桃谷さんのことなんですよ」

  吉田さんの横顔は寂しそうに見えた。

  わたしはふと桃谷さんの見せた涙を思い出した。ポタポタと頬を伝ったあの涙と関係があるのだろうか?

  桃谷さんの彼の涙の理由は何だろうか?

  しばらく沈黙していた吉田さんが口を開いた。

「桃谷澄花さんは茶和ちゃんの飼い主だったんです。あ、彼女は俺の高校の後輩なんですが、猫がいなくなったと相談されたんです。それで、桃谷さんから借りた写真を持っていたんです」

「吉田さんは、わたしと出会ってくれたんですにゃん」

  茶和ちゃんは嬉しそうににゃんと鳴いた。

  「ご飯を食べる前の茶和ちゃんは猫の幽霊でした。けれど、パンを食べさせ俺が触れると茶和ちゃんは妖怪あやかしとして蘇りました」

「はい、わたしは蘇らせてもらいましたにゃん」

「桃谷さんの写真の猫だと分かると嬉しくなって連絡をしました。けれど俺が茶和ちゃんだよと抱っこした猫を桃谷さんに見せても彼女には茶和ちゃんが見えなくて……」

  吉田さんの横顔は苦痛に歪んだ。わたしはそんな吉田さんをぎゅっと優しく抱きしめてあげたくなった。だって、吉田さんのその時の気持ちを考えると。哀しくて辛くて胸がギュッとなる。

  とその時。コンコンコンとお店の扉がノックされた。

  誰だろか?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

笑顔になれる沖縄料理が食べたくて

なかじまあゆこ
ライト文芸
幼い日お母さんが帰って来なくて公園のベンチに座り泣いていた愛可(あいか)に見知らぬおばさんが手を差し伸べてくれた。その時に食べさせてもらった沖縄ちゃんぽんが忘れられない。 いつもご飯を食べると幸せな気持ちになる愛可。今日も大好きな食堂でご飯を食べていると眉目秀麗な男性に「君をスカウトします」と声をかけられたのだけど。 沖縄料理と元気になれる物語。 どうぞよろしくお願いします(^-^)/

黒龍の神嫁は溺愛から逃げられない

めがねあざらし
BL
「神嫁は……お前です」 村の神嫁選びで神託が告げたのは、美しい娘ではなく青年・長(なが)だった。 戸惑いながらも黒龍の神・橡(つるばみ)に嫁ぐことになった長は、神域で不思議な日々を過ごしていく。 穏やかな橡との生活に次第に心を許し始める長だったが、ある日を境に彼の姿が消えてしまう――。 夢の中で響く声と、失われた記憶が導く、神と人の恋の物語。

迷子のあやかし案内人 〜京都先斗町の猫神様〜

紫音@キャラ文芸大賞参加中!
キャラ文芸
【キャラ文芸大賞に参加中です。投票よろしくお願いします!】 やさしい神様とおいしいごはん。ほっこりご当地ファンタジー。 *あらすじ*  人には見えない『あやかし』の姿が見える女子高生・桜はある日、道端で泣いているあやかしの子どもを見つける。 「”ねこがみさま”のところへ行きたいんだ……」  どうやら迷子らしい。桜は道案内を引き受けたものの、”猫神様”の居場所はわからない。  迷いに迷った末に彼女たちが辿り着いたのは、京都先斗町の奥にある不思議なお店(?)だった。  そこにいたのは、美しい青年の姿をした猫又の神様。  彼は現世(うつしよ)に迷い込んだあやかしを幽世(かくりよ)へ送り帰す案内人である。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

神使キツネの魂結び~死んじゃって生き返った私、お狐お兄さんに完璧お世話されちゃってていいんですか!?~

山口じゅり(感想募集中)
キャラ文芸
結城さあやは、バイト帰りに車……ならぬ神様を乗せて移動中の神の使いであるキツネ、銀乃(ぎんの)に轢かれて死んでしまう。 しかし、さあやを轢いてしまったキツネの銀乃は、お詫びとしてさあやを生き返らせ、さあやが元気になるまでお世話してくれるという。 しぶるさあやをよそに、さあやの自宅に勝手に住み着いた銀乃。 そして、家事炊事洗濯を完璧にこなす銀乃に、さあやは結局ほだされてしまうのであった。 とりあえずキツネの銀乃と楽しいモフモフ生活を楽しんでいたさあやであったが、ある日のカフェで声をかけてきたイケメンはどこか聞いたことがある声で…… 「もしかして……銀乃?」 ええっ、モフモフだと思っていたら、まさかのイケメンだったの!? ちょっと、どういうことなの銀乃~~~! 【キャラ文芸大賞に参加しています! ぜひ投票お願いします~!】

