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第4章 仕官編
(26)王都デート
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気が付いたら、ベッドの上だった。ナイジェルは暗い部屋の中で、読書灯で本を読んでいた。
「目が覚めたか」
うわ。気を失ったのは初めてだ。ああ、ナイジェルとか父上とか、こんな感じなのか…。
「淫魔がセックスで堕とされたなんて、不覚…」
「そんなのどうだっていいだろ」
彼は、してやったりな風でニヤリと笑っている。
「あーごめん、飯…」
「食堂から取ってある」
ダイニングには、ルームサービスのようなワゴンがある。さすが高位貴族専用官舎。ほとんど高級ホテルと同じだ。彼は時間が経ってもいいように、サンドイッチをオーダーしてくれていた。力が抜けて、ぼんやりした頭で、行儀悪くソファーで食べる。二人掛けの方で、ナイジェルにもたれかかって。
何だろう。普段俺は、精を集めれば集めるほど元気になる体質のはずなのに、この気怠さは。
「疲れたろう。昨日から俺と一緒で、今日はあちこち跳んで」
あー、そっか。ついセックスでハイになっちゃうけど、そっちか。ここんとこ、色々あったしな。ああ、ナイジェルが俺の髪を撫でている。温かい。もうちょっと、離れたくないな。
いかん。これ以上情が移らないうちに、早く隷属紋、消さなきゃ…。
「無理をさせすぎたか」
「いや…別に好きにしてくれていい…」
「気に入らなかったのか」
何だコイツ。俺をあんなにイかせといて。
「好きに抱いてください、って言ったんだ」
俺は魔眼に魅了を込めて、上目遣いで放ってやった。狼狽えろ。そして、ちょっとでも俺のこと、覚えとけ。
ああもう駄目だ、眠い…。
翌朝。気が付いたら俺はまた、彼のベッドで眠っていた。ナイジェルは俺が目覚めたのに気付くと、「よく眠っていたな」と、あの笑顔を見せた。ちょっ…
「寝顔とか見てんじゃねぇよ、悪趣味なヤツだな!」
いつもは俺の方が起きてるので、どんな顔していいか分からない感が半端ない。俺がダイニングで剥かれた服は、簡単に畳んで置いてあった。そういえば、いつの間にかバスローブを着せられている。更にどうしていいか分からない。
「俺っ、着替えて来るから!」
そう言って服をかき集め、俺は親父の家まで跳んだ。
バスルームでシャワーを浴び、頭を冷やす。そうだ。俺だって、ナイジェルや父上を抱いた日には、普通に清浄を使って簡単に体を清め、裸のままか適当にバスローブでも着せてた。別におかしいことじゃない。なんせ今日はこれから屋台を散策だ。一々気にしてたら、一緒に歩けない。どんな顔して歩けばいい、じゃない。普通だ。普通。平常心。よし。
さて、髪を乾かしてサクッと着替えて、出かける準備をしないと。洗面台で鏡を覗き込み、髪を梳かそうとして、違和感に気付く。なんか頭の感触、違う?
偽装を解いてみると、昨日まで緩く後ろに向かってカーブしていた角が、ぐるっと大きく形を変えている。これっていわゆる、巻き角…
「ステータス・オープン」
名前 メイナード
種族 淫魔
称号 マガリッジ伯爵家長子
レベル 504
HP 5,040
MP 25,200
POW 504
INT 2,520
AGI 504
DEX 1,512
属性 闇・水
スキル
魔眼 LvMax
呪詛 LvMax
暗黒の雷 LvMax
ヒール LvMax
キュアー LvMax
ウォーターボール Lv9
転移 LvMax
偽装 Lv—
E —
スキルポイント 残り 90
「…やっべ」
レベルが500を超えている。スキルも次でカンストだ。マジで。昨日やたら眠かったのは、このせいだったのかもしれない。我ながら、外見もヤバいな。伊達メガネでも買って来るか。なるべくダサいヤツ。
ああ、そんなこと気にしてる場合じゃない。ナイジェルの部屋に戻らなきゃ。平常心。平常心。よし。
部屋に戻ると、彼はぶんむくれていた。
「…お前、平気で跳んだな」
俺が静寂スキルを無視して転移したので、激おこだ。ごめんて。てか、最近自慰ではほとんどレベルが上がらないのに、昨夜俺を五百の大台に乗せたの、お前だから。あんなに散々イかせて、快いの出すからだよ、まったく。
「お前のせいだかんな。行くぞ」
半ば言いがかりをつけ、何が自分のせいだか分かっていないナイジェルを連れて、市街地の中の人目につかなさそうな場所を選び、跳んだ。
週末の中心部は賑わっていた。俺たちはあてもなく歩き、露天を冷やかし、ジャンクフードを行儀悪く歩きながら食べた。途中で廉価な宝飾店に入り、伊達メガネも買った。俺がなるべくダサいのを選ぼうとすると、ナイジェルに止められ、無難で落ち着いたものを買わされた。ちゃんと地味に見えるのに、似合うヤツ。悔しいが、彼の方が格段にセンスがいい。こないだ、一人で図書館の帰りに立ち寄ったのと同じ街なのに、今日はやけに楽しかった。まるで学園の落ちこぼれ仲間と、ふざけながら歩いてた時みたいな。
楽しい時間が過ぎるのは、あっという間だ。名残惜しくなる前に帰ろう。明日から仕事だしな。ナイジェルは不服そうだったが、「また今度」と言って、官舎まで送った。まさか半月前まで引き籠もりの俺が、王宮で仕官することになるなんてな。
