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第七章 吉田さんと動物達そして

6 不思議で可愛らしい動物達の謎と吉田さん

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  夜がやって来た。窓の外には真っ暗な世界が広がっている。この時間になるとシャッターの下ろされた店が増えてくる。

  この暗くなった世界の何処かから今日もにゃんにゃんにゃん、こっこーこっこー、わんわんと動物達がやって来る。

「今日もあの子達やって来たね」と わたしがぽつりと呟いた。

「うん、やって来たね」とみどりちゃんが返事をした。

「そうですね」と吉田さんも言った。

  可愛らしい動物達の行進を眺めながらわたしの胸はドキドキドキドキしてきた。不安な気持ちと知りたいと思う気持ち、期待と不安が入り交じる。

  吉田さんは何を話そうとしているのだろうか?   その話を聞いた時わたしは果たして何を感じるのだろうか。

「こんばんはにゃん。あれ? 吉田さんもいるにゃん?」

  茶和ちゃんは、不思議そうに首を傾げた。

「あれ?  本当だ、吉田さんだ。こっこー」

「吉田さんがいるなんて珍しいワン」

  可愛らしい動物達も戸惑っているようだ。

「君達、久しぶりだね」

    吉田さんは右手を上げた。


  
  みどりちゃんがテーブルに六客のティーカップを並べた。さんぴん茶の爽やかな香りがふわりと漂っている。

  わたしは、さんぴん茶を一口飲み心を落ち着かせた。皆がさんぴん茶をごくりと飲みカタンと食器の擦れる音だけが部屋に鳴り響いた。

「皆さん、なんか静かですね」

  吉田さんの声が部屋の中に響いた。今日はなぜだか動物達もお喋りをしないで黙っている。この部屋の中に不思議な空気が漂っている。

「では、お話をしますね。皆もいいかな?」

  吉田さんは動物達の顔を見て言った。

  わたしが達の目の前に座っている動物達がこくりと頷いた。いつもの動物達はのほほーんとした表情なのに今日は緊張感が漂う面持ちだ。

「それでは、お話をしますね。梅木さん、並木さん聞いてくださいね」

  吉田さんが話を始めた。その話はとても不思議な話だった。


  
  吉田さんは幼い頃から動物達とお話をすることができた。それが当たり前のことだと思っていたけれど幼稚園に行く頃には自分は普通ではないと言うことに気づいた。

「おかしな奴と言われたことも何度もある。だって、俺は動物達と笑ったり泣いたりして話をしていたのだから」

  人から変な奴だと思われたくなくて動物が話しかけてきても耳を塞いだ。その結果動物の声は聞こえなくなっていた。それなのにある日。

「そうある日、俺の前に茶和ちゃんが現れたんだ。茶和ちゃんは、お腹が空きましたにゃんと言った。だよな、茶和ちゃん」

  吉田さんは目の前の茶和ちゃんに笑いかけた。

「はいにゃん。そうでした、吉田さんはとても優しくてわたしにご飯をくれましたにゃん」

  茶和ちゃんは嬉しかったあの日を思い出すかのように遠くを見つめていた。そしてその表情の中に少し寂しさも含まれているように感じられた。

「俺は茶和ちゃんにご飯をあげるか迷ったんだ……だって、俺は動物と話したくなかったから。だけど、茶和ちゃんの俺を見つめる瞳があまりにも可愛くて放っておくことなんてできなかった」

  吉田さんの表情は苦痛に歪んでいた。けれどその中にホッとするような優しさも含まれていた。

「吉田さんは優しい人だからわたしのことを放っておけなかったんですにゃん」

「まあ、優しいというか……目の前で倒れられても困るしね。それに茶和ちゃんは……」

  ふふっと笑う吉田さん。

「だけど、茶和ちゃんは……」
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