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後日談の後日談 その3
第4話※ SF研究会
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「———コー。おい、コー」
「んぁっ」
やべ、ヨダレ出てた。なんか長い夢を見ていた気がする。夢ん中で、俺はドワーフになって魔道具を作り、お綺麗なおエルフ様と旅をしていた。奇妙な夢だったな。アニメの見過ぎか。
「お前、今寝るかよ。もうすぐ新入生来んぞ」
「っあー、悪ィ」
「生活かかってるとはいえ、バイト入れ過ぎだっつーの」
そうなのだ。ここんとこ寝不足だ。だって生活するにも新刊を出すにも軍資金が必要なのだ。そして原稿も単位も落とすわけには行かない。俺は一体いつ寝れば。
しかしこんなくたびれた姿を見られては、誰もサークルなんか入りたがらないだろう。急いで身なりを整える。俺たちは弱小SFサークル、少なくとも新入生が三人入らなければボックスを追い出されてしまう。SFとは名ばかりで、夏コミと冬コミに各自好きに出展するくらい。活動なんかあってないようなもんだけど、コマが空いた時間や昼時なんかにだらだらするのに、この空間は貴重なのだ。
「さ、ここ。散らかってるけどどうぞ」
やがて新入生を捕まえた案内係が、ノックもなしに入ってくる。二人リクルートしてきたか。悪くない。
「おお、ようこそようこそ。俺らSFっつっても本格的なことやってないから、気楽にして。飲み物はジュース?コーラ?」
接待役として、俺も戦力に加わる。居酒屋のバイトで培ったスキルで手際よくドリンクを注ぎ、愛想笑いでお客様に振る舞う。彼らを逃してはならない。
「———ミ」
「えっ?」
驚いて顔を上げると、そこにはさっきの夢で見たエルフのような金髪碧眼の超絶イケメン。うっそ。なにコイツ、日本人?
「おいネズミ、探したぞ。手間を掛けさせやがって」
「はいっ?」
ネズミ?
「あのっ、若林くん、だっけ?」
「来い」
「ちょっ」
俺は彼に手を引かれ、ボックスから連れ去られた。背後から他のメンバーの声が聞こえるが、イケメン君は振り向きもせず「サークルでもなんでも入ってやる、邪魔するな」と吐き捨て、俺の手を強引に引っ張っていく。そして鍵のかかった屋上に続く階段まで連れて来られると、いきなり壁に押し付けられ、唇が重なる。
「んんッ?!」
えっ、これどういう状況?新入生のクソイケメンに壁ドンからのベロチュー。いやいやいや、これファーストキス。俺、超童貞のフツメンだし(と思いたい)。なんなら夢の中でも童貞だった。しかも前世からの筋金入りで…
「ぷはッ!なにこれ、君は一体」
「お前、どうして薬師如来を身につけていなかった!無防備に毒杯に口を付けるなど!」
「ほえっ?」
なぜか新入生君が激昂している。てか、お前は一体何を言っているんだ。
「ええい、その腹立たしい間抜け面。そうさ、お前はそういう奴だった。また一から躾け直しだな…」
彼はしかめ面をしながら、ぶつぶつと物騒なことを呟いている。てか、イケメンって渋面もイケてるもんなんだな。デッサン取らせて欲しい。モデルやってくんねぇかな。
「てぇてぇ…」
口にするや否や、俺の唇はまた塞がれた。俺にその気はないのだが、このご尊顔は至近距離で目に焼き付けたい。
ぱんぱんぱんぱん。
「はッ!はぁぁッ!あ”ああッ!!」
それから三日後。俺は大学に程近いタワーマンションの一室で、新入生に掘られていた。あの日すぐにここに連れ込まれ、散々弄り倒された挙句に処女を喪失。そして三日でこの有様だ。
「ふはッ、転生しようと肉体に刻まれた快楽は忘れられまい。お前は最初から私のもの。そうだろう、コンラート」
「へ、あ、夢ッ…?」
なぜか彼は、俺の夢のことを知っていた。若林亜沓君、帰国子女のクオーター。ただし1/4なのは日本の血。道理で日本人離れしているわけだ。まるで本当にあのエルフのようじゃないか。そしてなんで夢の中の俺の名前を知っているのか。
「ああそうさ、夢だとも。この私みずからがお前の魂の座標を割り出し、ここまで来てやったんだ。夢のようだろう?」
いつか夢の中で、同じようなやりとりをした気がする。しかし彼の言うことが本当なら、彼は世界を渡ってまで俺のことを探しに来てくれたわけで———
「あっ、はッ、おエルフ様ッ、てぇてぇェっ♡」
「チッ、またそれか。お前はエルフなら誰でもいいのかッ!」
ガツッ。どくん、どくん。
「あぎィィッ!!!」
誰でもいいわけがない。俺にとって初めて遭遇したエルフ、そして錬金術の師。俺に淫紋を刻み、奥の奥まで拓いてメスの快楽を叩き込んだ本人。俺のゲーム知識に目を輝かせたかと思えば、気心が知れると塩対応でけんもほろろ。半口を開けた間抜け面すら美しく、いつも俺を虜にしてやまない男。
「しゅきれしゅ…」