この伊達メガネ、大事にしよう。
「目が覚めたか」
うわ。気を失ったのは初めてだ。ああ、ナイジェルとか父上とか、こんな感じなのか…。
「淫魔がセックスで堕とされたなんて、不覚…」
「そんなのどうだっていいだろ」
彼は、してやったりな風でニヤリと笑っている。
「あーごめん、飯…」
「食堂から取ってある」
ダイニングには、ルームサービスのようなワゴンがある。さすが高位貴族専用官舎。ほとんど高級ホテルと同じだ。彼は時間が経ってもいいように、サンドイッチをオーダーしてくれていた。力が抜けて、ぼんやりした頭で、行儀悪くソファーで食べる。二人掛けの方で、ナイジェルにもたれかかって。
何だろう。普段俺は、精を集めれば集めるほど元気になる体質のはずなのに、この気怠さは。
「疲れたろう。昨日から俺と一緒で、今日はあちこち跳んで」
あー、そっか。ついセックスでハイになっちゃうけど、そっちか。ここんとこ、色々あったしな。ああ、ナイジェルが俺の髪を撫でている。温かい。もうちょっと、離れたくないな。
いかん。これ以上情が移らないうちに、早く隷属紋、消さなきゃ…。
「無理をさせすぎたか」
「いや…別に好きにしてくれていい…」
「気に入らなかったのか」
何だコイツ。俺をあんなにイかせといて。
「好きに抱いてください、って言ったんだ」
俺は魔眼に魅了を込めて、上目遣いで放ってやった。狼狽えろ。そして、ちょっとでも俺のこと、覚えとけ。
ああもう駄目だ、眠い…。
翌朝。気が付いたら俺はまた、彼のベッドで眠っていた。ナイジェルは俺が目覚めたのに気付くと、「よく眠っていたな」と、あの笑顔を見せた。ちょっ…
「寝顔とか見てんじゃねぇよ、悪趣味なヤツだな!」
いつもは俺の方が起きてるので、どんな顔していいか分からない感が半端ない。俺がダイニングで剥かれた服は、簡単に畳んで置いてあった。そういえば、いつの間にかバスローブを着せられている。更にどうしていいか分からない。
「俺っ、着替えて来るから!」
そう言って服をかき集め、俺は親父の家まで跳んだ。
バスルームでシャワーを浴び、頭を冷やす。そうだ。俺だって、ナイジェルや父上を抱いた日には、普通に清浄を使って簡単に体を清め、裸のままか適当にバスローブでも着せてた。別におかしいことじゃない。なんせ今日はこれから屋台を散策だ。一々気にしてたら、一緒に歩けない。どんな顔して歩けばいい、じゃない。普通だ。普通。平常心。よし。
さて、髪を乾かしてサクッと着替えて、出かける準備をしないと。洗面台で鏡を覗き込み、髪を梳かそうとして、違和感に気付く。なんか頭の感触、違う?
偽装を解いてみると、昨日まで緩く後ろに向かってカーブしていた角が、ぐるっと大きく形を変えている。これっていわゆる、巻き角…
「ステータス・オープン」
名前 メイナード
種族 淫魔
称号 マガリッジ伯爵家長子
レベル 504
HP 5,040
MP 25,200
POW 504
INT 2,520
AGI 504
DEX 1,512
属性 闇・水
スキル
魔眼 LvMax
呪詛 LvMax
暗黒の雷 LvMax
ヒール LvMax
キュアー LvMax
ウォーターボール Lv9
転移 LvMax
偽装 Lv—
E —
スキルポイント 残り 90
「…やっべ」
レベルが500を超えている。スキルも次でカンストだ。マジで。昨日やたら眠かったのは、このせいだったのかもしれない。我ながら、外見もヤバいな。伊達メガネでも買って来るか。なるべくダサいヤツ。
ああ、そんなこと気にしてる場合じゃない。ナイジェルの部屋に戻らなきゃ。平常心。平常心。よし。
部屋に戻ると、彼はぶんむくれていた。
「…お前、平気で跳んだな」
俺が静寂スキルを無視して転移したので、激おこだ。ごめんて。てか、最近自慰ではほとんどレベルが上がらないのに、昨夜俺を五百の大台に乗せたの、お前だから。あんなに散々イかせて、快いの出すからだよ、まったく。
「お前のせいだかんな。行くぞ」
半ば言いがかりをつけ、何が自分のせいだか分かっていないナイジェルを連れて、市街地の中の人目につかなさそうな場所を選び、跳んだ。
週末の中心部は賑わっていた。俺たちはあてもなく歩き、露天を冷やかし、ジャンクフードを行儀悪く歩きながら食べた。途中で廉価な宝飾店に入り、伊達メガネも買った。俺がなるべくダサいのを選ぼうとすると、ナイジェルに止められ、無難で落ち着いたものを買わされた。ちゃんと地味に見えるのに、似合うヤツ。悔しいが、彼の方が格段にセンスがいい。こないだ、一人で図書館の帰りに立ち寄ったのと同じ街なのに、今日はやけに楽しかった。まるで学園の落ちこぼれ仲間と、ふざけながら歩いてた時みたいな。
楽しい時間が過ぎるのは、あっという間だ。名残惜しくなる前に帰ろう。明日から仕事だしな。ナイジェルは不服そうだったが、「また今度」と言って、官舎まで送った。まさか半月前まで引き籠もりの俺が、王宮で仕官することになるなんてな。
この伊達メガネ、大事にしよう。
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