『イケメンイスラエル大使館員と古代ユダヤの「アーク探し」の5日間の某国特殊部隊相手の大激戦!なっちゃん恋愛小説シリーズ第1弾!』

あらお☆ひろ
キャラ文芸
「なつ&陽菜コンビ」にニコニコ商店街・ニコニコプロレスのメンバーが再集結の第1弾! もちろん、「なっちゃん」の恋愛小説シリーズ第1弾でもあります! ニコニコ商店街・ニコニコポロレスのメンバーが再集結。 稀世・三郎夫婦に3歳になったひまわりに直とまりあ。 もちろん夏子&陽菜のコンビも健在。 今作の主人公は「夏子」? 淡路島イザナギ神社で知り合ったイケメン大使館員の「MK」も加わり10人の旅が始まる。 ホテルの庭で偶然拾った二つの「古代ユダヤ支族の紋章の入った指輪」をきっかけに、古来ユダヤの巫女と化した夏子は「部屋荒らし」、「ひったくり」そして「追跡」と謎の外人に追われる! 古代ユダヤの支族が日本に持ち込んだとされる「ソロモンの秘宝」と「アーク(聖櫃)」に入れられた「三種の神器」の隠し場所を夏子のお告げと客観的歴史事実を基に淡路、徳島、京都、長野、能登、伊勢とアークの追跡が始まる。 もちろん最後はお決まりの「ドンパチ」の格闘戦! アークと夏子とMKの恋の行方をお時間のある人はゆるーく一緒に見守ってあげてください! では、よろひこー (⋈◍>◡<◍)。✧♡!

月に恋するお狐様 ー大正怪異譚ー

月城雪華
キャラ文芸
あれは明治後期、雅輝が八歳の頃の事だった。家族と共に会合へ出掛けた数日後の夜、白狐を見たのは。 「華蓮」と名乗った白狐は、悪意を持つあやかしから助けてくれた。 その容姿も、一つ一つの仕草も、言葉では表せないほど美しかった。 雅輝はあやかしに好かれやすい体質を持っており、襲って来ないモノは初めてだった。 それ以上に美しい姿に目を離せず、そんなあやかしは後にも先にも出会わない──そう幼心に思った。 『わたしをお嫁さんにしてね』 その場の空気に流されるように頷き、華蓮は淡く微笑むと雅輝の前から姿を消した。 それから時は経ち、十五年後。 雅輝は中尉となり、日々職務に勤しんでいた。 そもそも軍人になったのは、五年前あやかしに攫われた妹──楓を探し出す為だった。 有益な情報を右腕や頼れる部下と共に、時には単独で探していたある日。 雅輝の周囲で次々に事件が起き──

ハレマ・ハレオは、ハーレまない!~億り人になった俺に美少女達が寄ってくる?だが俺は絶対にハーレムなんて作らない~

長月 鳥
キャラ文芸
 W高校1年生の晴間晴雄(ハレマハレオ)は、宝くじの当選で億り人となった。  だが、彼は喜ばない。  それは「日本にも一夫多妻制があればいいのになぁ」が口癖だった父親の存在が起因する。  株で儲け、一代で財を成した父親の晴間舘雄(ハレマダテオ)は、金と女に溺れた。特に女性関係は酷く、あらゆる国と地域に100名以上の愛人が居たと見られる。  以前は、ごく平凡で慎ましく幸せな3人家族だった……だが、大金を手にした父親は、都心に豪邸を構えると、金遣いが荒くなり態度も大きく変わり、妻のカエデに手を上げるようになった。いつしか住み家は、人目も憚らず愛人を何人も連れ込むハーレムと化し酒池肉林が繰り返された。やがて妻を追い出し、親権を手にしておきながら、一人息子のハレオまでも安アパートへと追いやった。  ハレオは、憎しみを抱きつつも父親からの家賃や生活面での援助を受け続けた。義務教育が終わるその日まで。  そして、高校入学のその日、父親は他界した。  死因は【腹上死】。  死因だけでも親族を騒然とさせたが、それだけでは無かった。  借金こそ無かったものの、父親ダテオの資産は0、一文無し。  愛人達に、その全てを注ぎ込み、果てたのだ。  それを聞いたハレオは誓う。    「金は人をダメにする、女は男をダメにする」  「金も女も信用しない、父親みたいになってたまるか」  「俺は絶対にハーレムなんて作らない、俺は絶対ハーレまない!!」  最後の誓いの意味は分からないが……。  この日より、ハレオと金、そして女達との戦いが始まった。  そんな思いとは裏腹に、ハレオの周りには、幼馴染やクラスの人気者、アイドルや複数の妹達が現れる。  果たして彼女たちの目的は、ハレオの当選金か、はたまた真実の愛か。  お金と女、数多の煩悩に翻弄されるハレマハレオの高校生活が、今、始まる。

処理中です...