モブのネズミなんかに言われても、ちっとも嬉しくないだろうけど。アールト、俺の神。てぇてぇおエルフ様。
「んぁっ」
やべ、ヨダレ出てた。なんか長い夢を見ていた気がする。夢ん中で、俺はドワーフになって魔道具を作り、お綺麗なおエルフ様と旅をしていた。奇妙な夢だったな。アニメの見過ぎか。
「お前、今寝るかよ。もうすぐ新入生来んぞ」
「っあー、悪ィ」
「生活かかってるとはいえ、バイト入れ過ぎだっつーの」
そうなのだ。ここんとこ寝不足だ。だって生活するにも新刊を出すにも軍資金が必要なのだ。そして原稿も単位も落とすわけには行かない。俺は一体いつ寝れば。
しかしこんなくたびれた姿を見られては、誰もサークルなんか入りたがらないだろう。急いで身なりを整える。俺たちは弱小SFサークル、少なくとも新入生が三人入らなければボックスを追い出されてしまう。SFとは名ばかりで、夏コミと冬コミに各自好きに出展するくらい。活動なんかあってないようなもんだけど、コマが空いた時間や昼時なんかにだらだらするのに、この空間は貴重なのだ。
「さ、ここ。散らかってるけどどうぞ」
やがて新入生を捕まえた案内係が、ノックもなしに入ってくる。二人リクルートしてきたか。悪くない。
「おお、ようこそようこそ。俺らSFっつっても本格的なことやってないから、気楽にして。飲み物はジュース?コーラ?」
接待役として、俺も戦力に加わる。居酒屋のバイトで培ったスキルで手際よくドリンクを注ぎ、愛想笑いでお客様に振る舞う。彼らを逃してはならない。
「———ミ」
「えっ?」
驚いて顔を上げると、そこにはさっきの夢で見たエルフのような金髪碧眼の超絶イケメン。うっそ。なにコイツ、日本人?
「おいネズミ、探したぞ。手間を掛けさせやがって」
「はいっ?」
ネズミ?
「あのっ、若林くん、だっけ?」
「来い」
「ちょっ」
俺は彼に手を引かれ、ボックスから連れ去られた。背後から他のメンバーの声が聞こえるが、イケメン君は振り向きもせず「サークルでもなんでも入ってやる、邪魔するな」と吐き捨て、俺の手を強引に引っ張っていく。そして鍵のかかった屋上に続く階段まで連れて来られると、いきなり壁に押し付けられ、唇が重なる。
「んんッ?!」
えっ、これどういう状況?新入生のクソイケメンに壁ドンからのベロチュー。いやいやいや、これファーストキス。俺、超童貞のフツメンだし(と思いたい)。なんなら夢の中でも童貞だった。しかも前世からの筋金入りで…
「ぷはッ!なにこれ、君は一体」
「お前、どうして薬師如来を身につけていなかった!無防備に毒杯に口を付けるなど!」
「ほえっ?」
なぜか新入生君が激昂している。てか、お前は一体何を言っているんだ。
「ええい、その腹立たしい間抜け面。そうさ、お前はそういう奴だった。また一から躾け直しだな…」
彼はしかめ面をしながら、ぶつぶつと物騒なことを呟いている。てか、イケメンって渋面もイケてるもんなんだな。デッサン取らせて欲しい。モデルやってくんねぇかな。
「てぇてぇ…」
口にするや否や、俺の唇はまた塞がれた。俺にその気はないのだが、このご尊顔は至近距離で目に焼き付けたい。
ぱんぱんぱんぱん。
「はッ!はぁぁッ!あ”ああッ!!」
それから三日後。俺は大学に程近いタワーマンションの一室で、新入生に掘られていた。あの日すぐにここに連れ込まれ、散々弄り倒された挙句に処女を喪失。そして三日でこの有様だ。
「ふはッ、転生しようと肉体に刻まれた快楽は忘れられまい。お前は最初から私のもの。そうだろう、コンラート」
「へ、あ、夢ッ…?」
なぜか彼は、俺の夢のことを知っていた。若林亜沓君、帰国子女のクオーター。ただし1/4なのは日本の血。道理で日本人離れしているわけだ。まるで本当にあのエルフのようじゃないか。そしてなんで夢の中の俺の名前を知っているのか。
「ああそうさ、夢だとも。この私みずからがお前の魂の座標を割り出し、ここまで来てやったんだ。夢のようだろう?」
いつか夢の中で、同じようなやりとりをした気がする。しかし彼の言うことが本当なら、彼は世界を渡ってまで俺のことを探しに来てくれたわけで———
「あっ、はッ、おエルフ様ッ、てぇてぇェっ♡」
「チッ、またそれか。お前はエルフなら誰でもいいのかッ!」
ガツッ。どくん、どくん。
「あぎィィッ!!!」
誰でもいいわけがない。俺にとって初めて遭遇したエルフ、そして錬金術の師。俺に淫紋を刻み、奥の奥まで拓いてメスの快楽を叩き込んだ本人。俺のゲーム知識に目を輝かせたかと思えば、気心が知れると塩対応でけんもほろろ。半口を開けた間抜け面すら美しく、いつも俺を虜にしてやまない男。
「しゅきれしゅ…」
モブのネズミなんかに言われても、ちっとも嬉しくないだろうけど。アールト、俺の神。てぇてぇおエルフ様。
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